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第343話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その110)

「……へ? 僕とキヨは、まったくの無罪放免で、これからどこに行こうが構わないだって?」




 ──すべての騒動が、終息した後にて。




『最終決戦モード』を開放したために、全力を使い切ったキヨは、元の10歳ほどの幼女の姿に戻ったのはもちろんのこと、無数にいた『分身』たちも元の戦艦娘や建造物やその瓦礫へと還元しており、そして何よりも本人が『戦意』を完全に喪失してしまい、今やすっかり無害な存在となっていた。


 そして彼女のあるじである僕こと、この魔導大陸きっての召喚術士兼錬金術師であるアミール=アルハルとともに、屈強なる神聖騎士たちに取り囲まれて為す術も無く、ここ聖レーン転生教団教皇庁『スノウホワイト』の最上階の大会議場へと、引き立てられたのであった。


 何せ全異世界を股にかけた、文字通りの超次元的宗教組織の本拠地を、破壊し尽くしたのである。


 ……よって、これから間違いなく異端審問にかけられて、あらゆる残虐なる拷問を受けた後で、むごたらしく処刑されるものと思っていたところ、




 ──案に相違して申し渡されたのは、冒頭に記した、あまりにも予想外のお沙汰であったのだ。




「いやいやいや、それは無いだろう? 一体どんな裏があるんだ⁉ こんな見え透いた罠に、引っかかったりするものか!」




「……裏とか罠とか、失礼ですねえ。そんなものはありませんよ。一体あなたは、我々聖職者を、何だと思っておられるのですか?」


 あまりにも思いがけない事態に、つい僕が錯乱気味に叫んだところ、いかにもあきれ果てたかのように苦情を呈したのは、漆黒の聖衣をまとった美丈夫の青年──聖レーン教団異端審問第二部の、ルイス=ラトウィッジ特務司教殿であった。


「え? そりゃあ、あんたら狂信的宗教組織って、自分の宗派に属さない者たちは、弾圧したり虐殺したりするってのが、お約束なんだろ?」


「──何ですその、歪んだ宗教観は⁉ うちはあくまでも、『人魚姫』を御本尊として奉っている、『メルヘン路線』の宗教団体なんですよ!」


「……むしろ、人魚なんかを真剣に崇め奉っているところが、怖いんだよ⁉ 『人魚の肉は不老不死の仙薬』とかいった『八尾比丘尼の伝説』を真に受けて、夜な夜な何だか怪しげな儀式を催して、教祖に祭り上げた幼い女の子を、信者たちがよってたかって『解体』して、その血肉をむさぼり食っていたりするんじゃないだろうな?」


「何を、根も葉もない世迷い言を! ──と言いたいところですが、(例えば『人魚の声が聞こえない』のように)本作の作者の作風的には、完全には否定できねえ⁉」


「うん、僕も主人公として、この作品がこうして(次回の)最終回を迎えるまでに、そういった、鬱だかグロだかのダウナー展開を迎えなくて、本当に良かったと思っているよ」


「……何か、この作者、現在『ひぐ○しのなく頃に』の十何年ぶりかの新作に、完全にドハマりしているみたいですからね、現在その影響をもろに受けまくっているはずですよ」


「特に、旧アニメ版や原作ゲームにまったく触れていなかったところに、いきなり今回の完全新作アニメの『業』と出くわしたわけだからな。のめり込むなと言うほうが、無理だろう」


「作者の別作品である『わたくし、悪役令嬢ですの!』においては、『ひぐ○し』シリーズ全体に対しての『考証』を述べたりする【特別座談会】を、事あるごとに開催しているといった体たらくですしね」


「さすがに、『軍艦擬人化少女をフィーチャーした異世界転生作品(モノ)』と言う、ただでさえ『ネタの盛り合わせ』の本作に、『サイコホラーミステリィ』までぶっ込んでくることは無かったか」


「……まあ、『ループ』とか『多元世界』とかいった『SFネタ』については、元から入っていましたから、むしろ本作と『ひぐ○し』とは親和シンクロ性が高く、今更これ以上『寄せる』必要が無かったとも考えられますけどね」


 ──などと、ついメタ的『他作品談義』に熱中してしまったけれど、そんなことをのんきにやっている場合では無かったのである。




「……それで、どう考えても、おまえら教団にとっても、この聖都ユニセクスにとっても、『凶悪なる犯罪者』以外の何者でも無い、僕とキヨとを無罪放免してしまうなんて、どういうことなんだ? 運河網を中心としてこの教皇庁や市街地に与えた、物的被害の程は、尋常ならざるものがあったはずだが?」




「ああ、その点は大丈夫ですよ! ──何せ、すでにすべて、『元通り』に戻っていますからね!」




「──はあ⁉」




 司教殿のとんでもないお言葉を聞いて、ほとんど反射的に立ち上がり、窓際まで駆け寄るや、眼下の聖都の街並みを見下ろした。


「……あ、あれ?」


 何と、キヨと金剛たち懲罰艦との『軍艦擬人化少女同士の激闘』によって、瓦礫と化していた運河網や教皇庁の支塔の『セブンリトルズ』やその他市街地の建造物が、まったく傷一つ残さずに、完全に復元していたのであった。


「──そんな、馬鹿な?」


「ふふふ、驚きました? これぞ我が聖レーン教団の聖都『ユニセクス』の誇る、神から賜った『万物オール・メタ変化モルフォーゼ』の奇跡なのです!」


「お、『万物オール・メタ変化モルフォーゼ』、って……」


 突然飛び出してきた思わぬ言葉に、呆然となる僕を尻目に、いかにも自信満々に言い放つ、黒衣の司教殿。




「──そう、この聖都全体が、人魚姫や軍艦擬人化少女と同じく、不定形暗黒生物『ショゴス』によってできているのですよ」




 ………………………………は?


「これだけ多くの建造物が──巨大な都市そのものが、ショゴスによってできているって……」


 咄嗟に眼下の街並みを、もう一度じっくりと見直してみた。


「……確かに、あの騒動の前と、まったく同じだ」




 建築物は、もちろん、


 緑あふれる草木に、


 店先にあふれ返っている物品、




 ──そして何よりも、賑わいと生活感とを街中に振りまいている、無数の行き交う人々。




 まるで、あんな大騒ぎなぞ、無かったかのごとく。




 ………………………………え?


 無数の行き交う、()()だって?


 おかしい。


 これでは、あまりにも、『元通り』、過ぎないか?




 ──あれだけ軍艦擬人化少女たちが暴れ回って、最後には有機物か無機物かを問わず、自分と同化させようとしていたのに、あんなに人間が生き残っているなんて、あり得るのか?




「おや、気づかれました?」




 ふと振り向けば、漆黒の聖衣の司教殿が、すぐ側にたたずんでいた。


 不気味に煌めく、縁なし眼鏡の奥で笑み歪む、青灰色ブルーグレイの瞳。


「……気がついた、って?」




「ええ、この永遠の不老不死の聖都『ユニセクス』では、すべての信者たちも、『ショゴス』によってできているのですよ」

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