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第336話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その104)

「──と言うわけで、現在のこの状況を解決できるのは提督さんだけですので、ちゃっちゃと『人身御供』になってくださいな♫」




 ………………………………ええ〜⁉




 碌でもないことを言いながら、僕の目の前でニッコリと可憐に微笑む、金髪碧眼の美少女。


 ……一応彼女は、軍艦擬人化少女の『こんごう』と言うことになっているのだが、皆さんがご想像されるような、身体の周囲に戦艦の擬装を展開した、変形巫女服をまとった『ルー語』を操る女の子なんかでは無く、一糸まとわぬ華奢で色白の裸体の背中に、純白の大きな翼を生やしているという、「おまえ『艦む○』では無く、むしろ『天使』じゃ無いのか?」とでも、言いたくなるような姿をしていた。




 ──魔導大陸、世界宗教聖レーン転生教団総本山、聖都ユニセクスの教皇庁を臨む大運河網。




 今ここは、まさしく『阿鼻叫喚の地獄絵図』と化していた。




『懲罰艦』たる金剛たち四姉妹同様に背中から翼を生やしながら、無数に増殖をし始めた、僕こと大陸きっての召喚術士兼錬金術師のアミール=アルハルにとっての、かつてのしもべ駆逐艦娘デストロイヤー・ガールのキヨであったが、何と空中で羽ばたいていた姉妹のうち金剛を除く、えいはるきりしまの三姉妹に取り付くや、無理やりに集合的無意識とアクセスさせて、自分たちと同じ姿に変化メタモルフォーゼさせるといった、『無限増殖』を繰り返していた。


 ──そう、生憎最も肝心な『指揮艦』である金剛は逃がしてしまったものの、事実上もはや『敵』は壊滅したのと言うのに。


 しかしそれでも、『キヨたち』の増殖はとどまることは無く、再び地上に降り立つや、運河の中の瓦礫はもちろん、まだ健在だった街中の建物や、逃げ遅れた人々や、犬猫に家畜や植物等々と、ありとあらゆるものを、自分たちと『同化』させ続けていった。


「何せ、『より強くなること』こそが、軍艦擬人化少女にとっての、最大の命題ですからね。完全に我を失い本能だけで変化メタモルフォーゼ能力を使い続けているキヨさんが、この世のすべてを自分と同化させようと、無限に増殖し続けているのは、当然の理に過ぎないのですよ」


 そのようにしたり顔で口を挟んでくるのは、『蘊蓄解説』ならこの人、聖レーン転生教団異端審問第二部特務司教、ルイス=ラトウィッジ卿であった。


「……キヨは『強さ』を求めたからこそ、『大戦艦武蔵(むさし)』になったんじゃ無かったのか? それを自分自身の姿に戻って無限増殖したところで、駆逐艦は駆逐艦でしか無いのでは?」


「戦艦型に変化メタモルフォーゼしたところで、そこで頭打ちでは無いですか? たとえ戦艦型よりは格段に落ちる駆逐艦であろうとも、数を増やせばその分だけどんどんと強くなれるし、そもそもこのまま世界のすべてを『同化』させれば、事実上自分(のみ)が最強となり、結果的に『世界征服』も実現するではありませんか?」


「──世界をすべて、自分と同化させるって、そんな馬鹿な⁉」


「言ったでしょ? すでに現在の彼女は、『軍艦擬人化少女としての本能』のみに従って、最上級の集合的無意識とのアクセス能力を全力で行使しているのです。もはや『すべてを自分にしてしまう』までは、この増殖行動は止まりはしませんよ?」


 とんでもないことを平然と言ってのける、漆黒の聖衣をまとった司教殿。


 事実、『あらゆる物質の駆逐艦デストロイヤー・ガール化』──いわゆる『全駆逐艦オール・デストロイヤーモード』は、我々が立っている、この教皇庁上層部のバルコニーにまで、迫り来ていた。




『うふふふふふふふ』


『あははははははは』


『くすくすくすくす』




 どんどんと近づいてくる、どこか禍々しき哄笑の渦。


 すぐ眼下の石壁から、次々に生え出てくる、幼い少女の、()()()()()()()()()




『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』


『あどみらる』




「……おやおや、ついに、あなたの所在を、察知なされたようですよ?」


「──いや、これってまるで『ホラー』そのもので、むちゃくちゃ怖いんですけど⁉」


「何を言っているのデース、元はと言えば、あなたにとっての、可愛いしもべではないデスカー? 少々つれないのデハ?」


 やかましい。


 他人事かと思って、いい加減なことを言うな、てめえも同じ軍艦擬人化少女のくせに!


 ていうか、しれっと『ルー語』を使うなよ、いろいろとマズいだろうが?


「……僕が犠牲になれば、この異常な状況を止めることができるってのは、本当なのか?」


「そうですよ? それこそがこの世界の滅亡を回避させることのできる、唯一の手段なのです」


「何で、僕なんだよ⁉」




「たった今ご覧になられたように、彼女()()は、いまだに己のあるじである『提督』を、望み続けているからですよ。──何せこれも『更なる強さの実現』とともに、我々軍艦擬人化少女にとっての、最大の願望の一つですしね」




 ──なっ⁉




「……あんなむちゃくちゃな状態になりながら、すでに契約を解除している、僕のことを求めているだって?」


「あのような姿だからこそ、『本能』がむき出しになっているのですよ」


 ──ッ。


 あの大勢の、世界のすべてを喰らわん勢いの少女たちが、本能むき出しで僕を求めているって、むしろ一層ヤバ過ぎるだろうが⁉


 か、考えろ、アミハル!


 何かまだ、打開策があるはずだ!


「……と、ところで、さっき聞いた話の中に登場した、『現代日本の提督』さんのほうは、結局どうなったんだ?」


 なぜか知らんが、前回の【対馬沖大決戦編】では、結末がぼかされていたからな。


「さあ、どこかで幸せに暮らしているんじゃないですかあ?」




「──そんな、雑なごまかし方があるか⁉」




 ……だが、つべこべ言っている暇は、もはやありはしない。




 僕こそが紛う方なく、キヨの魂をこの世界へと召喚して、肉体を錬成し、軍艦擬人化少女として転生させた、張本人なんだ。




 ──しもべの不始末は、あるじが拭わなければ。




 そして覚悟を決めた僕は、無数の『キヨ』のほうへと、向き直ったのである。

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