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第270話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その58)

 ──嫌だ。




『右舷上方よりの、発砲を察知、自動迎撃システム、発動!』




 ──嫌だ。嫌だ。




『前方至近距離に、新たなる砲門出現! 先制攻撃により、破壊!』




 ──嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。




『45度目の、一斉飽和攻撃! 各防御障壁(バリア)の、硬度最高値(MAX)化!』




 ──嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。




『集合的無意識との、緊急アクセス!』




 ──絶対に、嫌だああああああ!




『対空機銃にて、弾幕を常時展開!』




 ──この『心』は、私の物だ。




『敵砲弾、全弾の87%を被弾!』




 ──提督とともに育んできた、私だけの物なんだ!




警告アラート! 警告アラート! 警告アラート! 警告アラート! 警告アラート! 警告アラート! 警告アラート!』




 ──けして奪われて、なるものか!




防御障壁バリア、限界値に到達! これ以上の戦闘継続は、困難と判断!』




 ──たとえ、悪魔に魂を売り渡そうとも、守り切ってやる!




『もはや、現在の形態を保持するのは、不可能! 速やかなる、「拘束解除」を推奨!』




 ──この身がどうなろうが、最後まであきらめるものか!





『46度目の、一斉飽和攻撃発動! 防御障壁バリア、消失! 全弾、回避不能!』




「──うおわああああああああああああああああああああっ!!!」




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「──全弾、弾着、確認!」


「やったか⁉」


「馬鹿っ、それって、『やっていない』フラグでしょうが⁉」


「いやいや、あの状態なら、大丈夫だろう」


「それもそうかあ」




「「「──あははははははははははは!!!」」」




 運河網を臨む大通りにて響き渡る、年若き女の子たちの笑声。


 それは冗談交じりの、いかにも朗らかなものであり、彼女たちの清楚な外見にも、似つかわしかった。




 ──その華奢な肢体の周囲に展開されている、見るからに武骨なる大砲や機関銃等の、『戦艦用の兵装』を除けば。




「……そんな、キヨ」




 運河の奥ほどにて、もうもうと沸き立っている、爆炎と水蒸気を目の当たりにしながら、思わず口をついてでるつぶやき声。


 それに律儀にも、返事を返してきたのは、もちろん毎度お馴染みの、黒衣の聖職者の気障っぽい声音、


 ──では、無かった。




「大丈夫ですわよ、提督さん」




 なっ⁉


「……こん、ごう?」


「はーい、大日本帝国海軍所属、高速戦艦(こん)ごう型一番艦の、金剛デース♡」


 確かに現在僕の目の前にいるのは、華奢なれど出るところは出ている白磁の肢体を瀟洒で可憐なるワンピースドレスに包み込み、黄金きん色の長いウエーブヘアに縁取られた彫りの深い端整なる小顔中で、サファイアのごとき碧眼を煌めかせている、『あちらの世界』で言うところの『西洋人形』そのものの、年の頃十五、六歳ほどの絶世の美少女であった。


「……何で、こんなところに? さっきの飽和攻撃には、参加していなかったのか?」


 運河のほうでは、すでに勝負は決まったものと安心しきった戦艦娘たちが、いまだ爆炎晴れぬ『爆心地』へと歩み寄っていた。


「ええ、わたくしには独自の、重要なるお役目がございますので」


「……役目って? ──あっ、まさか、この隙に乗じて、僕と『主従の契り』を結ぶつもりじゃないだろうな⁉」


「あら、提督さんてば、案外薄情であられるのですね?」


「僕が、薄情、だって?」




「まさか、あれくらいの砲撃が直撃したくらいで、キヨさんがやられたりするわけが無いでしょうが?」




 彼女が、そう断言した、


 ──まさに、その刹那であった。




「ぎゃっ⁉」


「うぐっ!」


「おわっ⁉」




 突然、いまだ立ちこめている爆炎の中から、何か生白い巨大な鞭なようなものが飛び出して、すぐ間近までに迫って戦艦娘たちを二、三人ほど、避けるいとまも与えずに弾き飛ばしたのであった。


「──くっ!」


「気をつけろ!」


「『目標ターゲット』は、まだ生きているぞ!」


「全員、緊急砲撃────ぎゃあっ⁉」




 その瞬間。




 爆心地より、無数の砲弾が放たれて、


 戦艦娘たちはもとより、運河や周辺の壁面から生え出てきていた砲門を、一気にすべて打ち抜いて、あっさりと無力化してしまったのだ。




 そして、ようやく爆炎と水蒸気が晴れて、その場に現れたのは、




「……海底の、魔女」




 そうそれは、『人魚姫』である軍艦擬人化少女たちの真の姿であり、轟沈した軍艦の怨念と憎悪の具現たる、『海底の魔女(ヘクセンナハト)』の、禍々しく巨大なる姿であった。




 すっかり色素の抜けきった青白い鱗にびっしりと覆われた、ウミウシやイソギンチャクをスケールアップしたかのような異形の巨体から伸びている、触手のままの多数の腕の先端で大きく顎門を開けている、軍艦の砲門。


 そしてその上にちょこんと乗っているのは、一糸まとわぬ十歳ほどの少女の上半身と、銀白色の髪の毛に縁取られた顔の中で鈍く煌めいている、鮮血のごとき深紅の瞳。




 色彩こそまったく様変わりしているものの、それは間違いなく、我がしもべその人であった。




清霜キヨ……」


 思わずその名を、口にした途端、


 今度はすぐ間近から聞こえてくる、あまりにも場違いなる、軽快なる拍手の音。




「──おめでとうございます、きよしもさん!」




 ………………………は?


 金剛?


「おめでとう」って、


 一体何を、言い出すんだ?


 自分の仲間の戦艦娘があっさりと、全員キヨにやられてしまったと言うのに、この余裕は何なんだ?


 のんきに拍手なんかを送っている、場合じゃないだろうが?




 ……いや、待てよ。




 そうか、そういうことか!


 キヨが『海底の魔女(ヘクセンナハト)』になれると言うことは、当然、同じく軍艦擬人化少女である彼女自身も、変化メタモルフォーゼできると言うわけか⁉




 ──しかも、駆逐艦型では比べようもないほど強力無比な、戦艦型の『海底の魔女(ヘクセンナハト)』に!

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