第282話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その68)
「私たちは、軍艦の時には、自分の乗組員を始めとする日本の皆様を守ることができなかったことで悔やんで、その怨念の具現として『海底の魔女』となってからも、自己嫌悪し続けて、軍艦擬人化少女として甦ってからも、凶悪なる『大陸風ウイルス』から人々を守り切ることができず、自分の至らなさを痛感し続けて、その失望感のあまりか、あるいはより強い『力』を求めてか、再び『海底の魔女』へと変化しても、結局何も解決できないことに気づき、挙げ句の果てには私のような同胞に討伐されるといった始末でした」
「そこまで至ってようやく、知り得たのです、すべては自らの『弱さ』ゆえに、逃げ続けていただけなのだと」
「軍艦であった時も、『海底の魔女』へと堕した時も、軍艦擬人化少女として甦った時も、兵器としても超常的存在としても、私たちは皆単体では、文字通りに『世界最強』と言い得るほどの、強大なる『力』を有していました」
「それなのに、いつだって私たちたちは、『兵器』として与えられた使命を──自分自身の『日本の皆様を守りたい』という願いを、完璧に叶えることができませんでした」
「それは、そうでしょう。すべての望みを完全に叶えることなんて、我々のような『超常のスーパーウエポン』どころか、神様にだって不可能なのですから」
「しかし、それに気づいた時は、すでに遅かったのです」
「最後の手段として、再び『海底の魔女』に変化したと言うのに、望みを叶えることができず、この上なき絶望に囚われて、自我を失い暴走して、結局すべてに後悔しながら、仲間に狩られてしまうのみでした」
「お陰で、私自身も、ようやく目が覚めたのです」
「──ああ、私も結局、自分の弱さから、逃げ続けていただけなのだと」
「欧米人のような金髪碧眼が悪いのでは無く、これこそが『この世で唯一絶対の自分自身』なのだと、認めることのできなかった己こそが、間違っていたのだと」
「人は誰でも、生まれる種族や、国家や、肌の色や、性別や、貧富等々を、自分で選ぶことはできません」
「生まれた環境の、家族関係や、都市部か僻地か、教育水準や、治安度等々も、それぞれに異なっていることでしょう」
「しかし、自分自身や身の回りの環境に、不満を持ち続けたところで、何の意味も無いのです」
「自分の髪や瞳や肌の色が気にくわないからと言って、それを変えることができますか?」
「そのために差別を受けたからって、『暴力』で対抗して、世間はあなたのことを認めてくれるでしょうか?」
「そんなことよりも、自分自身や周囲の環境が、どのようなものであろうとも、ちゃんと受け容れて、下手したら自分を差別し抑圧しようとしている、他の人間たちや社会や国家すらをも、『そういうもの』だと、認めるべきなのです」
「もちろんこれは、差別を受け容れて『泣き寝入りしろ』などと、言っているわけではございません」
「あくまでも、まず最初の『出発時点』として、あるいは『大前提』として、『現状』をしっかりと認識しろと言っているのです」
「『世界への反撃』は、それから後の話です」
「『自分自身を変えていき、社会そのものを変えていく』ことだって、当然必要ですが、それはあくまでも『第二段階』以降の話なのですよ」
「つまり、ちゃんと生まれたままの自分自身を受け容れて現在の社会に適合しつつ、徐々に自分自身や自分の属するコミュニティ全体に対し磨きをかけていき、差別されたり馬鹿にされたりしないようにしていくのです」
「──ただし、ここでけして間違ってはならないのは、どんなに時間がかかろうとも、自分や種族全体を底上げしつつ、社会そのものを変容させていって、例えばあなたが『黒人』だとしたら、世界そのものを黒人だけを優先するように歪曲してしまうのでは無く、『黒人も白人もその他の黄色人種等々も、みんな分け隔て無く手を取り合える』ようにしていくべきなのであって、短絡的に『黒人差別反対運動』をしても、何の意味も無いのです」
「なぜなら残念なことにも、現在の世界において差別を無くすことは絶対に不可能であり、『黒人差別』なるものは間違いなく存在しているのですから、いくら『黒人差別反対!』と叫ぼうが、目的を達成することなぞ永遠にできないでしょう」
「よって、『世界』そのものや白人等の別の人間たちの意思を変えようとするよりも、むしろ黒人自身がけして差別されないような立派な人間になれるように、すべての黒人一人一人がそれぞれ努力していくべきなのです」
「……こう言うと、『黒人を差別する土壌こそが、黒人を貧困に堕とし、犯罪に走らせるのだから、いくら努力しようが無理だろうが⁉』などと、初めから話しにならないことを言い出す『敗北主義者』が大勢いますが、少なくとも我々大日本帝国は、明治の御維新以来ずっと、日本人の──ひいてはアジア人全体の地位向上に、全力を尽くして参り、現在の『経済大国日本』においては、国際的にそれなりの地位を確立しており、先の大戦においては残念ながら敗北を喫しましたが、多くのアジア諸国の独立に寄与したのは、周知の事実でございましょう」
「少なくとも、ただ口先だけで『黒人差別反対!』などと叫んでいても、何も成し遂げることはできないのです」
「それどころか、日本国──特に、米軍基地が集中している沖縄において、あれだけ黒人による凶悪事件を繰り返しておきながら、『黒人差別反対!』などと言って、プロ市民どもとインチキ抗議活動を行おうものなら、殺されたって文句は言えないでしょうよ(怒)」
「……これもすべては、沖縄決戦の緒戦において、我々帝国海軍が制海権を守りきれなかったせいでございます。まさか我々が軍艦擬人化少女として甦る以前に、憎き鬼畜の米兵に占領されてしまった沖縄において、幼い女の子すらも含む無辜な民たちが、忌々しき黒人兵どもの毒牙にかかってしまうとは……ッ! 今からでもこの『金剛』の356ミリ45口径主砲を、お粗末な股ぐら目掛けてぶっ放して、粉々に吹き飛ばして差し上げたいほどですわ!」
「──あ、あら、私ったらすっかり興奮して、随分とはしたないことを口走ってしまいましたわ、どうぞご容赦のほどを、オホホホホ」
「とにかく私が言いたいのは、どんなに自分の身の上を恨んだところで、何も始まらないし、そんなことよりも、自分自身や周りの環境──ひいては、世界そのものを変えていくための、努力こそをするべきだと言うことですわ」
「なぜなら、一見荒唐無稽に思われるものの、実は現在においてはすでに、誰にでも可能な世の中となっているのですから」
「一昔前であれば、僻地の種族的に抑圧された貧乏な家庭に生まれ落ちてしまえば、よほどのことが無い限り、虐げられるばかりの人生を強制されておりましたが、現在にはもはや『全知』そのものとも言える、全世界的な情報の集積場所である、『インターネット』がございます。ちっぽけなスマートフォンがほんの一台あるだけで、誰でもアクセスできて、どんな高度な教育機関であろうとも教えてくれないような希少な情報であろうと、本人が興味を持ち必要とすれば、難なく手に入れることができるようになっております」
「具体的に言えば、ほんのつい最近までの日本においては、官公庁や大企業を始めマスコミや出版社に至るまで、そのほとんどすべてが東京に集中しており、一生東京に行くことのできない、片田舎の貧乏な家庭に生を受ければ、世の中のことを何も知らずに朽ち果てるだけでした」
「しかし、現在は違います。本人に向上心があり、スマホ一台あれば、東京に住んでいる志の低い情弱なんかよりも、よほど大量で有益な最新情報を、世界中から一瞬で収集することができ、例えば『学術的論文作成』や『Web小説づくり』に役立てて、その成果を居ながらにして世界中に公開することだって十分可能なのです」
「東京で一二を争う地方公共団体の両方共に正規職員として勤務していた、作者だから断言しますが、必要な情報を手に入れることができるのなら、殺人的な満員電車等に代表されるように、人を人として扱っていない劣悪なるインフラ状態の首都圏よりも、一人一人が納税者として大切にされているド田舎で暮らしたほうが、はっきり言って豊かな人生を送れるし、東京とか日本とか言ったちっぽけなレベルでは無く、『世界的な成功』を手中に収めることだって、けして不可能ではございません」
「……結局何が言いたいかと申しますと、間違いなく『世界は変わり続けている』と言うことですよ。だったら自分自身だって変われるわけで、本人さえ努力すれば、誰からも『差別されない』存在になることだってできるのです」
「要は、本人の『やる気』次第なのですよ」
「それなのに、肝心の自分自身を否定したのでは、何も始まらないのです」
「──私は、ギリギリのところで、気づくことができました」
「もはや何の迷いもなく、『戦艦型の軍艦擬人化少女』として、己の務めを果たしていく所存であります」
「皆様も、けして現在のありのままのご自分を卑下すること無く、ご自分だけでも己自身や周囲の環境をお認めになって、是非とも前向きに正々堂々と、人生を戦い抜いていってください」
「それでこそ、『やりがい』や『満足』を感じることはできても、けして『敗北』を喫することなぞあり得ないのです。──なぜなら、人生と言うものは、自分こそを『サイコー』だと信じて、『楽しんだ』者こそが、勝者となり得るのですから♡」




