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第317話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その92)

「──僕はですね、『軍艦擬人化少女』って、『魔法少女』の一種だと思っているのですよ」




 ………………………はあ?




 新生『大日本第三帝国』暫定自治領内、地下最深部の人類絶対防衛ラインに密かに設けられている、最重要極秘プロジェクト『ナデシコ』開発を主目的にした、広大なる研究フロアの一室にて、直属の部下である青年研究員が突然口にした、あまりにも予想外なセリフに、一応彼の上司にして主任研究員である私は、思わずキーボードを叩く手を止めてしまった。




 ──何を、


 一体、何を、


 こいつは、言っているんだ?




 某国のバイオテロによってまき散らされた、『大陸風タイリク・フーウイルス』のせいで、全世界の人類が滅亡の危機に瀕している、この瀬戸際において、




 我々が生き延びられるかどうかは、このプロジェクトの成否にかかっているのだぞ?


 ──それを、言うに事欠いて、『魔法少女』とは何だ? 『魔法少女』とは⁉




「……あの、主任? いかにも僕のことをあきれ果てたかのような視線で見ておられますけど、そもそも我々は、本気で『軍艦擬人化少女』などといったものを開発しようとしている時点で、十分に『アレ』なんですから、今更『魔法少女』について言及したところで、何の問題も無いのではありませんか?」




 ──うぐっ⁉


「それに今やこの地球そのものが、どこかのアホ国家のバイオテロによって、『狂いきって』しまっているのです。無数の大陸風タイリク・フーウイルスが合体して生み出された、『黄色い巨大なクマのぬいぐるみ』が、日本海をまたいで攻めてくるといった、まさしく『リアル進○の巨人』の世界観となっているのだから、軍艦擬人化少女や魔法少女を実際に開発したところで、別におかしくも何とも無いでしょうが?」


「──いや、おかしいよ! 軍艦擬人化少女はある意味『兵器』のようなものだから構わないけど、魔法少女を『開発』するって言うのは、何だ? 何か『薄い本』みたいな展開を、誤解されかねないぞ⁉」


「……だから、言っているではないですか、魔法少女は、軍艦擬人化少女と、ほとんど同一の存在だと」


「いやいや、全然違うじゃないか? そもそも魔法少女はどう考えても、『兵器』では無いだろうが⁉」




「そんなことはありませんよ? 実は今回の『ナデシコ』プロジェクトは、『兵器としての魔法少女』を、創り出すようなものなのですから」




 ──ッ。


「……それってつまりは、軍艦擬人化少女とは、『魔法少女を、兵器にしたようなもの』、と言うことか?」


「ほら、かつて一世を風靡した、某超傑作魔法少女アニメにおいては、魔法少女になった途端、魂が体外に取り出されて、肉体のほうはゾンビ化してしまうってのが、あったではないですか?」


「──おいっ、特定の作品を挙げるのはよせ! いろいろとマズいだろうが⁉」


「大丈夫ですって、一応参考にはしますが、あくまでも『独自見解』を述べるつもりですので」


「……独自見解、だと?」




「前から疑問に思っていたんですけど、あのアニメって、宇宙人があくまでも自分たちの都合で、地球の年端もいかない女の子たちを魔法少女にするんでしょ? だったら最初から『道具』とか『兵器』として割り切って、摘出された『魂』が無事なうちは、ゾンビ化された本体のほうを、どんどん『自爆攻撃』とかに使っていけばいいのですよ。当の宇宙人のお説だと、本体のほうはいくらダメージを負っても、ある程度修復可能なんでしょう? 修復できなかったとしても、地球には思春期の女の子なんか、掃いて捨てるほどいるんだから、どんどんと魔法少女にして、どんどんと『兵器』として、『消費』していけばいいんですよ。しかも聞くところによると、魔法少女たちは究極的には、『化物』になる運命が課せられていると言うではありませんか? ──それなのに、一体何を出し惜しみをしているのだ? そのような『兵器として非常に好ましいメリット』があるのなら、最初から全力全開で利用していけばいいじゃないか? どうせ宇宙人にとっては、『消耗品』なんだろう? だったら、使える分だけ、使い潰すべきだろうが?」




「──嫌ああああああ、やめてやめてやめて、もうやめてええええええ! おまえ、それって、『原典』の全否定じゃないか⁉ この作品の作者って、例の作品の大ファンじゃ無かったのか?」




「全否定では無く、『独自見解』ですってば。何よりも当の『原典』においては、魔法少女を兵器として見なしているわけではありませんからね。あくまでも宇宙人としては、魔法少女を『生かさず殺さず』状態にしておいたほうが、都合がいいのでしょう」


「言い方! 確かにその通りかも知れないけど、もう少しオブラートに包めよ⁉」


「気にしなくても、大丈夫ですよ? 何せ御本家のほうでも、実は『外伝』作品において、同様のアイディアが採用されているのですからね」


「……何だと?」




「その外伝における新設定では、魔法少女が自分の意思で『化物』になって、『戦力』を大幅にアップできるようになっているのです。──しかも驚いたことに、そのシステムを開発したのが、宇宙人では無く、同じ魔法少女だと言うのだから、大したものですよ」




「そ、それって⁉」




「──ええ、我が『ナデシコ』プロジェクトの、ちょうど『逆』をやっているのです。かつて轟沈した軍艦の『怨念』や『悔恨』が、永久凍土から発見されたかのクトゥルフ神話で高名なる、不定形暗黒生物『ショゴス』との融合を果たした、忌まわしき『海底の魔女(ヘクセンナハト)』という『化物』に、『原初オリジナルの人魚姫』の魂の欠片たる『心の宝石(ソウルジュエル)』をインストールことによって生み出された、軍艦の力と少女の肉体と心とを有する、文字通りの軍艦擬人化少女『ナデシコ』シリーズ。それこそがまさしく、我々人類の最後の希望というのですから、まったくもって『狂って』いますよね、我々人間も、この世界そのものも」




「……ということは、まさか」


「ええ、『ナデシコ』たちにも、いつでも『海底の魔女(ヘクセンナハト)』に戻れる機能を付加すれば、『兵器』として最強になるんじゃないかって、思いついたわけですよ」


「──危険だ、危険過ぎる! せっかく『心の宝石(ソウルジュエル)』という『制御装置』を付けたというのに、いくら格段の性能アップが見込まれるとはいえ、『海底の魔女(ヘクセンナハト)』なんかになって、暴走されたりすれば、手が付けられなくなるぞ⁉」


「大丈夫ですって、そこら辺はちゃんと、『コントロールシステム』を確立するつもりですので」


「……『海底の魔女(ヘクセンナハト)』を、コントロールする、だと?」




「僕だって、何もすべての『ナデシコ』に、こんな危なっかしい『裏技』を仕込むつもりなんか有りませんよ。まずは『テストケース』として、『懲罰艦』に内定している『こんごう型四姉妹』に採用してはどうでしょうか? ──すなわち、指揮艦の『金剛』が、三人の妹の分の『心の宝石(ソウルジュエル)』を集中的にコントロールして、『自爆的攻撃』の実行はもちろん、『海底の魔女(ヘクセンナハト)化』についても、彼女こんごうの意思のもとに行わせて、少しでも暴走等の不具合が見受けられたら、集合的無意識とのアクセスをカットして、デフォルトの『少女形態』へと立ち戻させるといった寸法なのですよ。何せ『心の宝石(ソウルジュエル)』とは、『集合的無意識とのインターフェース』を具現化したものですからね、別に外部化しようが、他者にコントロールを任せようが、『兵器』としては何も問題は無いというわけなのです」




「……確かに、それが実現すれば、『兵器』としての戦力向上は、計り知れないな」


「この人類存亡の危機の折に、四の五の言っている余裕は無く、試せるものは、何でも試しておいたほうがいいのでは?」


「わかった、責任はすべて、私がとろう。あくまでも『懲罰艦』のみを対象とすることを条件にして、開発を許可する」


「──さすがは主任、話が早い! どうぞ、お任せを! 必ずや、期待に応えて見せますから!」


 そう言い放つや、早速『サンプル』の培養槽のもとへと駆け寄っていく、部下の青年。




 巨大な透明なケースの中に満たされた、仮称『原始の海(生命のスープ)』の中でただよっている、日本人には珍しい、初雪そのままの純白の肌に黄金きん色の長い髪の毛だけをまとった、一人の少女。




『ナデシコ』シリーズ、試作初号機、コードネーム『プリンセス・ダイ(金剛)アモンド()』。




 ……たとえ、人類そのものの存続のためとはいえ、このような(少なくとも外見上においては)幼き少女に対して、神を恐れぬ非人道的な実験を行うことなぞ、本来ならけして赦されはしないであろう。




 ──いや、私は今更、何を言っているのだ。




 もし仮に魂を悪魔に売り渡そうが、むしろこの手で悪魔を生み出そうが、『あの時』確かに、大陸風タイリク・フーウイルスによって殺された、妻や娘の敵を討つと、心に誓ったではないか?




「……見ていろ、現在大陸の『中つ国』に巣くっている、異界の人外バケモノどもめが。かつては大陸人から『ヒトデナシ』とも呼ばれていた、日本人の恐ろしさを思い知らせてくれるわ!」

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