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第310話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その90)

「……まさに今、こんごうが手に持っているのが、姉妹艦である、えいはるきりしまの、『魂』だと?」




 突然突きつけられたあまりの驚愕の言葉に、思わず呆気にとられる、僕ことこの大陸きっての召喚術士兼錬金術師の、アミール=アルハル。




 そのようなこちらの怪訝なる表情なぞ少しも気にすることなく、いつものように滔々と語り始める、今や完全に『解説キャラ』と成り果てている、聖レーン転生教団異端審問第二部の特務司教殿。




「──そもそも『魂』とか『心』なんて、兵器を実際に戦闘に投入する際には、『邪魔』でしかないではありませんか?」




 ………………………は?




「──いやいやいやいや、何をとんでもないこと、言い出してくれちゃっているの⁉ それって『軍艦擬人化』のみならず、陸海空宇宙軍を問わない、『兵器擬人化』作品の、全否定じゃないか⁉ だったら『現代日本』とやらは、どうしてわざわざ軍艦に、『少女の人格』なんかを付与したんだよ⁉」




 僕は、すぐさま、猛抗議した。


 それはそれは、必死に、抗議した。


 ──こんな『危険球的発言』を放っておくと、下手したら業界から消されかねないからな!


 しかしそのように血相を変えてまくし立てるばかりの僕をあざ笑うかのように、しれっと話を続けていく、いかにもさわやかな笑顔が胡散臭い、黒衣の聖職者。




「あくまでも兵器である軍艦に、あえて『少女の人格』を付け加えたのは、何よりも円滑なる『対人インターフェース』の実現のためであり、それ以上でもそれ以下でもありませんよ。……それなのに、『兵器と結婚(一応(カリ)?)』とか、『現代日本』の方々は、本当に(おつむのほうは)大丈夫なのでしょうかねえ?」




「──だから、やみくもに敵を作るような言い方は、よせって言っているんだよ⁉」




「……ただし、これには、『例外』が、あるのですよ」




 え。


「何だよ、例外って? つまり、兵器に人格なんかを与えることによって、むしろ戦闘時においても、有利になるケースもあるってことか?」


「ええ、まさに現在あなたがご自身の目で、見ておられるではありませんか?」


「僕が現在見ているのって、キヨが変化メタモルフォーゼした武蔵と、金剛型四姉妹との、軍艦擬人化少女同士の、ガチの戦闘なんだけど?」


「四姉妹と言っても、長女の金剛嬢ご自身は、戦われていないようですが?」


「……そういや、あいつは一体何をやっているんだ? 彼女の手の中にある、紅い宝石みたいのが、軍艦擬人化少女の『魂』であるって言うのは、本当なのか?」




「はい、あれこそは彼女の三人の妹さんの魂たる、『心の宝石(ソウルジュエル)』が一つに合体した物であり、それを使うことによってこそ、比叡さんたちを、あたかも『心の無い兵器』そのままに、リモートコントロールなされているわけなのです」




「……同じ軍艦擬人化少女でありながら、自分の妹艦たちをリモートコントロールしているって、一体『心の宝石(ソウルジュエル)』って、何なんだよ⁉」




「この剣と魔法のファンタジーワールド的に言えば、魔法の素になる体内の『魔導力炉』や『魔法石』といった物ですが、正確に言えば、『原初オリジナルの人魚姫の魂』が分割されたものなのであり、現代日本における軍艦擬人化少女の開発に当たっては、主に『集合的無意識とのインターフェース』として利用されており、『人魚姫から抽出された女の子としての人格』を与えると同時に、肉体が『ショゴス』により構成されているゆえに、集合的無意識から世界や時代や種族や有機物か無機物かをも問わず、あらゆる存在の形態情報をダウンロードするだけで、軍艦としての兵装その他を現出させることはもちろん、自分自身の肉体すらも、『海底の魔女(ヘクセンナハト)』を始めとして、何者にでも変化メタモルフォーゼすることを可能としているのです」




「……え、それってまさに、軍艦擬人化少女にとっての超常の力の源であり、文字通りの『心臓部』じゃん? それならば各自が体内に収めていて、何よりも自分のために使うべきだろうに、どうして三姉妹ともわざわざ身体の外に取り出して、金剛に預けたりしたんだ?」


「これぞ、『金剛型』──すなわち、『懲罰艦』ならではの、『仕様』なのですよ」


「懲罰艦たる、金剛型としての、仕様、だと?」




「今回のように、懲罰の対象が『大戦艦』に変化メタモルフォーゼするといった、不測の事態においては、指揮官リーダーである金剛嬢以外の三人の妹艦から、『心の宝石(ソウルジュエル)』を抜き取り人格を奪い取って、『兵器』としてのポテンシャルを最大限に発揮させるとともに、指揮官(リーダー)にとっては『姉妹』では無く『物』として扱わせることによって、『自爆攻撃』や『瞬間移動』等の、通常ならざる攻撃をも可能とさせているのですよ」




「……自分の妹を『物』として扱って、自爆攻撃をさせるだと?」


「それこそが、『懲罰艦』ならではの、お役目なのでございます」


「懲罰艦だかチューバ○カだか知らないが、姉が妹をリモートコントロールして戦わせるなんて、そんなもの、本物の『姉妹』なんかじゃない! 単なる『萌えゲーム』における、擬人化妄想設定でしかないだろうが⁉」


「──何をおっしゃっているのです、まさにその『萌え艦隊ゲーム』そのままに、金剛型は姉妹の絆が人一倍強固だからこそ、このような文字通りの非人道的な所業さえも、敢然と行えるのではありませんか?」


「……絆が強固だから、非人道的なことがやれる、だって?」




「いくら元が意思の無い軍艦とはいえ、一度は授かった魂を、姉とはいえ他者に委ねるのですよ? そこに相互的な『絶大なる信頼感』が無ければ、あり得ないでしょうが?」




 ──ッ。


 た、確かに。


 いくら懲罰艦の使命とはいえ、信頼性が低ければ、己の魂そのものと言える物を、託したりはしないだろう。


「……しかし、あえて擬人化してまで魂を与えたというのに、今更『物』扱いして、どれだけの効果があると言うんだ? さっきから頻繁に行われている『自爆攻撃』についても、そもそも防御力の絶大な大戦艦の武蔵には、さほど効いてはいないようだし」


「この『心の宝石(ソウルジュエル)によるリモートコントロール』の利点は、先祖返り的にただの兵器として扱うことのみならず、先ほどご覧いただいたように、『瞬間移動』などと言った、超常なる戦法を可能とすることこそにあるのです」




「──ああっ、そういえば、そうだった! 『瞬間移動』なんて、一体どうやって実現しているんだよ⁉ 物理法則に基づけば、絶対不可能なはずだろうが⁉」




「いえいえ、すごく簡単にできますよ? それこそ『心の宝石(ソウルジュエル)』を使って、ショゴスで構成された肉体を、変化メタモルフォーゼさせるだけでいいのですから」


「へ? 何で『瞬間移動』に、変化メタモルフォーゼのスキルが必要になるんだ?」




「例えば、自分の肉体を集合的無意識を介して空気の形態情報に書き換えれば、その場から消滅できるし、それとほぼ同時に別の場所の空気の形態情報を、自分自身の形態情報に書き換えれば、あたかも一瞬でその場所に移動したかのように、姿を現すことができるのですよ」




 ──なっ⁉


「自分で自分の肉体を、消滅させるだと⁉ 確かにそのやり方だと、事実上の『瞬間移動』は実現するけど、自分の肉体を自分の意思で消し去ることなんて、できるはずは無いだろうが⁉」


 いったん空気なんかに変化メタモルフォーゼしてしまえば、思考することだって不可能だろうしな!


 ──いやそもそも、たとえ一瞬でも、自分を消し去るとか『自殺』そのもののことなんて、『生理』的にやろうとは思えないんじゃないのか⁉




 もはや、ただやみくもにわめき立てるように、反駁する僕であったが、


 目の前の聖職者のほうは、微塵も動ずること無く、あっさりと答えを返してくる。




「ええ、だからこそ、わざわざ瞬間移動をする当人の魂を抜き取って、金剛さんがリモートコントロールなされているのではないですか?」




「…………あ」




「そうなのです、たとえ集合的無意識とアクセスさえできれば、論理的に可能とはいえ、自分自身で行うには非常に困難と思われる、超常的スキルを実現するためにこそ、この『魂の外部化による、リモートコントロール戦法』が編み出されたのですよ」

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