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第337話、【日台友好】『コミー絶対殺す幸運艦』丹陽実装!

『──第一防衛ライン、涼月、第二防衛ライン、冬月、沈黙!』


『──こちら第三防衛ライン、磯風、もうこれ以上はちません!』


『──こちら第四防衛ライン、初霜、これより敵陣へと、特攻いたします! 後はよしなに!』




 ──東チノ海大日本第三帝国領、三角諸島、人類最終防衛最前線第二指令本部。


 現在、いくつもの防衛ラインから飛び込んでくる報告は、すべて絶望的なものであった。




「……やはり、対馬だけでは無く、沖縄方面からも、攻めてきたか」


「大和司令代行の提言通り、こちらにも第二戦線を設けておいて、正解でしたね」


「本当は、外れて欲しかったのだがな。──矢矧、おまえの覚悟はついたか?」


「もとより私はどこまでも、大和殿と共にあるつもりです」


「……そうか、悪いな、頼むぞ」


「は、はい、光栄であります!」


「──それで、清霜は、どうするつもりだ?」


 軍艦擬人化少女しかいない、完全に『全艦玉砕』前提に設けられた最前線基地において、人間である『提督』の代わりに指揮を任されている、自他共に認める『旗艦』大和の一言によって、その場の全員の視線が、()()()大日本帝国海軍一等駆逐艦夕雲型の19番艦、『清霜』の擬人化少女へと集中する。


 しかしそれに対して私は、無言で席を立ち、海のほうへと──すなわち、戦場のほうへと向かって歩き出す。


「清霜?」


 最も信頼を寄せる大和の声にも、足を止めることも振り向くことも無く、ほんのわずかばかりの言葉を返した。




「……友が、私を呼んでいるのです」




「友?」


「一体、誰のことだ?」


「そちらの第六防衛ラインを担っていた、朝霜はとっくに……」




「──懐かしい友に、本当に久し振りに、会えそうな気がするのです」




 そう言い放つや、私は海へと入り、全天を埋め尽くしながら迫り来る、『大陸風タイリク・フーウイルス』の大軍勢のほうへと、出航していった。




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




 ──それからおよそ、30分後。




「……くっ、こちら第六防衛ライン、清霜! これ以上は持ちこたえられそうにありません! 第七防衛ライン及び第八防衛ラインも、すでに沈黙! 最終フェーズへの移行を、許可されたし!」




『駄目だ、「全駆逐艦オール・デストロイヤーモード」は、許可できない!』




「どうしてです? 対馬はそれでどうにか、防衛に成功したではありませんか⁉」


『あそこには「提督」がいたが、ここには我々軍艦擬人化少女しかいないのだ。たとえ敵を殲滅できたところで、我々自身が世界を滅ぼすことになりかねないんだぞ⁉』


 ──ッ。


「わ、わかりました、引き続き、()()()()()()()()、全力を尽くします! 後のことは、よろしくお願いいたします!」


『……すまん』


 謝る必要など、無い。


 この防衛ラインが落ちれば、三角諸島は丸裸だ。


 我々駆逐艦娘の直衛無しで、大和がどこまでつものか。


 ……結局は、『坊ヶ崎』の二の舞か。


 そのように私が、今もなおこちらへと迫り来ている、『大陸風タイリク・フーウイルス』が変化メタモルフォーゼした、無数の『イナゴ』や『紅いオーク(ポルコ・ロッソ)』や『黄色い熊(フェイ・プー)』の大群を睨みつけつつ、独り言ちた、まさにその時。




『『『ぎゃああああああああああああああああああああああああっ⁉』』』




 いきなり東チノの大海原に響き渡る、今は亡き中つ国の極秘軍事ウイルス研究所が生み出した、『化物』どもの絶叫。


 それも、そのはず。


 何と、空か海かを問わずに世界中を覆い尽くそうとしていた、彼らの三分の一ほどが、紅蓮の業火に包み込まれたのだ。


「……あ、あれは?」




「──ぎゃはははははははははは! コミーのウイルス兵器どもが! すべて燃やしてくれるわ!」




 一人の軍艦擬人化少女が忽然と現れるや、これまで見たことも無い兵装を縦横無尽に操って、四方八方のウイルスどもを撃破していたのだ。


「……あれは……あれは……まさか」


 そう、


 兵装や擬装には、見覚えが無かったものの、


 肝心の軍艦擬人化少女自身については、よく見知っていたのだ。




「……雪風?」




「雪風? 違うぜ! 俺様の名前は、『丹陽』さ!」




 は?




「殺す! コミーは殺す! すべて殺す! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! コミーは、死ねええええええええ!!!」




 そのように、あたかも狂ったように叫びながら、大砲や対空機銃や魚雷をばらまき続けていくうちに、いつしかウイルス軍団は、残りわずかとなっていた。


 もちろん、イナゴやオークどもも、負けじと攻撃し続けるものの。




「当たらねえ、当たらねえよ、コミーどものへなちょこ攻撃なんて! 何せ俺様はかつて大日本帝国において、絶対不沈の『幸運艦』と呼ばれていたんだからな! せっかく激戦を生き抜いて、中華民国で穏やかな余生を送っていたというのに、戦時中はコソコソ逃げ回っていただけのコミー風情が、赤化革命なんて起こしやがって。──しかし、運が悪かったな? 『幸運艦と言うことは、敵にとっては「死神」』である』、この俺様を敵に回すことになって。さあ、おまえらコミーに残されている運命は、ただ二つのみ。この俺様に殺されるか、おまえらコミー同士で殺し合って自決するかだ!」




 その言に偽りなく、瞬く間に敵はすべて、燃やし尽くされてしまったのであった。


「……私たち新生第三帝国の軍艦擬人化少女が、大勢での総掛かりでもまったく敵わなかった相手を、あんなにもあっさりと倒してしまうなんて」




「──ケッ、歯ごたえの無い相手だったぜ。よし、今から別の戦場に向かうか。コミーどもは、皆殺しだあああああああああああああああああ!!!」




「あ、待って!」


 慌てて呼び止めたものの、振り向きさえもせずに、アッと言う間に波しぶきの彼方へと消え去る、謎の救世主。




「丹陽…………果たして、敵か、味方か」




 ……いや、中華民国(台湾)の軍艦擬人化少女なら、『大陸』も『WH○』も不倶戴天の敵だから、『大陸風タイリク・フーウイルス』を絶対の敵と見なしているだろうし、味方かはどうかはともかく、我々にとっては敵では無いでしょう。




 ──それにそもそも、『丹陽=雪風』ってのは、もはや『艦隊をコレクションする一派』の間では、常識ですよね?

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