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第274話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その62)

 ──それはもう、酷い有り様であった。




 もはや、同じ軍艦擬人化少女同士の、一対一サシの対戦などといったものでは無く、一方的な『虐殺』以外の何物でも無かった。




 しかも何よりも、その『絵面』が、最悪であったのだ。




 何せ、軍艦擬人化少女と言えば、その絶大なる攻撃力に反して、外見のみはあくまでも可憐な年若い少女であるはずなのだが、生憎と両者に『戦艦型』と『駆逐艦型』としての圧倒的な性能差があったために、駆逐艦のほうが禁忌の裏技の『拘束解除』ヴァージョンである、禍々しく巨大なる『海底の魔女(ヘクセンナハト)』へと変化メタモルフォーゼしていて、見た目からも非常にグロテスクなものとなっていたのである。


 大砲や機関砲等の軍艦の各武装と一体化した無数の触手を伸ばした、イソギンチャクやウミウシそのままの青白い巨体の上に、一糸まとわぬ十歳ほどの幼い少女の上半身だけが乗っかっているその様は、もはや忌避感や嫌悪感よりも、いっそ淫靡さ(エロス)すらも感じられた。


 そのような異形の美少女と、十代半ばの年頃の金髪碧眼の正統派美少女とが、広大な運河網の中で相対しているのである。これで『一方的な戦い』となると、普通は正統派のほうが圧倒されているか、あるいは苦戦しながらも何とか凌いでいるといったふうに、思われるところであろうが、




 ──実際はむしろ、『真逆』とも言うべき、状況にあったのだ。




 それだけ『戦艦型』と『駆逐艦型』との軍艦擬人化少女としての実力には、なりふり構わず『奥の手』を使ってもなお、埋めきれない差があると言うのであろうか。


 元々『海底の魔女(ヘクセンナハト)』とは、かつての大戦で海の底に轟沈してしまった軍艦の化身なので、少々の攻撃にはビクともしないはずなのだが、体積では何十分の一ほどしかない戦艦娘側からの怒濤の砲撃によって、『万物変化メタモルフォーゼ』スキルで再生する間も無く砲弾を食らい続けているものだから、もはや満身創痍といった有り様となっていた。


 それでもどうにか一矢報いようと、わずかな隙を狙って駆逐艦型も数少ない砲撃を行うものの、見るからに小柄な少女の姿をした戦艦型のほうは、いくら直弾を受けても痛痒を感じる様子も見せず、攻撃の手を緩めることは微塵も無かったのだ。


 まさしく、「……これって絵面的に、おかしくね?」とでも、言いたくなるような、異常きわまる状況だが、ある意味これぞ、『戦艦の力を有した「主人公」の少女による、駆逐艦が変化メタモルフォーゼした「怪物」退治』とでも呼び得る、正統派異能バトルそのものとも言えよう。




 ──ただし、実はまさにその『怪物』のほうが、他ならぬ我がしもべであり、むしろ相手側の戦艦娘のほうが、僕を自分の『提督』にしようとして突然割り込んできて、有無を言わさず暴力をふるい続けている『加害者』であるという、まさに『非正統イレギュラー』そのままに錯綜した状況にあったのだが。




「……まさか、こんなことになるとは」




 その時漏れいずる、つぶやき声。


 ──しかしそれは、僕の唇から発せられたものでは無かった。


「……司教?」


 思わず振り向けば、短めの金髪に縁取られた彫りの深いかんばせの中で、清廉な光を讃えた青の瞳が、こちらを見つめていた。


 ルイス=ラトウィッジ。


 彼こそは、世界的宗教組織『聖レーン転生教団』においても特殊極まる、秘匿部隊異端審問第二部の誇る、特務司教殿であったのだ。




「──いやいやいや、なに他人事みたいに言ってくれちゃっているの⁉ こんごうたち戦艦娘を連れてきたのは、あんた自身だろうが!」




 もうね、すかさず、猛抗議しましたよ。


 例えるなら、突然人間界に攻め込んできた、ドラゴンたちの王が、「……ありゃまあ、どうして人間の都市が、こんなにボロボロになっているの?」とか何とか、いかにもわざとらしく煽っているようなもんだろうが、今の台詞って⁉


「……あ、いや、そんなつもりは無かったんですよ、ご気分を害されたのなら、謝ります」


「そんなつもりじゃ無かったら、どんなつもりだったんだよ⁉」




「いえね、同じ軍艦擬人化少女と言っても、こちらは戦艦型で、しかも大人数だったから、もっと単純に『異能バトル』的展開で、あっさり片がつくものとばかり思っていたのですよ。例えこちらが『弱い者いじめ』的な、『悪役』となったとしてもね。──しかし、駆逐艦型であられるキヨさんが殊の外粘られて、禁じ手である『海底の魔女(ヘクセンナハト)』になってまで、大半の戦艦型を倒してしまい、現在の金剛嬢との一対一サシでの激戦と相成っているわけなのですが、これってまるで、『正義』側の少女戦士と『悪』側のモンスターとが、戦っているようだと思いません?」




 ──うっ。


「……た、確かに見かけ上は、まさにそんな構図となっているのは、けして否定できないよな」


「いいえ、けして『見かけ』だけでは、()()のですよ」


「へ?」


 金剛が『正義』でキヨが『悪』というのが、見かけだけでは無いだと?




 こ、こいつ、一体何を言い出すつもりなんだ⁉




「さっきから漏れ聞こえてくる、彼女たちの会話を聞いていて、あなたは思われませんでした? 『──あれ? ひょっとして、戦艦型こんごうが言っていることのほうが、正しいんじゃないのか?』って」




 ──‼

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