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第309話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その89)

「……何だ、あいつら?」




 突然、巨大戦艦()武蔵むさし』の全身の至る所に炸裂した、『艦砲射撃』。


 普通に考えれば、『何者』の仕業であるかは、歴然としていた。


 何せ、今この場において、無敵とも言える武蔵嬢に対して、敵対の意思を示しているのは、すべての軍艦擬人化少女に対する『懲罰艦』たる、彼女たち──同じく軍艦擬人化少女の、『こんごう型四姉妹』以外にあり得なかったのだから。




 ──しかし、その『戦い方』自体が、あまりにも異様だったのである。




 普通なら、武蔵の圧倒的な火力を見せつけられれば、戦意が喪失してしまうところであろう。


 それでもなお、果敢に攻撃してくるのは、何よりも懲罰艦としての使命のためとも思われ、天晴れな心意気と褒め讃えるべきか。


 ──ただし、たとえそのような場合においても、ある程度の『戦術』を練るのが、定石ではなかろうか?


 例えば、艦砲射撃とは、結構な飛距離を可能としているのだから、アウトレンジギリギリのところから、自分の身を遮蔽物で隠しつつ、発砲すると同時に急いで場所を移動していく等の、『ヒットエンドラン戦法』で、カウンターを食らいにくくしながら、一方的に攻撃をし続けていくといったものが、考えられた。


 しかし、四姉妹のうち長女で指揮官リーダーの金剛嬢を除く、えいはるきりしまの三名ときたら、防御のことなぞまったく考慮していないかのごとく、武蔵のすぐ間近まで果敢に攻め込んできて、至近距離から艦砲射撃をお見舞いし続けたのだ。


 ──これを『自殺行為』と言わずして、果たして何と言うべきか。


 確かにまさしく『高速戦艦』として、旧大日本帝国海軍の戦艦にしては比較的小型で速度が速いので、何と言っても小回りがきき、狙いが定めにくいので、複数同時に襲いかかってくる場合は、対処が非常に困難であろう。


 そうなると武蔵のほうとしても、大口径の主砲だけではとても対応不可能となり、小口径の機関砲や機銃での攻撃に切り替えざるを得ないのだが、それでも容易に命中させることが難しい上に、当たったところであまり効果が無かったのだ。


 それと言うのも、前世が防御装甲が万全な戦艦である、金剛型四姉妹は、被弾ダメージに強いのはもちろん、少々の損傷を被った際にも、『ショゴス』ならではの自動修復機能によって、瞬く間に元通りになってしまうのであった。


 ──とはいえ、武蔵のほうが周囲の被害をまったく考慮せずに、『面爆撃』そのままに、主砲をやみくもにぶっ放してくれば、下手したら三姉妹揃ってお陀仏になってしまいかねないのだ。


 それなのに、まったく恐れる様子も無く、武蔵からの機関砲の雨あられの中を縦横無尽に駆け回り、艦砲射撃を放ち続ける三姉妹たち。


 ──そして、何と、それどころか、




「なっ⁉」




 思わず、我が目を、疑った。




 ──なぜなら、武蔵の真正面に突っ込んできた比叡が、迎撃の機関砲をまとも食らおうとしたその瞬間に、突然姿を消したかと思ったら、完全に死角である真後ろに再び現れて、主砲によるきつい一発をかましたのである。




「えっ、えっ、軍艦擬人化少女には、『テレポート』機能なんかついていたの⁉ ──つうか、『瞬間移動』なんて、物理法則上、絶対に不可能じゃなかったのか⁉」


 ……ここが、「剣と魔法のファンタジーワールドなんだから、『瞬間移動』でも何でも、『アリ』でいいのでは?」、などと言った、とち狂った三流『なろう系』的意見は、『ナシ』な?


 こちとらあくまでも、『科学の徒』である『錬金術師』なのだ。


『魔術師』とか『呪術師』とかの、胡散臭い連中と一緒にするんじゃないぞ?


 科学や化学に則っている限りは、『物理法則』がしっかりと機能していなければ、錬金術としての研究も実験も発見も発明も、まったく実現不可能になってしまうんだよ。


 ほら、僕がキヨを召喚した際において、彼女の肉体を丸ごと日本から持ってくる『異世界転移』では無く、『受け皿』としての肉体を錬金術によってあらかじめ用意してから、集合的無意識を介して彼女の『パーソナルデータ』のみを、『異世界転生ダウンロード』させたじゃん?


 これは物理法則に則れば、どんなちっぽけな物質であろうと、ある一つの世界から跡形も無く消え去ったり、別の世界に忽然と現れたりすることなぞは、『質量保存の法則』上、絶対にあり得ないからこその処置なのだ。


 これはまた、『瞬間移動』なぞ絶対にあり得ないことからも、容易に導き出された。


 ──なぜなら、『タイムトラベル』が、時間の垣根を越えた『瞬間移動』であるように、『異世界転移』は、世界の垣根を越えた『瞬間移動』なのだから。


『瞬間移動』なぞが、たとえファンタジーワールドにおいても、けして実現できないことなぞ、赤子でも十分承知であろう。


 一応、論理的に説明しておくと、もはや基本中の基本であるが、まさにこれぞ物理的大法則として、『一つの場所に複数の物質は、絶対に同時に存在し得ない』というのがあるのだが、想像してご覧、間抜けにも壁の中に『瞬間移動』してしまった、超能力者(w)の末路を。


 壁と一体化して圧死してしまうくらいなら、まだまだ幸運で、壁を構成する分子と超能力者を構成する分子同士が衝突して、SF小説お得意の(学術的には誤った意味の)『対消滅』が起こって、半径数キロ以内の全物質が消滅したりしてね。


「──だったら、何も無いところに瞬間移動すれば、いいのでは?」とか、寝言をほざく手合いもいるだろうが、残念ながらこの世界において、『何も無い場所』なぞどこにも無いのだ。


 水浸しの海や川や湖の類いや、土まみれの地中は言うまでも無く、一見何も無いように見える陸上においても、少なくとも『空気』が存在しているからして、『瞬間移動』なぞしようものなら、空気を構成する分子と超能力者を構成する分子同士が衝突を起こして、SF小説ならではの『対消滅(誤用)』によって、辺り一面が大爆発しかねないのだ。


 ある場所に移動する場合、普通に走って行くならば、その風圧等によって、空気の分子を『どかす』ことができるのだが、一瞬にして移動してきたりしたら、そのまま分子同士が衝突するのを避け得ないというわけだ。


 ──それなのに、今目の前で起こったことは、一体何なのだ?




「……うん? そういえば」




 ここに来て、初めて気がついたのだが、


 一人だけ戦闘に加わらず、教皇庁『スノウホワイト』の入り口にある水門の上にたたずんでいる、『金剛型四姉妹』の長女の金剛嬢が、何やら両手に紅い宝石みたいなものを抱えながら、それに向かって小声でぼそぼそとつぶやいていたのだ。


「何だ、あれは? やけに綺麗なのに、どこか禍々しくも見えるけど……」




「──そりゃあ、綺麗にも禍々しくも見えるでしょうな。何せアレこそが、軍艦擬人化少女たちの、『魂』そのものなのですからね」




 ………………………は?




 あまりにも思わぬ言葉を突きつけられて、咄嗟に振り向けば、そこにはいつものように、聖レーン転生教団異端審問第二部所属の特務司教殿が、いかにも人の良さそうに、ニコニコと微笑んでいたのであった。

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