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第321話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その94)

「……すべての軍艦擬人化少女『ナデシコ』シリーズのプロトタイプであり、最強かつ最凶の『懲罰艦』でもある、『こんごう型四姉妹』の特徴は、攻撃にしろ防御にしろ、常に『四身一体』の状況となってこそ、真に最大の力を発揮できることです」




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「──えいはるきりしま、『アタックフォーメーション999』!」




『『『──了解らじゃ、金剛お姉様!!!』』』』




 今や雲を衝くかのように巨大化してしまっている、大日本帝国海軍の誇る大戦艦、大和やまと型二番艦『武蔵むさし』の擬人化少女の周囲を、()()戦艦である利点を最大限に活かして、一所にとどまること無く、すでに粉々に成り果てている『七支塔セブン・リトルズ』の名残の瓦礫の山を遮蔽物に利用しつつ、巧みに『ヒット・アンド・アウェイ』戦法を繰り返していた、同じく大日本帝国海軍『金剛』型戦艦の擬人化少女三人衆であったが、突然の長女であり指揮艦でもある金剛嬢の号令一下、丁度等間隔にて武蔵を取り囲む位置で、三人とも急停止した。




 それに対して、現在圧倒的優位な立場にいる武蔵のほうは、まったく動じること無く、比叡たちが何をしてくるのかをむしろ興味深そうな表情を浮かべて、棒立ちとなっていた、


 ──まさに、その時、




『『『「第999プロテクト」、全面解除!』』』




 金剛型の三人が、揃って唱和するや、


 ──彼女たちの全身が、海の鬼火である不知火に包み込まれ、ムクムクと巨大化していき、気がつくとそこには、全身が純白まっしろで瞳だけが紅く鈍く煌めき、至る所から鱗や鰭が生えているといた、禍々しくもどこか艶麗なる轟沈した軍艦の化身──人呼んで、『海底の魔女(ヘクセンナハト)』の姿となり果てたのであった。


「……あれが、『アタックフォーメーション999』?」


 その一部始終を、もはや完全に『戦場』と化している、聖都『ユニセクス』の運河網の中央にそびえ立つ、聖レーン転生教団の総本山である教皇庁『スノウホワイト』の高層部のバルコニーから見ていた、僕こと、この魔導大陸きっての召喚術士兼錬金術師のアミール=アルハルは、思わずつぶやかざるを得なかった。


「確かに、先祖返り的な『リミッター解除』によって、軍艦擬人化少女の限界を超えた力を発揮できるから、さすがの武蔵もこれまでのようなワンサイドゲームは、とても無理なんじゃないのか?」


 何と言っても、『武蔵=かつての大切なしもべ』なので、少々心配になったところ、




「……まだ、そんなことを言っているのですか、いいからようく見ていてください」




 唐突に背後からかけられる、いかにもあきれ果てた声音。


 思わず振り向けば、ガッチリとした長身を漆黒の聖衣に包み込んだ青年が、短めの金髪に縁取られた彫りの深い顔の中で、神秘的な青灰色ブルーグレイの瞳に苦笑を浮かべていた。


「……ラトウィッジ司教」


「ほら、始まりますよ?」


 縁なし眼鏡の聖職者の指し示すほうでは、三体の『海底の魔女(ヘクセンナハト)』が、己の肉体を直接軍艦の主砲や機銃へと変化メタモルフォーゼさせて、すでに攻撃態勢に入っていた。




「──撃て(ふぁいあ)ッ‼」




『『『主砲、90口径721ミリ3連装砲、8基一斉発射!!!』』』




 ──って、何その、主砲の数値データ⁉


 史実の『金剛型』の主砲のサイズに比べて、何から何まで倍増しているじゃん! あの『大和型』ですら、主砲は45口径460ミリ3連装砲塔3基なんだぞ⁉


 そんなものを、一気に三方から食らってしまったんじゃ、さすがの武蔵とはいえ、耐えきれないんじゃないのか⁉


 ……その僕の予測は、半分的中し、


 ──半分、外れてしまった。


 たとえ駆逐艦デストロイヤー・ガールのキヨの『願望の具象化』である、『()()()大戦艦武蔵』であっても、轟沈した軍艦の怨念の具現である『海底の魔女(ヘクセンナハト)』の三体同時の攻撃を、何ら防御することなくもろに食らってしまえば、当然のごとく各部位にそれなりの損傷を生じてしまった、




 ものの──




「……な、何と」


 そう、まさしく、『何と』、だ。


 さっき見たばかりの不知火の炎が、武蔵の全身を包み込んだかと思えば、あっさりと損傷箇所を修復し、後にはかすり傷一つ残っていなかったのだ。




『──主砲、45口径460ミリ砲3連装3基9門、斉射!』




 そして、今度は自分のターンとばかりに、ご自慢の46サンチ砲を、三方に同時に叩き込む。


『『『──うぎゃああああああああああっっっ!!!』』』


 これまでは、ちょろちょろ動き回られていたので、狙いが定めにくかったところ、何とも好都合にも静止するとともに巨大化してもらったので、むしろ『的』として当てやすくなっただけであった。


 しかも、現在の武蔵は、『人類史上最大級の砲撃が可能な戦艦』どころか、それをも遙かに凌駕している、『魔導砲』なる反則技チートスキルを実行可能なのであり、食らったほうは堪ったものでは無く、すぐさま運河中に断末魔の悲鳴が響き渡った。




 ──しかしこの時、当の『金剛型』の指揮艦である金剛嬢が、あまりにも予想外の行動をとったのである。




「……続いて、『アタックフォーメンション666』を発動。──全艦、集合的無意識とのアクセス経路を、全面カット!」




 ………………………はあ?


 集合的無意識とのアクセスを、全面カットだと?


 ──ば、馬鹿な⁉


 そんなことをしてしまったら、『金剛型』三姉妹への、ありとあらゆる情報の供給が遮断されてしまって、『軍艦擬人化少女』とか『海底の魔女(ヘクセンナハト)』とか言う以前に、生物としての形態と精神そのものが、維持できなくなってしまうぞ⁉


「──うわっ、あれって、まさか⁉」


 柄にも無く、悲鳴じみた声を上げる、泣く子も黙る異端審問官殿。


 それも、無理は無かった。


 何せまさにその刹那、『海底の魔女(ヘクセンナハト)』たちが、己の肉体を物理的に維持できなくなって、その場に崩れ落ちて、更におぞましい姿になり果てたのだから。


 運河の水面に浮かぶ、多数の紅い団子状の肉塊に、そこから次々に生え出す無機質な青の瞳。


「……ショゴス」


 そうそれは、すべての生物の原初デフォルトの姿である、かのクトゥルフ神話で高名な、不定形暗黒生物そのままの有り様であった。


 そのように完全に呆気にとられる僕たちによそに、更に信じられない奇行に走る、戦艦の擬人化少女。




「……さて、それでは、『仕上げ』と参りますか」




 そう言って、己の柘榴のような小ぶりの唇を、両手で覆い被せる




「「──なっ⁉」」




 何と驚いたことにも金剛嬢が、妹たちの『魂』そのものとも言える、三人分の『魔女の魂(ヘクセンジーレ)』を、一気に呑み込んでしまったのである。

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