表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
304/352

第304話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その84)

「……何とも、あっけない、幕切れですこと」




 ──怒濤のごとき砲撃が止んで、今や痛いほどの静寂に包み込まれている運河にて、三人の妹の誰かの溜息交じりのつぶやきが、ぽつりとこぼれ落ちた。




 それも無理は、無かった。




 現在、広大なる運河網を埋め尽くすように浮かんでいる、一人の幼い駆逐艦娘と無数の人魚の、頭部や手足等のバラバラになった肉体は、大日本帝国海軍の高速戦艦(こん)ごう型の擬人化少女にして、他の軍艦擬人化少女たちに対する『懲罰艦』でもある、わたくしたち、金剛・えいはるきりしまからなる、『金剛型四姉妹』の艦砲射撃によって、当然のごとく生じた『戦果』に過ぎないのだから。




「結局、駆逐艦型なんて、あんなものか」


「歯ごたえが無さ過ぎて、拍子抜けですわ」


「召喚に応じて、わざわざ異世界にまでやって来たというのに、まったくもって無駄足だったな」




 そのように、すっかり事は済んでしまったものと確信して、連れ立って教皇庁『スノウホワイト』の城内へと戻っていこうとする、比叡、榛名、霧島の、三人姉妹たち。




 ──長女である、私こと金剛を、残して。




「……金剛お姉様?」


「いかがなされたのですか?」


「もはや『目標ターゲット』は、完全に沈黙しておりますけど?」




「──しっ、来るわよ!」




「「「なっ⁉」」」




 突然、運河の水面に四つほど、海の鬼火である『不知火』が灯ったかと思えば、文字通りに矢のように上空に駆け上がるとともに、かつて帝国海軍が誇った水上特殊攻撃機、『せいらん』への変化メタモルフォーゼしたのであった。




 我々四姉妹一人につき一機ずつ、同時に急降下爆撃を試みる、四機の晴嵐。


「「「「──集合的無意識と、緊急アクセス! 127ミリ連装高角砲の形態情報(データ)を、ダウンロード!」」」」


 けして慌てふためくことも無く、四人揃って対空機銃を展開して、迫り来る敵機を難なく弾き飛ばした、


 ──かと、思った途端、


「「「…………は?」」」


 水面に堕ちた途端、四つの機体のすべてが、それぞれ十歳ほどの幼い少女の手足へと、変化メタモルフォーゼしていったのだ。


 ──そして、続いて、




『……ふふ、ふふふふふ』




『『ふふふ、ふふふふふふ、あは、あははははははははは!』』




『『『くすっ、くすくす、くすくすくす、くすくすくすくすくすくす!』』』




『『『『うひっ、うひひ、うひひひひひひ、ひひひひひひひひひひひひひひひ!』』』』







『『『『『──ふふふ、ふふふふふふふふふ! あは、あははははははははは! くすくすくす、くすくすくすくすくすくす! ひひひひ、ひひひひひひひひひひ!』』』』』







 四方八方から響き渡ってくる、無数の少女たちの哄笑。




 ──何とそれは、一人の駆逐艦デストロイヤー・ガールと、多数の人魚の、『生首』から発せられていたのだ。




「ひっ」


「な、何だ?」


「何で、きよしもや人魚たちが、生首になっても生きているんだ⁉」


「しかもどうして、空母でも航空戦艦でも無い駆逐艦型のくせに、バラバラになった自分の手足を、水上機として飛ばすことができるんだ?」




『……あらあらまさか、どこかの魔法少女でもあるまいし、元々沈没船の化身である軍艦擬人化少女が、艦首くびが取れたくらいで、死ぬとでも思っていたのですか?』




「「「──ッ!!!」」」




 駆逐艦娘(の生首)から飛び出した、少々『危険球』過ぎる発言に、思わず言葉を詰まらせる、三人の妹戦艦たち。


 ……いや、例の魔法少女さんについても、元から肉体が『ゾンビ』状態になっていたのだから、本来なら死ぬはずは無かったんだけど、頭を丸ごとかじられた際に、命の源である『ソウルジ○ム』も一緒に砕かれたものだから、『機能停止』してしまったわけなんでしょうが?


 ──しかし、彼女キヨが言っていることもまた、道理に適っていた。


 そもそも『死の概念』なぞ持ち得ない、不定形暗黒生物である『ショゴス』によって肉体を構成されている、わたくしたち軍艦擬人化少女は、その『思考』や『記憶』を司っている、言わば『外付けの脳みそや魂』とも呼び得る、『集合的無意識』とのアクセス経路さえ維持されていれば、仮に肉体がバラバラになろうとも、可動し続けることが十分可能なのだ。




 ──しかも、集合的無意識とのアクセス権が向上し、他者の集合的無意識への強制的アクセスをも可能となっている、現在のキヨさんは、自分のバラバラになった肉体だけでは無く、人魚たちの肉体の各種パーツすらも、意のままに可動させたり変化メタモルフォーゼさせたりできるようになっていたのである。




「うわっ⁉」


「きゃっ!」


「ちょ、ちょこざいな⁉」


 清霜さんや人魚たちの無数のパーツが変化メタモルフォーゼした、水上機や『ハープーンblock2ミサイル』の攻撃に、今や防戦一方となり翻弄されるばかりの、わたくしを除く三姉妹たち。




「……比叡、榛名、霧島、少しは落ち着きなさい。『懲罰艦』であるわたくしたちの防御力からすれば、駆逐艦や潜水艦や水上機の攻撃なぞ、物では無いでしょうが?」




「えっ」


「あ、ああ、そういえば!」


「生首が『ケタケタ』笑い出すものだから、堪らずビビってしまって、正常な判断力を失っておりましたわ!」




「それに、わたくしたちの攻撃力なら、本来不死身なはずの彼女たちに対しても、十分効き目があるはずです。──全艦、全砲門を開いて、一斉に砲撃せよ!」




「「「了解! 集合的無意識とアクセス、金剛型戦艦の全兵装の、形態情報(データ)をダウンロード!」」」




「各自、いつもの『あうんの呼吸』で連携てわけして、見え得る限りの運河網を、面砲撃せよ!」




『『『了解、全砲門、斉射──!!!」」」




 通常の『戦艦型』をグレードアップした、『懲罰艦』ならではの最大火力で、文字通りに砲弾の雨あられを降らせる、金剛型四姉妹。




 ──その結果今度こそ、駆逐艦デストロイヤー・ガールも人魚たちも為す術も無く、無数の肉片となり果てたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ