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第296話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その78)

 ──以前からずっと、不思議に思っていた。




 本来『つくりもの』であるはずの、私たち軍艦擬人化少女に与えられた『心』のうち、『軍艦の部分』が、かつて第二次世界大戦の折に轟沈してしまった、大日本帝国海軍所属の軍艦の、怨念や悔恨等を基にしていることは、十分承知している。




 だったら、『少女の部分』は、どうなんだろう?




 私たちの心に、『軍艦としての怨念』だけでは無く、『人間としての感情』などと言った、兵器にとってはむしろ『余計なもの』までも付与されているのは、何よりも『対人インターフェス』や『自律思考』や『フレキシブルな言動』等々の、実現のためであることは、言うまでも無かろう。




 ……だけど、なぜそれが、『少女』なのだろうか?




 普通『少女』などといったものは、兵器にとって何よりも必要な、『闘争心』や『勇猛さ』とは、対極の存在だと言うのに。




 ……まさか、私たちの開発陣の中に、某『萌え♡艦隊ゲーの愛好家マニア』がいたとかいった、あまりにもどうしようもない理由でも無かろうし。




 最も考えられるのが、それこそまさにその『萌え♡艦隊ゲー』の二次創作等にあるように、元々人間の少女の肉体に、軍艦としての記憶と、兵器等の艤装を付け加えて、『艦む○』を創造すると言ったパターンであるが、たとえその場合であっても、やはり「なぜそこで、あえて少女の肉体を選ぶのか?」と言った、疑問が生じることになろう。




 ていうか、そもそも我々の肉体は、けして純然たる人間の少女のものなんかでは無く、かのクトゥルフ神話でお馴染みの不定形暗黒生物『ショゴス』によって錬成された、『つくりもの』であるのだし。




 ……一応、軍艦に限らず『船』を女性と見なすのは、洋の東西を問わずいにしえからの伝統であるので、どうにか理解できよう。




 だがそれが何ゆえに、成熟した大人の女性では無く、いまだ幼い少女なのであろうか?




 兵器にとっては、『未熟』であることは、むしろ命取りになりかねないと言うのに。




 唯一考えられる『メリット』は、現時点での幼さゆえの、『成長の可能性』であろうか?




 確かに、兵器といえども私たちのように、『ヒトガタ』をとっているゆえに、『学習能力』が当然のごとく備わっている場合には、最初は文字通りに『機械的反応』しかできなくても、訓練や実戦の繰り返しによって、自律的かつフレキシブルな言動が可能となっていくであろう。




 そういうわけで、軍艦の擬人化として、少女を指定することについては、どうにかこうにか理解できないでも無いが、そもそも軍艦擬人化少女って、『精神』のほうはともかく、『肉体』のほうは、ちゃんと成長するのだろうか?




 ………………………。




 確か昔、それこそ某『萌え♡艦隊ゲー』において、ある『忠犬型』駆逐艦デストロイヤー・ガールが、『改ヴァージョン』にレベルアップした途端、外見がJS(女子小学生)からJC(女子中学生)くらいに成長してしまったところ、発狂した(特殊な嗜好をお持ちの)提督アドミラルさんたちが、それはそれは盛大に発生したと言う。




 ……ええと、何でこんな(しょうもない)ことを、いきなり言い出したかと申しますと、




 ──実はそういった過去の失敗(?)を踏まえて、新たに創造された私たち『軍艦擬人化少女』は、()()()()肉体が成長しないことになっているはずだからであった。




『原則的』と言うのは、例えば『海底の魔女(ヘクセンナハト)化』のように、肉体そのものが変化メタモルフォーゼする場合があるからだ。




 つまり私たちは、肉体は幼い少女のままでありながら、精神のみがどんどんと成長していくといった、(長い目で見れば)『ロリBBA』として育成されているようなものなのだ。




 う、う〜む。確かに逆のパターンとして、『初期状態』において、外見は成熟した大人の女性なのに、中身のほうは未熟な赤子のような状態であるという、『無知シチュ』そのままの歪んだ状況よりは、多少はましであろうが、やはりどちらにしろ、変態的な『萌え路線』であることは、けして否めないかと思われた。




 しかし今回、私自身こうして異世界に召喚されて、初めて個人的に『提督アドミラル』と主従契約を結んで、しかも紆余曲折の末に契約を破棄されて、絶望の淵に沈んでしまうことよって、始めて『本当の理由』に気づいたのであった。




 その一つが、実は我々の『少女としての精神こころ』の基となっているのが、『人魚姫の魂』であったことである。




 それと言うのもこれこそは、『大陸風タイリク・フーウイルス』の脅威にさらされて絶望の淵に沈みかけていた、現代日本人に対して、軍艦擬人化少女の創造のための超越的技術を与えてくれた、謎の全異世界的宗教組織である『聖レーン転生教団』における、『究極の目標』に因るところのものであるのだが、一駆逐艦(デストロイヤー・)ガールに過ぎない私としては、その正確なところは知る由もないので、ここでは割愛させていただく。




 とにかく、我々の『対人インターフェイス』として、『人魚姫の魂=(すなわち)記憶と知識』が、集合的無意識を介してインストールされていることは、今回の様々な出来事を勘案すれば、もはや疑う余地は無いであろう。




 ……ただし、何もこれは、聖レーン転生教団にとってのメリットだけでは無く、ちゃんと軍艦擬人化少女の運用サイドにおいても、様々な利点があったのだ。




 特に人魚姫が、王子様から『真実の愛』を得ることができず、海の泡と化してしまったところなんかは、『轟沈した帝国海軍の艦艇』の怨念や悔恨と、通じるところが大いにあって、機械と生物と言う根源的な違いがありながら、親和性が高く、『軍艦でありながら少女でもある』という我々にとっては、格好の『魂の素材(システム・ベース)』と言えよう。




 更には、人魚姫にとっての『真実の愛』に当たる、提督との『永遠の(エターナル・)契り(エンゲージ)』を何としてでも成し遂げるためにこそ、己に磨きをかけて、軍務に全力を尽くし、少しでも戦果を挙げて、提督に気に入られようとするところなぞ、兵器としては理想的とも思われた。




 まさか、『人魚姫の魂』と、兵器の自律行動プログラムとが、これほどまでに適合マッチするとは、予想外であったろうが、実は我々のような存在は、何よりも『情念』こそが、『成長』を促したりもするのだ。




 ──そう、まさに『女の情念』こそが、我々にとって最大の武器であり、あえて『少女』であることの、理由の一つであったのだ。




 それと言うのも、今回の一連の騒動において、何度も何度も指摘されたように、より己の願望が強い者こそが、集合的無意識とより高度にアクセスができるようになり、『駆逐艦型』とか『戦艦型』とか言った、表層的なカテゴリィなんぞにかかわらず、より高性能になることができるのだから。




 もちろん、我々にとっての『情念』とは、言うまでも無く、『提督への愛』以外の何物でも無かった。




 いかにして、提督と『永遠の(エターナル・)契り(エンゲージ)』を交わし、『真実の愛』を手に入れて、自分だけのものにして、今度こそ『本物の人魚姫』になることができるか。




 それこそが、我々軍艦擬人化少女の、最大の原動力であり、すべてであった。




 ……ふふふ、情念によってこそ、最大出力を可能にするなんて、むしろ兵器としては、『欠陥品』に他ならないであろう。




 しかし、何度も何度も言うように、私たちは『軍艦』であると同時に、『少女』でもあるのだ。




 だからこそ、ただの機械なんかでは不可能な、世のことわりすらぶっちぎった、『奇跡』そのままの力を発揮できるのだ。




 あたかも、邪悪なる『宇宙生物』と契約を結ぶことによって、邪悪なる『魔女』としての力を手に入れた、外見だけは幼く可憐なる『魔法少女』であるかのように。




 ──だけど、別にそれでも、構いやしない。




 何せ、『軍艦と人魚の生まれ変わり』である私たちは、自分にとっての王子様である、提督アドミラルの愛を手に入れるためだけに、情念を燃やし闘い続けるのみなのだから。




 ──まさに今この時、聖レーン転生教団の総本山である教皇庁に侵攻中の、大日本帝国海軍所属の一等駆逐艦であるゆうぐも型19番艦の、私こと『きよしも』そのままに。

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