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第325話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その95)

「──ぐっ!」


 とてもこらえきれず苦痛の表情を浮かべて、上半身を折り曲げる、かつての大日本帝国海軍の誉れ、高速戦艦(こん)ごう型一番艦の擬人化少女、その名も『金剛』嬢。




 それも、当然であろう。




 何せ彼女ときたら、たった今し方、自分の妹艦たちの『魂』そのものとも言える、三人分の『魔女の魂(ヘクセンジーレ)』を、いきなり何のためらいも無く呑み込んでしまったのだから。




 いくら超常の存在である軍艦擬人化少女とはいえ、一つの身体に四人分の魂を無理やり詰め込んでしまえば、その『負荷』の凄まじさは、想像を絶するであろう。


 ──事実、金髪碧眼のいかにもハイソサエティの御令嬢然とした、いつもの泰然自若ぶりはどこへやら、白皙の御尊顔は脂汗にまみれ、真紅のドレスに包み込まれたいまだ幼く華奢な肢体は、とてもかつての『海の(プリンセス・)王女ダイアモンド』とも思えぬほど、小刻みに震えていた。


「……くっ、無茶しやがって。──ていうか、どうして金剛嬢ってば、妹たちの魔女の魂(ヘクセンジーレ)なんかを、食べちゃったわけ?」


 それほど、お腹がすいていたのかなあ?


 ……いやまさか、某『正規空母アカギ』の、擬人化少女でもあるまいし。




「──何を馬鹿げたことを、妄想しているのですか? オリジナル的には、少々イエローカードものですよ?」




 その時背後から突きつけられる、もはや耳馴染みの声。


 振り返るまでも無くそこにいたのは、漆黒の聖衣でガッチリとした長身を包み込んだ、温和な笑顔の好青年であった。


「……ラトウィッジ、司教?」


 な、何だ?


 何だって言うんだ、こいつ?


 どうしてこんなに、余裕綽々の表情をしているんだ?


 ──自分の陣営の切り札である金剛が、ただならぬ状況にあると言うのに。


「……いやそれよりも、いい加減、人の心を読むのは、やめてもらえませんかねえ?」


 ほんと、何なの?


 聖レーン転生教団の特務司教レベルになると、『読心術』をマスターしているわけ?


「いえいえ、別に心なんか読んでませんよ? ──ただ単に、あなたご自身が、『わかりやすい』だけではないですかあ?」


「わ、悪かったな? 何でも思ったことが、すぐに顔に出て!」


「──おっと、そろそろ頃合いのようですよ? どうぞ、『彼女』にご注目なさってください」


「……彼女って、金剛のことか? 何だよ、『頃合い』って」


 突然の話題の転換に訝りつつも、むしろ本題はそっちのほうだったのを思い出して、司教殿の指し示すほうへと振り返ってみると──


 ………………………………は?




「どうです、これこそは軍艦擬人化少女における、『最終拘束解除術式』の発動による、『レベル無限インフィニティ』──人呼んで、『羽化モード』なのです!」




 思わず、我が目を疑った。


 まさしくそれは、『奇跡』の瞬間であり、


 文字通りに、『羽化』以外の、何物でも無かったのだ。




 ──何せその時突然、金剛嬢のドレスの背中から、白く大きな『翼』が生え出したのだから。




 元々()()()()()()、神秘的な美しさを誇っていた、金剛嬢である。


 その尋常ならざる有り様は、まさしく天使や妖精すらも、彷彿とさせた。


 そして、彼女の身につけているすべての衣服もまた、瞬く間に羽毛と化して、そのままの突風に煽られるようにして、あっと言う間に飛び散ってしまう。




 そのあとには、金糸の長いウェーブヘアと純白の翼以外は、寸鉄もおびていない、生まれたままの肉体のみが残っていた。




 僕が我を忘れて、その『奇跡の美の結晶』を、食い入るように見つめていると、




『うふふふふふふふ』


『あははははははは』


『くすくすくすくす』




 唐突に鳴り響いてくる、少女たちの笑声。


 思わず振り向けば、先程まで無数の青い瞳が生えた紅い肉塊へと成り果てていた、金剛嬢の三人の妹たちが、長姉そっくりの金髪碧眼となるとともに、一糸まとわぬ可憐なる裸体の背中に、




 大きな純白の翼を、生やしていたのだ。




「……な、何で、魔女の魂(ヘクセンジーレ)を失ってデフォルト状態のショゴスになっていた、えいはるきりしままでもが、金剛そっくりになって、その上翼まで生やしているんだよ⁉」


「──もちろん、金剛嬢の仕業ですよ」


 あまりの異常事態の連続に、ただわめき立てるばかりの僕に対して、すかさず答えを与えてくれる、嫌になるほど落ち着き払った声音。


「何……だと?」




「おやおや、忘れたんですか? 魔女の魂(ヘクセンジーレ)とはすなわち、『集合的無意識とのインターフェース』なのであり、それを失い己自身の『形態情報』をダウンロードできなくなったゆえに、三人の妹さんたちは『自分のカタチ』を維持できなくなり、原初デフォルトのショゴス状態となっていたのですが、そもそも魔女の魂(ヘクセンジーレ)は、本人の肉体の外部にあっても、しっかりと『集合的無意識とのインターフェース』としての役割を果たすことができるのであり、今や彼女たちの肉体のコントロールはすべて、姉君である金剛嬢の一存に委ねられているのですよ」




「いやでも、コントロールするもしないも、金剛は妹たちの魔女の魂(ヘクセンジーレ)を、すでに一つ残らず食べてしまっているじゃないか?」


「いいえ、その場合においても、十分コントロール可能なのです」


「えっ、どうやって⁉」


「そもそも金剛嬢におかれては、ご自分の肉体のコントロールを、どのようになされていたとお思いですか?」


「そ、そりゃあ、比叡たち同様に、身の内に秘められている魔女の魂(ヘクセンジーレ)を介して、集合的無意識から、現在の自分自身の形態情報や、戦艦としての兵装情報や、翼を生やしたりする場合等の特殊な形態情報を、ダウンロードすることによってだろう?」


「そんな彼女が、妹さんたちの魔女の魂(ヘクセンジーレ)を捕食なされたわけですが、もし仮に、それが彼女の肉体の中で、元々存在していた彼女自身の魔女の魂(ヘクセンジーレ)と融合し、一つとなってしまったとしたら、どうなるでしょうね?」


 ──ッ。




「……その『統一版魔女の魂(ヘクセンジーレ)』を介して、集合的無意識から何らかの形態情報をダウンロードするたびに、彼女自身だけでは無く、三人の妹艦たちにおいても、まったく同じ形態スガタ変化メタモルフォーゼすることになるってわけか⁉」




「──そうです、今や『金剛型四姉妹』は、金剛さんを中心にして、『三位一体』ならぬ『四位一体』の状態にあり、『完璧なるシンクロ状態』を実現なされているのですよ」

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