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第267話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その55)

「──かつて『あちらの世界』には、日本国民から『鬼畜ルメイ』と呼ばれた、アメリカ軍人がおりました」




「わざわざ高高度戦略爆撃であるBー29を、確実に日本人を仕留めるために、低空焼夷弾爆撃を行わせることで、東京を始めとする全国のほとんどの都市を灰燼と化させて、無数の非戦闘員の犠牲者を出したのです」




「まさにこれぞ、『鬼畜』の所業と、申せましょう」




「──しかし、当時のアメリカ人からすれば、日本人を大量に虐殺した彼は、間違いなく『英雄』であり、更には敵軍に『鬼畜』と呼ばれるからには、それなりに天才的な『策略家』だったのです」




「事実、日本の航空部隊より増して精強だった、ドイツ空軍を相手取った欧州戦線での、誰もが無謀極まりないと評した『帝都ベルリン空襲作戦』においては、戦闘機の護衛無しで爆撃機のみを出撃させつつも、『コンバットボックス』という卓越したアイディアによって、本来なら敵側のワンサイドゲームとなるところを、被害を最小限に食い止めるとともに、多大なる戦果すらももたらしたのです」




「そもそも大量の爆弾を搭載するために大型で鈍重な戦略爆撃機は、身軽で攻撃力が高い敵戦闘機に対しては、完全に無力で、一度狙われると何ら抵抗できないままに撃墜されるだけであり、いまだナチスドイツがヨーロッパ大陸を完全支配している際に、帝都ベルリン爆撃を立案したルメイに対しては、実際に爆撃に当たるBー17の搭乗員を始めとして、非難囂々の有り様となりました」




「何せ米軍航空部隊のBー17やBー29等の戦略長距離爆撃機は、搭乗員が10名以上もいて、一機撃墜されるごとに、10名以上の損失が生じるという、非常にリスクが高く、よほど成功の見込みが無ければ、一度に数百機もの大編隊で敵の本拠地を爆撃させるなどと言う、無謀な作戦などが認められるはずが無かったのです」




「しかし、当時の米軍上層部においては、東部戦線でドイツの陸軍戦車部隊と血みどろの潰し合いを行っていた、ソビエト赤軍上層部から、一日でも早く西ヨーロッパに『第二戦線』を築いてドイツを挟み撃ちすることで、ソ連の負担を軽減してくれと、矢のような催促をされていたのです」




「これは後に『ノルマンディー上陸作戦』として実現されるのですが、それは戦争後半から終盤での話であり、序盤から中盤にかけてのドイツ軍は、名実ともにヨーロッパ最強の軍隊であって、イギリス本土防空戦の勝利に調子に乗って、ヨーロッパ大陸全体の制空権を奪おうとのこのこ出撃したら、ドーバー海峡上でルフトヴァッフェ最新鋭機のFw190によって、大戦中最強(w)の戦闘機のはずのスピットファイアが、まるで蠅みたいにばたばたとたたき落とされて、『Fw190を見かけたら、勝負をせずに、一目散に逃げろ!』という、ドイツ軍や日本軍では絶対にあり得ない、『敵前逃亡』の公式命令が下されると言う有り様だし、だったらいっそのこと米英加三軍合同で、ドイツ軍の守備隊の手薄なフランスのディエップへの上陸作戦を強行したところ、六千の大軍が四分の一の敵兵力に、けちょんけちょんにやられて尻尾を巻いて撤退していくという体たらくだし、とても紅い帝王スターリン様が満足できるような、戦果を挙げることなぞ、夢のまた夢の状態だったのです」




「そこで苦肉の策として、アメリカが開発に成功した、数百機を超える高性能大型爆撃機による、ヨーロッパ大陸のドイツ軍占領地区の空爆を計画したのですが、主力爆撃機であるBー17自体は、帝都ベルリンを含むドイツ本土まで悠々と到達できる超長距離性能を誇っていたものの、戦闘能力が皆無の爆撃機を護衛するための戦闘機には、とてもドイツ本国まで到達する航続性能を有するものは存在せず、文字通り『狼』の群である(フォッケ)(ウルフ)』190部隊が待ち構えている敵地に、自ら飛び込んでいく『羊』そのものの有り様で、当然のごとく看過できないほどの犠牲を出して、上層部はとうとう万策尽きたのでした」




「──しかし、そこで満を持して登場したのが、アメリカ陸軍航空部隊きっての、『虐殺』のプロ、カーチス=ルメイ大佐(当時)だったのです!」




「何せ、敵戦闘機を撃墜するのも、パイロットの『虐殺』ですので、『鬼畜』ルメイに任せれば、大船に──おっと、大型爆撃機に乗った気になれること、請け合いでしょう!」




「そんな彼が提案した、効率的な戦闘機パイロットの『虐殺』方法とは、至極簡単明瞭で、護衛戦闘機を付けることができないのなら、爆撃機同士で守り合おうというものでした」




「それを聞いた上層部は、あまりにもありきたりで、しかも実効性が薄そうなので、非常にがっかりしたものの、実際に行ってみたところ、何と効果のほどは絶大でした」




「そもそもFw190がいかに高性能と言っても、戦車大国ドイツの軍用機である限りは、『地上部隊支援』を主目的に開発されているので、中低空域においては最高性能が発揮できるものの、Bー17やBー29の作戦高度である、海抜1万メートル前後の高高度においては、エンジンに十分に『酸素』を供給できなくなり『息切れ』してしまい、十分な戦闘能力を発揮できず、しかもBー17の各銃座の機銃が、当然のごとく敵戦闘機を対象とした小口径のものであるのに対して、ドイツ軍戦闘機のほうは当然のごとく、Bー17等の敵重爆を対象とした大口径であるために、銃弾一個一個の重量が重く、有効射撃範囲がBー17よりも短いために、Bー17を銃撃しようと接近した場合、先に銃弾を浴びることになってしまうのです」




「──そこでルメイが考案したのが、『コンバットボックス』と呼ばれる、Bー17によるBー17だけのBー17のための、集団防衛(ディフェンス)フォーメーションでした」




「これは20機ほどのBー17を一集団として、互いに互いを守備し合うことで、完全に死角を無くすわけで、ドイツ軍戦闘機が特定のBー17に近づこうものなら、同じ集団のBー17から集中砲火を浴びることになり、しかも先程述べた射程距離の差異によって、戦闘機側の弾丸が届かぬうちに、蜂の巣にして撃墜してしまうという寸法なのです」




「つまり、敵国ドイツ本土の上空にあって、一定の空間をBー17のチームワークによって完全に支配しているので、敵の戦闘機がどんなに高速で起動力がBー17を上回っていようと、いったんBー17のテリトリー内に侵入するや、為す術も無くフルボッコにすることができたのでした」




「いやあ、さすがは『鬼畜』ルメイ氏、狙った標的エモノは必ず『虐殺』してしまう手腕には、もはや脱帽ですねえ」







「──それでは、この『鬼謀』とも言える天才的戦術を、海戦に当て嵌めてみたら、どうなるでしょうか?」







「軍艦の場合、大型戦略爆撃機に該当するのは、戦艦や空母であり、一方味方の爆撃機を守りながら敵の爆撃機を攻撃する戦闘機に該当するのは、さしずめ駆逐艦といったところでしょうか?」







「そうなのです、いかに高速性と格闘性とを誇る駆逐艦であろうとも、敵戦艦が多数示し合わせている相互防御領域に誘い込まれて、互いの艦砲の射程距離の性能差から、自分のほうの砲撃が届かない状況となっては、完全にお手上げでしょう。──まさしく、現在多数の戦艦の主砲相当の砲門に取り囲まれている、あなたのしもべであられる駆逐艦デストロイヤー・ガールの、キヨ嬢そのままにね」

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