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第328話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その98)

『──行きますわよ、我が妹たち!』




『『『──了解らじゃこんごうお姉様!!!』』』




 全員で呼吸を合わせるようにして、一度大きく羽ばたいた途端、あたかもロケットであるかのごとく、更に上空へと上昇する、『懲罰艦』である『金剛型四姉妹』。




 今や『天使』──と言うよりも、『鳥葬』とかが十八番オハコの猛禽類そのままに、私こと、かつての大日本帝国海軍を代表する、大和型戦艦二番艦『武蔵むさし』の超巨大擬人化少女の頭上を、悠々と旋回する金剛さんたち。




 こうなれば、図体だけでかい『大戦艦娘』など、単なる『的』でしかなかった。


『──全艦、砲撃準備!』


 もはや余裕綽々に、こちらへととどめを刺さんと号令を発しようとした、『指揮艦』殿だが、




『させるかああああああああああああああああっ!!!』




 いつまでも『過去のトラウマ』に囚われていても仕方ないと、あえて己を叱咤するかのように怒声を吐き出しながら、ようやく硬直していた全身を無理やり動かして戦闘態勢を整える。




『──集合的無意識と、緊急アクセス! 大日本帝国海軍大和型戦艦二番艦「武蔵」の、兵装情報(データ)をダウンロード!』




 たちまち私の周囲に、海の人魂である『不知火』が灯るや、それがすぐさま多数の砲門や機銃へと変化メタモルフォーゼした。


 まるでどこかの自称『シン』な『ゴ○ラ』の背びれそのままに、対空機銃を中心として、全砲門を一斉にぶっ放す。




 しかし、並の飛行機よりも高速かつ極端に小柄な、『少女』のしんたいに命中弾を撃ち込むことなぞ、ほとんど不可能に近かった。




 巨大な戦艦の巨大な砲門なぞといったものは、海上や地上のほとんど動きの無い相手なら、効果は絶大であろう。


 ──とはいえ、どんなに強力な大砲であろうが、『当たらなければ』意味が無いのだ。


 よって、この場合有効になるのは、対空機銃や、爆発四散した後の大砲の砲弾の破片──等ということになるが、それくらいの破壊力のレベルでは、本来軍艦の防御力を有する擬人化少女たちには、かすり傷一つ負わすことはできないであろう。


 ……私としても最初は、大型艦船の化身である軍艦擬人化少女に、『翼』なんぞを生やすなんて、一体どういった冗談だか反則的荒技だかと思ったのだが、よくよく考えてみれば、これほど効果的なギミックも無かろう。


 本物の軍艦に翼やプロペラをつけて、空を飛ばそうとするとしたら、頭がおかしくなったとしか言いようが無いが、私たち軍艦擬人化少女は、肉体的には小柄な少女なのである。物理法則や航空工学的には問題はあるものの、そこはそもそも『魔法』じみた超科学技術によって生み出されていることでもあるし、飛行能力を付加することくらいなら、十分許容範囲かと思われた。


 それにそもそも私たちは、少女でありながら軍艦の力を有していて、好きな時に主砲や対空機銃を現出できるのである。


 翼を生やすことくらい、ぶっちゃけ『今更の話』であろう。




 そして、『海』の覇者たる軍艦でありながら、少女の脚を得ることで『陸』をも制し、今回更に翼を得ることで『空』をも制した、まさに今この時の彼女たちこそは、もはや名実共に『無敵』の存在となったのだ。




『うふふふふふふふ』


『あははははははは』


『くすくすくすくす』


『ほほほほほほほほ』




 嘲りに満ちた笑声を上げながら、地上からの攻撃を難なくかわしつつ、主砲や機銃等の砲弾の雨あられをお見舞いする、『残酷なる天使』たち。




『──ぎゃああああああああああああああ‼』




 その攻撃を為す術も無く、巨体の至る所に浴びて、ボロボロの有り様となる、大戦艦娘。




 ──否、それだけでは、無かった。




 本来いくら損傷を受けようが、集合的無意識との上級アクセス権を有する現在の私であれば、たちまちのうちにすべてを修復して、完全に元通りになることが可能なはずであった。


 しかし、傷口が治るどころか、そこを起点として、どんどんと肉体が青い瞳の無数に生えている紅い肉塊である、『ショゴス』と化し始めたのだ。


 これはもはや、『過去の航空攻撃に対するトラウマ』による、防御能力の低下などといったレベルでは無かった。




『……ま、まさか、集合的無意識とのアクセス権を強制的に奪われて、現在の自分自身である「武蔵」の形態情報すらも、ダウンロードできなくなっているの?』




『──その通りです。あなたはもはや、自分の形を維持できなくなり、この世から完全に消え去る運命にあるのですよ』




 すでに全身の至る所がショゴス化しているのを目の当たりにしての、私の悲痛なる叫びに対して、打てば響くように答えを返す、涼やかなる声音。


 咄嗟に振り向けば、もはや「勝負はついた」とばかりに、いつしか金剛さんたち『懲罰艦四姉妹』が、私のすぐ頭上で『羽ばたきホバリング』をしていた。




『これでおわかりでしょう? 駆逐艦であるあなたは、この異世界そのものを変えることはもちろん、提督さんを始めとする他人の運命を変えるどころか、自分自身を変えることさえもできないのです。そのような「偽りの戦艦の力」で、本物の戦艦であり懲罰艦である、私たちに勝てるものですか。──さあ、観念して、このまま形を失い消滅してしまいなさい!』




 ……ぐっ、


 確かに、彼女の言う通り、


 もはやこれまでか。


 ここまで来ればさすがに性根尽き果ててしまい、無念のうめき声を上げるばかりの、巨大擬人化少女。




 ──しかし、そのうつむきかけたこうべは、途中でとどまった。




『もう、あきらめるのか? ──おまえらしくも無い』




 え?


『……武蔵、さん?』


 そう、その時私の頭の中で鳴り響いたのは、現在その身を借りている、かつての憧れの大戦艦の擬人化少女のものであったのだ。




『──何を臆する必要があるんだ? おまえは最初からずっと、「武蔵わたし」なんかでは無く、「清霜じぶん」自身であり続けているではないか?」




 ……何……です……って……。

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