第315話、【終戦75周年記念】『艦○れ』アニメ二期は、果たして『レイテ沖海戦』なのか?
──1944年10月、南方海域。
後に『レイテ沖海戦』と称されることになる、『比島沖海戦』は、いよいよ大詰めを迎えようとしていた。
それも、大日本帝国海軍における、組織だった艦艇運用の、掉尾を飾る形で。
『──緊急入電! 栗田艦隊、反転! 繰り返す! 栗田艦隊、反転す!』
「「「なっ⁉」」」
一気に絶望の色が、各艦艇に走った。
なぜなら、主力の栗田艦隊が、強行突破をあきらめて反転したと言うことは、事実上の『作戦の失敗』を意味していたのだから。
「……これまで、だな」
ぽつりとつぶやく、あたかも女剣豪のごとき豪胆さを感じさせる、戦艦の精霊。
意外にもそれは、いかにもサバサバとした声音であった。
「あら、そうですの? だったら私も、お供させていただこうかしら?」
続いて声を上げたのは、同じく戦艦でありながら、まったくタイプの異なった精霊であった。
『彼女』はなぜか、我々大日本帝国所属艦艇には珍しく、金髪碧眼の西洋人形をイメージさせる、変わり種であった。
「相変わらず、あえて自ら、貧乏くじを引きつもりか?」
「それはお互い様でしょ? どこかの生まれたての大戦艦様にばかり、見せ場を奪われていては、ベテランの名折れですものね」
「……そうか、いよいよ死に時を、見極めたか」
「ただでは、沈むつもりはありませんよ? せいぜい盛大に、散って見せましょう」
──そこまで聞いて、私は我慢ならず、口を挟んだ。
「武蔵さん、金剛さん、今から敵の主力集団に、突っ込む気ですか⁉」
「もちろん、そのつもりだが?」
「栗田艦隊の突然の転進に、敵さんもさぞや、呆気にとられているでしょうしね」
「そんな! こちらはすでに主力が、抜けしてしまっているのですよ⁉ 完全に自殺行為ではありませんか⁉」
「──と、相手も油断しているはずだから、こちらも不意を突けるというものだよ」
「まさか、大和級の大戦艦が、背水の陣で特攻してくるとは、思わないでしょうしね。頼りにしてますよ、武蔵さん♡」
「だったら、私も連れて行ってください! 敵の主力に攻撃が届く海域まで、私が護衛につきます!」
つい堪りかねて、すがりつくようにまくし立てれば、武蔵さんがさもあきれ果てたかのように、大きくため息をついた。
「清霜、おまえまで私たちみたいに、バカをやってどうするんだ? おまえは私の随伴艦だろう? だったら私が沈んだ後に、私の乗組員たちを救い上げる任務を、忘れるんじゃないよ」
──ッ。
「そうですわ、武蔵さんには、この私がついているので、大丈夫ですわ。いつものような『バカ』は、けしてやらせませんから♡」
「……金剛、さん」
「おい、『バカ』は無いだろ? 『バカ』とか言うやつが、『バカ』なんだぞ⁉」
「おや、最初に『バカ』とおっしゃったのは、ご自分ではないですか? それじゃあ、『バカ』の二乗ですねw」
「──うぐっ」
「それでは、榛名。後のことは、頼みましたよ?」
「……はい、金剛お姉様、ご武運を!」
「──泣くな、清霜。せめて、笑顔で送ってくれ」
「は、はい……ッ」
無理やり笑顔を作ろうとしたものの、どうにもうまく行かなかった。
涙で歪んだ視界の中で、武蔵さんが困り顔でこちらを見下ろしている。
「大丈夫だ、帝国海軍にはまだ、私の姉の大和がいる。あいつが健在である限りは、帝国に敗北は無い」
「……はい……はい……清霜は……最後まで……けして……あきらめませんッ」
「では、靖国で…………っと、私たちは軍人では無いから、『靖国でまた会おう』というわけにはいかないか」
「それならば、『ヴァルハラ』は、どうでしょう。私が建造された欧州の北のほうの神話で、死せる者の魂が集いし宮殿のことであり、何も人間だけに限らず、神様をも含む巨人族もいたそうですので、我々軍艦が赴いても、別に構わないでしょう」
「『ヴァルハラ』……つまりは、『西方浄土』に代表される、『異界』や『異世界』のようなものか。ふふふ、我々軍艦の精霊にとっての、『二度目の人生』にふさわしい。──あいわかった、次は『異世界』にて会おうぞ!」
「「「応!」」」
あたかも『冗談』そのものの馬鹿げた話を、本気で誓い合う、軍艦の精霊たち。
──まさか、それから数十年後に、本当に異世界に転生して、私自身が武蔵さんになって、金剛さんと敵対する形で、実現するとは思いも寄らずに。
※今回は、本日が『75回目の終戦記念日』であるとともに、艦隊コレクションゲームの『艦○れ』のアニメ版二期が、『レイテ沖海戦』をメインモチーフにするかも知れないという情報が入ったこともあって、このような短めのエピソードを急遽作成いたしました。
ただし、史実の『レイテ沖海戦』とはかなり状況が異なっており、そもそもしゃべっているのが、軍艦そのものなのか、その擬人化少女なのか、どっちつかずのあいまいな描写となっております。
言わばこれはすべて、『精神世界』における出来事と思し召して、何とぞ大目に見ていただけるよう、伏してお願いいたします。
清霜「……ちなみに、某カ○機関において新たに展示された、アニメ第二期の原画の一部には、金剛さんの妹さんの榛名さんが、いかにも悲しみに暮れているシーンが描かれていたんですけど、まあたアニメ第一期に引き続いて、第三話あたりで、『誰かさん』が『マ○る』んじゃないでしょうねえ? ……………………榛名さんに近しい、『誰かさん』が」
金剛「──ちょっと、何を不吉なことを、おっしゃっているのですか⁉」




