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第266話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その54)

「そりゃあ当然ですよ、何せ教団にとって──すなわち、大陸中の聖レーン教の信徒の皆様にとって、最も大切なる教皇聖下が、この聖都におわすのですから、かくのごとき完璧なる防御システムを構築していても、別におかしくは無いでしょう?」


「確かに教団あんたらにとって教皇は大切だろうけど、たかが人一人のために、オーバー過ぎるんじゃないのか?」




「……実は数十年前に一度、この聖都全体を、物の見事に破壊し尽くされたことがございまして」




「ええっ、この大陸トップクラスのチートスキルの持ち主ばかりの、異能の聖職者たちのふきだまりであり、比喩ではなく文字通りに『難攻不落』の具現たる、聖都ユニセクスが⁉」


「はい、魔王以上とも言われる、希代の悪役令嬢の、ガチの襲撃に遭いまして」


「悪役令嬢って、何だそりゃ。何で『あちらの世界』で言うところの、『乙女ゲーム』の登場人物みたいなやつに、世界的異能の宗教団体が、本拠地である聖都を好き勝手されてしまうんだよ?」




「──悪役令嬢を舐めてはなりません! 彼女たちこそ、本物の悪魔なのです!」




 人の両肩を真正面から鷲掴みにして、これまでにない真剣な表情となってまくし立てる、司教殿。


 ……こいつ、悪役令嬢に、一体どんなトラウマを抱えているんだ?


「──おっといけない、話が完全に脇道に逸れてしまいましたね」


 こちらのいかにもうろんなものを見るような目つきにようやく気がついて、今更ながらなことを言い出す司教殿。


「いや、話どころか、現在の状況をわかっています? 軍艦擬人化少女たちがフルパワーで、ガチの乱戦状態になっているんですけど?」


 そうなのである。


 我々がこうして、いかにも外野的立場丸出しでのんきに会話を繰り広げている間にも、キヨと金剛たち戦艦娘との、激闘は続いていたのだ。




「──こ、この!」


「ちょこまかと、逃げ隠れしやがって!」


「卑怯だぞ、出て来い!」


「正々堂々、勝負しろ!」




 運河沿いに響き渡る、戦艦娘たちの怒号。


 その様はまさしく、もはや駆逐艦に対する優越感なぞ微塵も無く、むしろ焦りと憤りに満ちあふれたものであった。


 何と驚いたことに、ただでさえ基本性能に圧倒的な差が有り、文字通りに多勢に無勢の状態にあるキヨのほうが、現時点においてはむしろ優勢であったのだ。


 それと言うのも、聖都内を網の目のように張り巡らされている運河網を巧みに利用しての、『ゲリラ戦』に特化したことにより、身軽な駆逐艦としてのメリットが最大限に生かされて、『大艦巨砲』を旨とする戦艦娘たちを、巧みに翻弄し続けていたのだ。


 ……これは、イケるか?




「──おやおや、何を気を抜かれているのです? 私の話を聞いていなかったのですか?」




 まるでこちらの心を読んだようにして、すぐ間近で告げられる、男性の声。


「……司教?」


「ほら、ごらんなさい」


「あ、あれ?」


 その黒衣の聖職者の指し示すほうでは、戦艦娘のリーダー格のこんごう嬢が、仲間たちに向かって何やら指示を与えていた。


 それを受けて、一斉にキヨに対する囲みを解いて、金剛のところに集まってくる、自身の周囲に軍艦の艤装を展開している少女たち。


「何だ、もうあきらめたのか?」


「──いえ、彼女たちは、一気にケリをつけるつもりなんですよ」


「へ?」


 ケリをつけるだって?


 ……確かに戦艦の大口径主砲は、当たればダメージは大きいだろう。


 そう、あくまでも、「当たれば」、であるが。


 しかし、完全にゲリラ戦術に徹しているキヨのほうは、まともに被弾することなぞ無く、むしろ自分のほうの、小口径とはいえれっきとした主砲を、どんどんと戦艦娘に当てていき、かなりのダメージを積み重ねていたのだ。


 ──そのように、胸中であれこれ考えを巡らせていた僕を尻目に、今再び天空へと祈りを捧げるようにして、両腕を高く掲げ上げる金剛嬢。




「集合的無意識とアクセス! 大日本帝国海軍高速戦艦金剛の、主砲の形態情報のダウンロードを要請!」




 ………………………は?


 何を、


 彼女は一体、


 何を言っているんだ⁉


 何でさっきと同じ『呪文』を、再び唱えているんだ?


 すでに、金剛を始めとする戦艦娘たちは、皆自分の艤装を現出しているじゃないか?




「──って、うわあっ⁉」




 その時いきなり、周囲一帯を激しく揺るがす大振動に見舞われて、思わずその場にうずくまってしまう。


「な、何だ?」


 そして、再び顔を、上げてみれば──


「た、たいほう?」




 そう、キヨのいる運河を取り囲んでいる、堤防の石壁や建物の側面等の一部が、一斉に変化して、無数の巨大な砲門と化したのであった。




「こ、これって……」





「だから言ったでしょう? この聖都ユニセクス自体がすべて、軍艦擬人化少女でできているようなものだと。すなわち、常にアクティブ状態のショゴスで構成されているも同然なので、集合的無意識を介して任意の物質の形態情報さえダウンロードすれば、いかなる物体にでも変化メタモルフォーゼすることができるのですよ。──例えば、『あちらの世界』の大日本帝国海軍所属の、高名なる戦艦の主砲とかにもね」

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