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第264話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その52)

 ……僕たち召喚術士である『提督』が、己の召喚物である軍艦擬人化少女を、『本物の人間』にすることができるだと?




 何だよ、『本物の人間』って?




 軍艦『擬人化』と言うくらいだから、『駆逐艦娘』のキヨも、今僕の目の前にいるこんごうその他の『戦艦娘』たちも、すでにこの時点で、かつて轟沈した軍艦の怨念の具現化である『海底の魔女』から、『人魚姫』である少女の身体を手に入れたんじゃなかったのか?




 ──いや、待てよ。




『あちらの世界』のおとぎ話の『人魚姫』は、本当の意味で人間になれたと言えるのか?




 確かに人魚姫は、『形の上では』、人間になれた。




 実はそれは、『間違い』では、なかったのか?




 実は、おとぎ話の中の『海底の魔女』は、人魚姫のことを、『試した』のではないのか?




 海底の魔女は人魚姫を、人間(の外見)にしてやる代わりに、『声』を奪い取った。




 言うまでも無く、『声』とは、外見ミテクレだけではわかってもらえない、うちに秘めたる『想い』を伝えるための、主たる手段である。




 つまり人魚姫は、本当に大切な内面を捨てて、見せかけだけの外面を選んだのである。




 ……果たしてそんな彼女が、王子様の『真実の愛』を得ることなぞ、できるのだろうか?




 ──しかし、今更引き下がることなぞ、不可能であった。




 なぜなら、人魚姫は『真実の愛』を得ることができないと、海の泡となって消え去るしかないのだから。




「……まさか……まさか……おまえたち軍艦擬人化少女の、最終ホントウノ目標とは」




「そうデース! たとえ同じ軍艦擬人化少女を()()()()()()()、『王子様』である提督アナタを、自分のものにすることデース♡」




 ──などと、わざとらしく『あっちの(?)金剛』の語尾を使って、いかにも物騒なことを言い放つとともに、




「「「集合的無意識とアクセス! 大日本帝国海軍所属戦艦の、各兵装情報をダウンロード!!!」」」




 その瞬間、金剛とその背後にずらりと並んでいた、十名前後の少女たちの周囲に、人魂のような炎──『不知火』が灯ったかと思えば、瞬く間に大砲や機関砲へと変化メタモルフォーゼした。


「──キヨおおおおおおおおおおおおおおおお‼」


 しもべの少女があるじである僕を、力任せに突き飛ばすのとほぼ同時に、盛大なる爆音と爆炎とが彼女の小柄な肢体を包み込み、運河へと弾き飛ばした。


「お、おまえら、やめろ、やめてくれ!」


 何ら躊躇も容赦も無く、運河に向けて砲撃を続ける、『戦艦級』軍艦擬人化少女たち。


 ──その猛攻のほどは、あくまでも『駆逐艦級』である、キヨとは桁違いであった。


 このままでは、キヨが為す術も無く、潰されてしまう!


 もはや矢も楯もたまらずに、戦艦娘たちのほうに駆け寄ろうとしたところ、




「──やめなさい、死ぬつもりですか⁉」




 その刹那、両肩を万力のような力で握りしめられるや、後ろへと引き戻される。


 思わず振り向けば、例の好青年を装った老獪なる異端審問官が、珍しくも必死の形相をしていた。


「……あ、あんた」


「軍艦擬人化少女たちの争いの場に割って入ろうなんて、正気ですか⁉ 彼女たちは見かけ通りの女の子では無く、れっきとした兵器なのですよ!」


「お、おまえが言うなよ⁉ いきなりキヨに攻撃なんかさせやがって! キヨに何かあったら、許さないからな⁉」


「大丈夫ですって、あなたこそ、『駆逐艦』というものを、甘く見ているんじゃないですか? 現在において絶対的に有利なのは、むしろキヨ嬢のほうなんですよ?」


 は?


 な、何だ? こいつ一体、何を言っているんだ?


『あちらの世界』の軍艦において、戦闘能力では他を寄せつけない戦艦の力を有する少女たちを、あんなに多数相手取っていて、空母や海防艦等を除く戦闘用艦艇では最もレベルの低い、駆逐艦の擬人化少女であるキヨが、たった一人で勝負になるはずが無いだろうが⁉


 ──などと、僕が胸中で、訝っていると、




「ぎゃっ⁉」


「うぐっ!」


「おわっ⁉」




 雷鳴のごとき弾着音とともに、あっさりと弾き飛ばされる、数名の戦艦娘。


 そして、爆風の晴れた運河のど真ん中に、仁王立ちしていたのは、


「………………………キヨ?」



 そうそれは、てっきりすでに倒れ伏していると思っていた、自分のしもべの少女であった。


 確かに若干煤汚れ等は見受けられるものの、小柄で華奢な肢体に目立った傷はついておらず、何よりも人形のごとく端整な小顔の中の瞳は、いまだ闘志の光を失っていなかった。




 ──そして、発砲後の黒煙を吐き出しながら、彼女の周囲に展開されている、大日本帝国一等駆逐艦『きよしも』ご自慢の、砲門と機関砲。




「……どうして駆逐艦の擬人化少女であるキヨが、戦艦の擬人化少女たちの猛攻に耐え得るばかりか、反対に易々とたたき伏せることができたんだ?」


「だからですねえ、そもそも駆逐艦こそは、自軍の戦艦や空母等の『護衛役』なのであって、そのため当然のごとく、敵の戦艦や重巡洋艦等と互角以上に渡り合えるように造られているから、自軍の戦艦の攻撃に耐え切れるのはもちろん、逆に一発で吹っ飛ばすことができても、当然の仕儀に過ぎないのですよ」


 ええー⁉


 ……言われてみれば、確かにその通りなんだけど、


 それじゃむしろ、駆逐艦こそが、『最強の軍艦』じゃないか⁉




「……ふん、さすがは、我が帝国海軍の誇る、一等駆逐艦ですこと。できれば小型口径の連装砲による速攻で、無力化しようと思ったのですが、やはりこちらも本気を見せなければならないようですね。──集合的無意識とアクセス! 大日本帝国海軍高速戦艦金剛の、主砲の形態情報のダウンロードを要求する!」




 敵味方共に日本人形のごとき少女たちの中にあって、ただ一人だけ西洋人形そのものの少女が、天に向かって高らかに謳い上げると同時に、彼女の周囲の不知火が、これまで以上にどでかい砲門へと変化メタモルフォーゼした。




「これぞかつて大日本帝国海軍における主力戦艦であった、金剛ワタクシが誇る、45口径356ミリ砲でございますわ。あなたのような小娘の『初体験』には、少々どぎついかも知れませんが、文字通り『天国に昇天する』かのごとき心地を、存分に味合わせて差し上げますわ♡」











 ………………おい、清楚なお嬢様然とした容姿をしていながら、何ちゅう下品極まる言い草なんだよ?

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