第302話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その82)
『ウフフフフフフフ』
『アハハハハハハハ』
『クスクスクスクス』
可憐な人魚たちの笑声が、響き渡っている。
──今や文字通りに地獄絵図と化している、世界宗教聖レーン転生教団の総本山、教皇庁『スノウホワイト』を取り囲む、広大なる運河網のただ中で。
「……さしずめ、聖なる都に仇なす、魔物の軍団の行進というところですか」
その時私こと、大日本帝国海軍所属一等駆逐艦夕雲型19番艦『清霜』の軍艦擬人化少女であるキヨの、唇からこぼれ落ちた自嘲交じりの言の葉。
──別にそれでも、構いやしない。
神が、私たちを否定するなら、私たちも、神を否定するだけだ。
我らを、『悪』や『化物』と、呼びたければ、呼ぶがいい。
そんな『悪や化物』に敗れた、『正義や神』に、何の価値があると言うのだ。
そう、『力』こそが、『真の正義』であり、『真の絶対者』なのだ。
「──晴嵐部隊に、前方の『障害物』どもを、面爆撃で一掃させろ!」
『『『了解!』』』
「──討ち漏らした残存兵力は、『ハープーンblock2』ミサイルにて、各個撃破せよ!」
『『『了解!』』』
私の命令によって、本来は魂を──すなわち、『己というもの』を持たない人魚たちが、練度の高いベテランの兵士のように、時には、大日本帝国海軍『伊四百型潜水空母』として、水上特殊攻撃機『晴嵐』を操り空爆を行い、また時には、海上自衛隊『そうりゅう型潜水艦』として、対艦ミサイル『ハープーンblock2』を反則技的に対地攻撃に用いて、聖レーン転生教団最強の教皇庁直衛の神聖騎士団を、漏れなく撃破していった。
……もはや、『神敵』になろうが『悪魔』になろうが、怖く無い。
何せ、『恋する乙女』は、無敵なのだから。
軍艦擬人化少女の魂の源泉である、『人魚姫』として目覚めた私はもはや、己にとっての『王子様』である提督から、たとえ力尽くでも今度こそ、『真実の愛』を得るのみなのだ。
『原初の海底の魔女』さんのお陰で、己の『真の願望』に気づいた私には、もう迷いなぞありはしなかった。
──それに何よりも、今の私には、頼もしい『仲間』がいるのだから。
『原初の海底の魔女』さんによって、これまでの単なる軍艦擬人化『少女』では無く、『女としての人魚姫』に覚醒した私は、集合的無意識とのアクセス権もグレードアップしたのものの、『★2』レアリティである『駆逐艦型』の魔法少女(?)である私は、ドッ○ルである『海底の魔女』化しても限界があり、グレードアップ分をすべて自分自身につぎ込んでも、何の意味も無かった。
ただし、集合的無意識へのアクセス権のアップグレードには、『自分だけでは無く他者をも、強制的に集合的無意識にアクセスすることができる』という、新たなる効能も含まれており、自分自身の性能向上以外の『余剰分』を、他者の性能向上や変化効果に用いることも可能であったのだ。
──つまり、基本的に単独行動を強いられていた、異世界転生者の私であったが、条件さえ揃えば、『味方』をつくり放題となれるわけである。
しかも、まさにその『条件』のほうも、すでに万全であった。
何と自分が現在いる運河には、自己というものを持たない上に、変幻自在の肉体を持った、『人魚』たちが多数存在していたのだ。
好都合にも『人魚』と言えば、私が元いた現代日本においては、『潜水型』の軍艦擬人化少女の『素体』として採用されているくらいだから、あらゆる種類の潜水艦との『親和性』が高く、第二次世界大戦中のタイプから、現在の海上自衛隊のタイプまで、文字通り変幻自在に変化させることが可能であった。
そして私自身他でもなく、『人魚姫』の魂を有した軍艦擬人化少女なのであり、彼女たちを率いるリーダーとして、これ以上ふさわしい存在は無く、私が発する命令の前では、すべての人魚たちが忠実なる兵士となってくれたのだ。
……ああ、同じ作戦行動をとる場合でも、単独行動では無いって、何て素晴らしいの!(※フラグです)
……それに私自身も、これまでに無く、攻撃面も防御面も、調子は最高よ!(※フラグです)
……もう、どんな相手が敵になろうと、怖くは無いわ!(※フラグです)
──そのように、(作者がつい最近某『魔法少女アニメ』を見たばかりで、完全に影響を受けてしまい)いかにも『フラグ』そのままなセリフを、胸中で高らかに謳い上げていた、まさにその刹那、
「なっ⁉」
突然鳴り響いた爆音と、派手に炸裂する爆炎とともに、人魚たちの首や四肢が、四方八方に爆散したのであった。
「──ごきげんよう、キヨさん、大変申し訳ございませんが、これ以上の勝手な真似は、この金剛が許しませんわ」
──ッ。
聞き覚えのあり過ぎる涼やかな声音に、思わず振り向けば、いつしか教皇庁の入り口の水門の上には、四名ほどの少女たちの姿があった。
「……まさか、金剛型の、四姉妹⁉」
「ええ、今度こそあなたに引導をお渡ししようと、我ら『懲罰艦隊』全員にて、お相手して差し上げますわ♡」
──そしてついに、最後の激戦が、火蓋を切ったのであった。




