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第276話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その64)

「──あらゆる意味において、『争い』を制するのは当然のごとく、『力』なのでございます」




「ただしそれはけして、『物理的な力』だけに、限らないのです」




「むしろ『意思の力』こそが、勝敗を決することのほうが、少なくは無いのですよ」




「……え、そんなのは文字通りに、『精神論』に過ぎないですって?」




「そもそも、『意志の勝利』とか言っていたドイツも、それこそ精神論ばかりを喧伝していた日本軍も、『あちらの世界』における第二次世界大戦にて敗れたじゃないか、ですって?」




「いえいえ、むしろその両国こそ、『物理的な力』に頼るばかりだったからこそ、敗北を喫してしまった、代表格と申せましょう」




「特に大戦初期の彼らは両国共、自分たちには優れた兵器と優れた兵士が、有り余るほど存在しているので、絶対に勝てると信じ込んでおりました」




「──『物理的な力』に頼って、『絶対に勝てる』などと言った、本物の『神様の軍隊』であろうと絶対に不可能なことを信じ込んだ時点で、彼らは『精神的』に、すでに敗北していたも同然だったのです」




「それに比べて、攻め込まれた側のアメリカやイギリスやソビエトは、勝つことよりも、『これ以上負けない』ことに全振りして、防御にこそ力を注ぎ、『絶対に負けられない戦争』を始めました」




「何せ、連合国側はどの国も、現在において侵略の危機にさらされているのであり、一人一人の国民が明日にでも殺されたり、外国人の奴隷にされたりするかも知れないのです。すべての国民が『侵略者と断固として戦う』という、『一つの意思』で統一されるのは、当然のことでしょう」




「更には、侵略を受けている自分たちこそは、『正義である』と、心から信じられたことも、大いなる力となりました」




「いくら日本軍が『大東亜共栄』を叫ぼうが、ドイツ軍が『共産主義の危険性』を喧伝しようが、何の意味もございません。どうしても攻めている側の銃後の国民たちには、楽観論が蔓延りがちで、本当の意味ですべての意思を統一することも、自分たちこそが絶対的に正義であると信念を持つことも、ほとんど不可能でしょう」




「──つまり、あの大戦については、初期の段階ですでに、『意思の勝敗』はついていたのです」




「ただしこれは、彼我の『物理的な力』についても、ある程度均衡状態にあることを前提にしているのは、言うまでも無いでしょう」




「最初から物理的な力の差が大幅にあれば、文字通りに『力押し』のみで勝負をつければいいのですから」




「これはまさに、最弱クラスの駆逐艦型でさえ、剣と魔法のファンタジー異世界においても無双できる、軍艦擬人化少女同士の、ガチの戦いについても言えるのです」




「下手すると、都市一つを軽く消滅させることができる彼女たち同士で、物理的に争い合ったところで、周囲に甚大な被害を及ぼすばかりで、なかなか勝負がつかないでしょう」




「何せその本性が巨大なる鋼鉄の塊である軍艦なので、頑丈さも折り紙付きですからね」




「これは、チートスキルを有するキャラばかり登場している、『なろう系』Web小説に例えると、よりわかりやすいでしょう」




「──なぜに『なろう系』は、あれ程ネット上で叩かれてしまうのか?」




「それは、ほとんどのWeb作家が、本当の『力』というものを、理解していないからなのです」




「ただでさえチートキャラばかりの、剣と魔法の異世界において、更に神様あたりから絶大なるチートスキルを与えられている『転生主人公』のみが、何の苦労も無しに、物理的に無双してしまうのでは、説得性も面白みも皆無でしょう」




「確かにそこには『物理的な力』は有るかも知れませんが、『意思の力』は微塵も存在していませんしね」




「その証拠に、『……あれ、もしかして今何か、すごいことが起こりましたか?』などと言ったふうに、主人公自身が『力』を行使することに自覚が無いほうが、いっそ好ましいように描かれている作品ばかりなのであり、もはや言語道断と申せましょう」




「なぜなら、『自覚無き力』とは、ただただ物理的だけであって、そこには『己の意思』は介在しないと言うことなのですから」




「存在自体が、『中身の無いインフレバトルの繰り返し』のみである、『なろう系』Web小説において、『物理的な戦い』をいくら描写しようが、もはや何の説得力も無く、読者様の心を動かすことなぞけして不可能でしょう」




「これこそが、ネット上に蔓延る『なろう系叩き』を生み出す、重大なる要因の一つとも言えるのですが、これに気がついているWeb作家なんて絶無と言っても過言では無く、今日も今日とて文字通りテンプレ極まる、チートスキルによる物理的バトルの乱発に明け暮れているという体たらくなのです」




「そもそも文字媒体である小説における『バトル描写』については、いくら『アクション』を詳細に描こうとしても限界があり、そこにこだわってもあまりメリットは無く、そういったことは漫画やアニメ等に任せたほうがよろしいでしょう」




「──ていうか、むしろ本当に大ヒットしたアニメって、作画やアクションも素晴らしかったものの、特に戦闘時における『心理描写』が優れていた作品こそ、真に評価されたとは思われません?」




「例を挙げれば、『新世紀エヴ○ンゲリオン』とか、『魔法少女ま○か☆マギカ』とかね♡」




「──あらら、私の『意思の力こそ大正義論』が、正しいことが、もはやこの時点で確定してしまいましたねえ?」




「……まさか、異論がお有りな方なんて、存在しやしませんよね?」




「何せ『エヴ○』も『ま○マギ』も、見かけのアクション描写なんかでは無く、登場人物たちの心理描写にこそ定評があり、それまでのアニメにおけるバトル描写に──否、アニメーションという存在そのものに、大革命をもたらしたのですから」




「それなのに、『反則技チートスキル』を使ってまで、『見せかけだけの物理的力』によるバトル描写しかできない、『なろう系』作品が、アニメ愛好家を始めとして、ネット上で袋だたきに遭うのは、当然の仕儀と申せましょう」




「──すべてのWeb小説家の皆様、今からでも遅くはありません。これから『なろう系』のバトル描写は、『心理戦』こそを重点に作成して参りましょう!」




「そしてもちろんこれは、存在自体がチートそのものである、軍艦擬人化少女同士のバトルにおいても当てはまるのです」




「確かに戦艦型の軍艦擬人化少女は、その『懲罰艦』としての存在理由に基づいて、他の軍艦擬人化少女よりも、格上の攻撃力と防御力とを与えられておりますが、現在の戦況が完全にワンサイドゲームとなっているのは、そのような物理的理由のみでは無く、精神的理由も大きく作用しているのです」




「おそらくきよしもさんとしては、基本性能(スペック)ではまったく勝ち目が無くても、禁忌の外法である『海底の魔女(ヘクセンナハト)化』を行えば、勝機は十分にあると思われたのでしょう」




「もちろん、相手も同じ軍艦擬人化少女であるからには、やはり『海底の魔女(ヘクセンナハト)化』は可能なのですが、いったん『海底の魔女(ヘクセンナハト)』となれば、もはや駆逐艦型と戦艦型との格差は、それ程問題とされなくなるはずだから、とにかくがむしゃらに力押しをし続けていれば、どうにかなるものと思っていたかと予想されます」




「──しかしむしろ、そのように考えること自体が、すでにその時点で、『心の戦い』に負けていたのです」

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