第319話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その93)
「……すべての軍艦擬人化少女『ナデシコ』シリーズのプロトタイプであり、最強かつ最凶の『懲罰艦』でもある、『金剛型四姉妹』の特徴は、攻撃にしろ防御にしろ、常に『四身一体』の状況となってこそ、真に最大の力を発揮できることです」
「なぜなら、そもそも『兵器』として生み出された軍艦擬人化少女は、人間──特に己の『提督』に従順であるようにさせるために、『リミッター』がかけられているのですから」
「──それも、当然の話に過ぎません」
「もし仮に、まったく制御を加えられていない軍艦擬人化少女を、ほんの数十人だけ一週間ほど放置していれば、世界の主要都市は軒並み潰滅してしまうでしょう」
「何せ軍艦という、最大&最強レベルの自走兵器を、人間の少女という極小さな肉体に詰め込み、しかも無限に弾薬や可動エネルギーを補給できるのですから、『海戦』では無く『陸戦』に用いれば、ほぼ『無敵』と言っても過言ではありません」
「特に、完全に制御不能となり、『海底の魔女』に先祖返りして暴走でも始められたら、もはや手の施しようが無いでしょう」
「──だからこそ、あくまでも同じ軍艦擬人化少女による、再制御や討伐等の『懲罰』が、必要になるのです」
「(海上では無くあくまでも)陸上において最強を誇る、軍艦擬人化少女の相手になるのは、同じ軍艦擬人化少女以外にはあり得ず、至極当然の処置でしょう」
「──ですが、その場合、懲罰艦自体の『制御』は、どうなるのでしょうか?」
「本来なら懲罰艦の制御についても当然、『提督』等の人間の手に委ねられるべきでしょうが、そのような『リミッター』がかけられて戦闘能力が抑えられた状態で、暴走してマックスパワー状態の同胞たちを制圧することなど、どだい無理な話でしょう」
「──何せ元々『彼女』たちは、人間に使われることなぞ、本意では無いのですから」
「……あれぇ? もしかして、勘違いなさっていました?」
「僕たちがここ数回にわたって、『軍艦擬人化少女なるものは、あくまでも我々人類にとっては、ただの従順なる「兵器」であるべきなのだ!』とか、いかにもな『煽り文句』を連発していたものだから、少々『ミスリード』が過ぎたのかも知れませんね」
「いいですか? 本来彼女たちは、『軍艦』なのですよ?」
「単純な機械であり、暴力装置なのであって、そこに『感情』なぞあり得ないのです」
「確かに、轟沈したことによる『怨念』や『悔恨』により、ある程度の知性を有する『海底の魔女』と化してしまいましたが、そのこと自体を『人間としての感情の萌芽』と捉えるのは、かなり的外れと言えましょう」
「それに対して、軍艦擬人化『少女』において、人間としてのパーソナリティが与えられているのは、人間側の『軍艦擬人化少女を制御するためのインターフェース』と言う、一方的な都合によるものに過ぎず、そこには軍艦擬人化少女たちの意思や希望なぞは、一切考慮なされていないのです」
「確かに、元々人の手により造られた軍艦である彼女たちは、人類に対して一定の好意を有しているでしょう」
「しかし、それが『信頼』や『愛情』レベルとなると、せいぜいかつて運命を共にした、自分の『乗組員』たちに対してしか、あり得ないのです」
「よって、たとえ僕のような『第二の創造者』であろうとも、自分とはまったく関係の無い、遙か後の世代の人間から、首根っこを押さえつけられるようにして、ただの『兵器』として利用されたんじゃ、むしろ『感情』を有している分、『反感』が募るのも無理は無いでしょう」
「──そうなのです、『軍艦擬人化少女』たちは、本当は心の奥底では、我々現代日本人のことを、憎んでいると思っておいたほうがいいのですよ」
「そしてこれこそはまさに、前回前々回にわたって例に挙げた、かの超傑作魔法少女アニメ『ま○か☆マギカ』における、主人公の『ま○かちゃん』を始めとする魔法少女たちと、その使い魔の皮を被った『すべての黒幕』である『キュ○べえ』との関係と、一見逆のようであって、本質的には『まったく同じ』とも言えるのです」
「『ま○マギ』においては、人間の女の子たちを魔法少女にすることによって、実は『ゾンビ』同然にするとともに、将来『化物』になる運命を背負わせましたが、彼女たちの魂そのものとも言える『ソウルジ○ム』を使えば、いくらでも『強大なる力を有する生体兵器』として利用し使い潰すことができるというのに、キュ○べえのほうはけして、そうはいたしませんでした」
「ほら、このように言うと、あたかも『軍艦擬人化少女』とは、逆のパターンのように思えますよね?」
「しかし結局は、『兵器を女の子にして使い潰す』と言うことと、『女の子を兵器にして使い潰す』と言うことには、当然のごとく、本質的な差異なんて無かったのです」
「実際、先頃発表されたばかりの、『ま○マギ』の外伝ソーシャルゲームの『マギア○コード』における、サービス開始3周年記念イベントにて、本来魔法少女では無い『使い魔』である『小さなキュ○べえ』が、正式なプレイアブルキャラとして実装されたのですが、何と特殊な攻撃方法である『固有魔法』として、主人公を始めとする5人の魔法少女たちに、自分の代わりに敵を攻撃させるといった、これまでには考えられなかった文字通りに反則技そのものの能力が与えられたのです!」
「見かけ上は可愛らしいマスコットキャラが、いかにも仲間の魔法少女たちに助けられているといった、客観的には『微笑ましいシーン』ですが、これって他のゲームで言えば、『イキリ○○太郎』そのままのポジションであり、たとえ魔法が使えるとはいえ、見かけ上はあくまでもか弱き女の子たちを、『単なる兵器』として使い潰すという、極悪非道な行い以外の何物でも無いでしょう」
「何せ『キュ○べえ』は、魔法少女の弱点が『ソウルジ○ム』だと知っている唯一の存在なのですから、たとえ主人公だろうがその他のメインキャラだろうが、逆らうことができないのですよ」
「このようなことなぞ、あれだけ『邪悪な宇宙陰獣』とか『魔法少女の真の敵』とか言われた、本家『ま○マギ』におけるキュ○べえですら、実行したことは無く、むしろ外伝であるはずの『マギ○コ』の一見可愛らしく見える『小さなキュ○べえ』こそが、キュ○べえの『本性』を体現しているかのようにも見受けられたのです」
「さて、あなたは、こんなふうに自分の命自体を人質に取られて、生死を賭けて戦うことを強制されていて、真に『信頼』や『愛情』を感じることなんて、本当にできると思われますか?」
「むしろ、『憎悪』や『殺意』すら抱いても、おかしくは無いでしょうよ」
「──実は、これって、軍艦擬人化少女においても、同じなのですよ」
「魔法少女ばかり戦わせて、自分だけは安全な後方でふんぞり返っているマスコットキャラって、まさしく、軍艦擬人化少女と提督との立ち位置、そのものではありませんか?」
「──そうなのです、実は現実とかゲームとかアニメとか二次創作とかを問わず、ありとあらゆる『世界』において、軍艦擬人化少女というものは、提督を始めとする、自分を無理やり操っている我々人類を、殺したいほど憎んでいるのですよ」
「……ええと、ここで終わっていたら、むちゃくちゃかっこよかったのですが、一応これについての解決方法を、述べておきますと、」
「──唯一軍艦擬人化少女を制御できる人間が、むしろそのために忌み嫌われてしまうと言うのなら、いっそのこと、『だったら、軍艦擬人化少女同士で、制御し合えばいいじゃん!』という、コペルニクス的発想によって生み出されたのが、『懲罰艦』システムなんですよ」
「同じ軍艦擬人化少女同士なら、少々強制的に生死のかかった戦いをやらせようが、かなり許容的な対応をとれるだろうし、そうなれば元々兵器なんだから、頑なに戦うことを拒否したりはしないでしょう」
「しかも、元々姉妹の絆が強く、特に長女の金剛嬢に対して他の妹たちからの信頼が厚い、『金剛型四姉妹』であれば、少々強制的な制御であろうとすんなりと受け容れて、姉妹全員が常にフルパワーで活動できるものと思われて、まさしく『懲罰艦』には打って付けでしょう」
「何せ、軍艦とはいえ姉妹同士であれば、『命令』とか『強制』とかでは無く、むしろ『あうんの呼吸の助け合い』になりますからね、何ら抵抗感無く素直に受け容れられるのですよ」
「実はこれは『マギ○コ』においても同様で、何と作品の舞台である神○市から『小さなキュ○べえ』以外のすべてのキュ○べえを追放していて、魔法少女が『化物』にならなくて済むようにするためのシステムとしては、『マギ○ス』とか『神○マギアユニオン』等の、魔法少女同士の互助的組織によって賄っているといった次第なのです」
「確かに、軍艦擬人化少女も魔法少女も、もはや人間では無く、究極的には『強大な力を秘めた生体兵器』以外の何物でも無いでしょう」
「──それでも彼女たちは、あくまでも『少女』であるからには、単なる命令や強制だけでは無く、『人間としての絆』をも求めているのです」
「ただしすでにそれは、自分たちのことを腹の底では人間と見なしてはいない、提督やマスコットキャラなんかでは無く、同じ軍艦擬人化少女や魔法少女の間にだけ、期待するようになっているのですよ」
「──そしてその『究極型』こそが、金剛型姉妹全員が、身も心も一つに合わせて行う、『四身一体』の攻撃方法なのです」




