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第335話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その103)

 ──それはもはや、『戦艦型擬人化少女』どころか、『人』や『兵器』ですら無かった。




『うふふふふふふふ』


『あははははははは』


『くすくすくすくす』




 どことなく禍々しく響き渡る、幼い声音による哄笑。


 一見すると、いかにも愛らしい、『少女』の外見だが、




 ──それが、同じ顔と同じ身体つきで、無数にうごめているとなると、話は別だ。




 一糸まとわぬ、いまだ華奢な小柄な肢体。


 それは見るからに、駆逐艦型擬人化少女の、『素体』を彷彿とさせた。


 しかし、その周囲には、軍艦ならではの兵器等の擬装は一切見受けられず、その代わりに、海の鬼火である『不知火』の青白き炎を、全身にまとっていた。




 そんな『彼女』たちが、最初に襲いかかったのは、人類の敵である『大陸風タイリク・フーウイルス』からなる、『イナゴ』でも『紅いオーク(ポルコ・ロッソ)』でも『黄色い熊(ファン・プー)』でも、無く──




「──うわっ⁉」


「きゃあ!」


「ひぃっ⁉」




 何と、これまで自分たちのことを、身を呈して守ってくれていた、前衛の軽巡洋艦難や重巡洋艦型の、擬人化少女たちであったのだ。




『うふふふふふふふ』


『あははははははは』


『くすくすくすくす』




「「「嫌ああああああああああああああああああッ──!!!」」」




 たちまち鳴り響く、幾多の絶叫。


 歴戦の軍艦の擬人化少女が、文字通り丸腰の全裸の幼女にまとわりつかれたくらいで、何をそんなにも怯えているかと言うと、


 幼女たちが身にまとう不知火に包み込まれるや否や、集合的無意識とのアクセスを強制的に全面カットされて、己の巡洋艦型少女としての『カタチ』を失ってしまうとともに、




 ──次の瞬間には、周りの『襲撃者』同様に、擬装はおろか寸鉄すらおびず、青白い不知火だけをまとった、裸の幼女へと変化メタモルフォーゼしてしまったのであった。




「──あっ♡」


「──うっ♡」


「──くうっ♡」




 恍惚の表情で、『自分自身』を失い、周囲と完全に『同化』していく、軍艦擬人化少女たち。


 そしてそれは巡洋艦型だけに止まらず、ほとんど全滅しかけていた空母型等の他の艦種はもちろん、すでに残骸と化していた『屍体』にまで及び、辺り一面の海域はすべて、『彼女たち』によって埋め尽くされていった。




 ──だが、それでも、


 今まさに目の前に迫り来る、全天を覆い尽くしている無数の大陸風タイリク・フーウイルスからなるイナゴを始め、それが凝集し変化メタモルフォーゼした紅いオーク(ポルコ・ロッソ)黄色い熊(ファン・プー)からすれば、取るに足らない微々たる存在に過ぎなかった。


 そしてまさに、わずかに残った自分たちの『最後の敵』を、分子レベルで分解しようと、殺到してくるイナゴたちであったが、




『『『──ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ⁉』』』




 むしろ、まさにこれぞ『飛んで火に入る夏の虫』そのままに、あっと言う間にそのすべてが不知火に覆い尽くされるや、全個体の『カタチ』が崩れ去り、まったくの『別物』へと変化メタモルフォーゼしていったのだ。




 ──そう、周囲の『少女』たちと、まったく同じ姿に。




『うふふふふふふふ』


『あははははははは』


『くすくすくすくす』




 今や、広大なる対馬海峡全域にて鳴り響く、幼い少女の哄笑。


 ──それも、そのはずである。




 何せ、すでに大陸風タイリク・フーウイルスによって構成されていた、イナゴ紅いオーク(ポルコ・ロッソ)黄色い熊(ファン・プー)も、すべて不知火によって燃やし尽くされ『カタチ』を失うとともに、周囲の『少女』たちと完全に同じ姿へと、『同化メタモルフォーゼ』してしまっていたのだから。




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「……しかし、それで『作戦終了大勝利めでたしめでたし!』とならないところが、『全駆逐艦オール・デストロイヤーモード』の救えないところだがな」




 対馬泊地に設けられた、人類最終絶対防衛ライン、最前線基地。


 立体映像にて、対馬海域の『地獄絵図』を目の当たりにしながら、いかにも意味深なことを口にする、現地の最高責任者である『提督』殿。


 彼の『危惧するもの』は、案外と単純明確であった。




 それと言うのも、画面の中ではもはや、『敵』がまったく存在しなくなったというのに、『少女』たちは今もなお、戦闘による敵味方の残骸等の浮遊物を始めとして、周囲のあらゆるものを、自分たちと強制的に『同化』させ続けて、その数を無数に増やし続けていたのだ。




「……このままでは、じきにこの対馬に到達し、そのすべてを『同化メタモルフォーゼ』させた後は、次は本土と言ったところか」


 淡々と、目の前に差し迫った『人類の終焉』について、何の感慨も無く述べる、純白の海軍服をまとった青年。


 なぜなら、軍艦擬人化少女にとって禁忌の最終形態である、『全駆逐艦オール・デストロイヤーモード』を一度発動すれば、その『人魚姫』──否、『海底の魔女』としての『本性』に従って、世界中のあらゆるものを、自分と同化させようとすることを、彼女たちの『提督あるじ』として、当然のように承知していたのだから。




 そしてそれ故に、『最後の決断』も、彼の意志に委ねられることになるのであった。




「……鳳翔、おまえの艦載機は、まだ稼働可能か?」


「「「──ッ」」」


 提督の言葉に、一斉に息を呑む、鵬翔(軍艦擬人化少女たち専用の宿舎の寮母艦)や大淀(秘書艦)や間宮(情報艦)等々の、地上勤務の『特務艦』たち。


「まさか、提督⁉」


「おやめください!」


「そんなことをしたら、あなたの身がッ⁉」


 次々に驚愕の声を上げる、いまだ幼き海の『戦乙女ワルキューレ』たち。


 それに対して、彼女たちの『唯一のあるじ』の決意は、微塵も揺るぐことは無かった。




「……()()駆逐艦娘たちの『無限増殖』を止めることができるのは、『提督』である私だけだ。この身一つで、人類全体を助けることができるなら、安いものだよ」




「「「……提督」」」




「さあ、私を『彼女たち』が待っている、対馬沖海上まで連れて行っておくれ」


「「「わかりました、提督」」」


「おお、わかってくれたk──」




「「「──私たちも、お供いたします!!!」」」




「………………………………は?」




「私たちだって、提督の『契約艦』です!」


「どこまでも、ついて参ります!」


「提督や、他の『人魚姫』たちだけに、犠牲を強いてなるものですか!」




『内勤(内陸勤務)』とはいえ、さすがは軍艦擬人化少女たち。


 おのあるじの覚悟のほどを知るや、何の躊躇も無く同道を申し出た。


「──え、いや……」


 そんなやる気満々な自分の配下たちに迫られて、その頼もしさに歓喜し感涙するかと思われた『提督』殿だが、なぜだか非常に歯切れが悪かった。


「……む、無理、する必要は、無いんだよ? おまえたちはあくまでも、『内勤特務艦』なんだから、文字通り『犬死に覚悟の戦闘』に、参加することはないんだぞ?」


「「「いえいえ、是非とも、お供いたします!」」」


「え、あの」


「「「──お供、いたします!!!」」」




「あ〜もう! わかったわかった! こうなりゃ、四、五人増えたところで同じだ! どうせ私が、()()()()()()()()()いいんだしな!」




「「「──さすがは、提督! さあいかん、『最後の(ファイナル・)契約の地(エンゲージ・ステージ)』へ!!!」




「『ステージ』と言っても、正確には、『海上』だがな⁉」




 いかにも、やけくそそのままに叫ぶ、好むと好まざるとにかかわらず、『人身御供トッコウ』を強いられた青年。




 ──そして、無数の駆逐艦娘が待ち構えている大海原へと、軽空母艦型少女の鵬翔の艦載機によって運ばれた彼は、()()()()()()我が身を犠牲にすることによって、人類を破滅の危機から救ったのであった。

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