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第340話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その107)

 すべての世界──すなわち、『全異世界』的宗教組織である、我が聖レーン転生教団の、究極の目標、




 ──それは何よりも、『原初オリジナルの人魚姫』を、完全に復活させることであった。




 しかし、教団創設以来、無限の異世界で無限の時をかけてきたというのに、達成の目処はまったく立っていなかった。




 ──なぜなら、肝心の人魚姫自身が、『永遠の悲劇の檻』に、閉じ込められてしまっているのだから。




 それはまさに、『物語の呪縛』とでも、呼ぶべきものであった。




 皆さんよくご存じのように、ほぼすべての『人魚姫の物語』において、人魚姫は王子様との愛に敗れて、海の泡と成り果ててしまう運命にあった。


 童話や小説や漫画やアニメ等、この世に新たなる『人魚姫の物語』が生み出されるごとに、その筋書き(ストーリーライン)が踏襲されていった。


 ……たかが創作物と、侮るなかれ。


 むしろ、童話や小説や漫画やアニメ等において、同じ物語を繰り返すことによってこそ、『固定観念』はますます強固になっていくのだ。


 まさにその固定観念の集合体こそが、『集合的無意識』なのであり、もしも我が教団が、不定形暗黒生物である『ショゴス』等によって、完璧な人魚姫の肉体イレモノを創れたとしても、集合的無意識からダウンロードする肝心の精神のほうが、常に海の泡と成り果てる運命にあるとしたら、真に理想的な『原初オリジナルの人魚姫』の復活なぞ、夢のまた夢であろう。




 ──だがしかし、前回詳しく述べたように、もし仮に無数の並行世界が存在しているとしたら、その中に『シェークスピアの戯曲を作成できる猿』が生まれることすらも、けして否定できないのあり、同様に『人魚姫の物語』も無数にあり得て、『ハッピーエンド』を迎えるストーリーが、一つも無いなんてことは無いはずで、当然それと対応する現実世界においても、幸福に生き長らえる人魚姫が存在することになるのだ。




 それでは、幸福になれる人魚姫は、他の人魚姫とどう違うのかと言うと、ほとんどの作品にも見られる共通点として、『強い』ことが挙げられた。




 ──つまり、けして普通の人魚姫みたいに、常に受け身でいたりせず、むしろ自分の意思によって、積極的に王子様を我が物にしようとする、ある意味『現代女性』そのままに、心身共に強い人魚姫のことなのである。




 例を挙げるとしたら、皆さんよくご存じの、世界で最も著作権にうるさいアニメ会社による、某長編映画の人魚姫なんかが、該当するかと思われた。




 こういった『強い人魚姫』を描いた作品が増えれば増えるほど、人々の人魚姫に対する『固定観念』は変わっていき、人々の無意識の集合体である集合的無意識自体が変化していって、我が教団の『理想的な原初オリジナルの人魚姫の復活』が可能になっていくといった寸法であった。




 そういうわけで、我が教団も率先して、『強い人魚姫』を創造していったのだが、




 その実験の一つが、『大陸風タイリク・フーウイルス』の猛威により絶望の淵に立たされていた、『あちらの世界』の日本政府に技術を提供して実現した、第二次世界大戦時の大日本帝国海軍の軍艦の力を秘めた、『軍艦擬人化少女』たちであったのだ。




 ──そうなのである、


 そもそも、真に理想的な軍艦擬人化少女を実現するために、『人魚姫』の要素ファクターを利用したのでは無く、




 むしろ、真に理想的な人魚姫を実現するためにこそ、軍艦擬人化少女の要素ファクターを利用していたのだ。




 ──それはまさに、現在目の前で展開している、軍艦擬人化少女にとっての最終形態である、『オール駆逐艦・デストロイヤーモード』についても、同様であった。




 あのように、あらゆる並行世界から『別の可能性の自分自身の記憶』を、集合的無意識を介してこの世界の物質にインストールして、無数の自分自身を創出しているのは、何も数の力で戦闘を有利に運ぶためだけでは無い。




 むしろ、人魚姫としての本能である、『王子様の獲得』を是が非でも実現するために、他の世界の自分の『失敗例』をすべて把握することによって、けしてしくじること無く目標を達成するためなのである。




 そう、すべては、軍艦擬人化デストロイヤー・少女ガールであるキヨさんにとっての『王子様』である、アミール=アルハルさん、あなたを獲得するためなのですよ。







「──って、だからキヨのやつ、こんなむちゃくちゃな『最終形態モード』に、変化メタモルフォーゼしたってわけなのかよ⁉」







 前回と今回との二回にわたって長々と続いた、聖レーン転生教団異端審問第二部の特務司教である、ルイス=ラトウィッジ卿による、蘊蓄話を聞き終えた後で、運河中に鳴り響く、僕ことアミール=アルハルの絶叫。




 それも、無理は無かった。




 僕を取り囲んでいる、無数の同じ顔形をしたキヨの中で、


 たった一人のみ、僕の真正面で笑顔でたたずんでいる、『彼女』だけは、




 この世のものとは思えないほど、美しい──




『大人の女性』の姿をしていたのだ。

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