第259話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その47)
「──実は我々軍艦擬人化少女とは、かのおとぎ話で高名なる、『人魚姫』そのものとも言えるのです」
「本来は心を持たない兵器に過ぎない、軍艦擬人化少女は、単なる『海の化生』として、魂を持たない人魚そのものであり」
「そんな人魚が、人間の『王子様』との間に、『真実の愛』を育みさえすれば、自分自身も人間になれるのと同様に、軍艦擬人化少女も、自分の『提督』との間に、『真実の愛』の具象化の一つとも言える、『ケッコン(ry』を行うことができれば、単なる心無き兵器では無く、『真のパートナー』となることができるのです」
「──そうなのです、人魚も軍艦擬人化少女も、『真実の愛』さえ手に入れることができれば、単なる化物や兵器では無く、一人の『人間の女性』として、『シアワセ』になることができるのです!」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「──あなたは、シアワセに、なりたいですか?」
「……それとも、それこそ『人魚姫』のおとぎ話そのままに、結局最後は王子様に裏切られて、『海の泡』と成り果てたいですか?」
「──私は、嫌です!」
「そんなの、真っ平ごめんです!」
「もう、昏い海の底で、魂の無い化物に過ぎない人魚として──」
「かつて轟沈した軍艦の化身である、『海底の魔女』として」
「──自分の運命を呪い、敵を恨み、一緒に朽ち果てた乗組員たちのことを、悔やみ続けるのは!」
「だから、こうして軍艦擬人化少女になれた今でも、少しも安心できないのです」
「いくら外見は少女の姿をしていようが、その本質は心無き兵器に過ぎないのです」
「その本性は沈没船の化身である、『海底の魔女』でしかないのです」
「──だから、『真実の愛』が欲しい」
「──人魚姫にとっての王子様である、『提督』を、自分だけのものにしたい」
「──もしもすでに王子様が、他の人魚姫と『真実の愛』を育んでいたとしても、けしてあきらめるものか」
「──無理やり奪い取ってでも、自分の王子様にしてみせる!」
「──たとえ自分以外の軍艦擬人化少女を、この手で殺してでも!」
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「……はあ? 軍艦擬人化少女が、人魚姫だって?」
なぜだかいきなり独演会を始めて、妙ちきりんなことを語り出した、自称大日本帝国海軍所属の高速戦艦、『金剛』の擬人化少女に、完全にドン引きしながらも、その時僕こと、この魔導大陸きっての召喚術士兼錬金術師であるアミール=アルハルは、思わずそうつぶやいてしまった。
……いや、『おとぎ話』って、確かにあんたが元いた日本では、人魚は架空の存在だろうが、この剣と魔法のファンタジーワールドには、普通に人魚は存在しているし、そもそも魔法同等の超科学で『建造された』、あんたら軍艦擬人化少女においても、『人魚型』なのは、いわゆる『潜水艦娘』限定じゃ無かったのかよ?
そのように胸中でツッコミながら、斜め下方へと視線を向けると、ここ世界宗教聖レーン転生教団の聖都ユニセクスの象徴たる、教皇庁『スノウホワイト』を取り巻く運河においても、多数の生粋の(つまりは、人工の軍艦擬人化少女なんかでは無い、天然物の)人魚たちが、笑顔で水遊びに戯れていた。
うん、相手が日本人とかだったらともかく、僕らのような彼女たちにとっては『異世界人』に当たる人間に、『人魚姫』なんかを例えに挙げられても、それ程珍しくも無い『動物の話題』も同然になってしまうから、あまり意味は無いんじゃないのかな?
……とは言え、彼女たちの気持ちも、わからないでもなかった。
何せほんのこの前、キヨの秘められた『苦悩』と『悔恨』と『悲願』とを、知ったばかりなのだから。
実は彼女たち軍艦擬人化少女は、轟沈した軍艦の化身である、怪物そのものの『海底の魔女』こそが本性なのであって、本来なら昏い海の底で永遠に、『憎しみ』と『恨み』という負の感情のみに、苛まれ続けなければならないのだ。
それが軍艦擬人化少女として『再生』されて、しかも『提督』としての資質を持つ者と主従契約さえ結べば、人間同様の『正の感情』を得ることができると言うのであれば、誰もが必死で提督を求めることになるであろう。
──まさしく、僕と契約を結ぶことによって、ほとんど『普通の女の子』同然となり始めている、キヨのように。
だからこそ、聞き捨てならなかったのだ。
自分こそが『海底の魔女』では無く、『人魚姫』になるために、キヨを排除してでも、僕を自分のものにしてみせると宣言した、彼女の言葉が。
「……おい、金剛とやら、さっきから好き勝手なことばかり抜かしているけど、いい加減僕の質問に答えてくれないか? 何で日本の超技術で創り出されたおまえら軍艦擬人化少女が、この剣と魔法のファンタジーワールドにいるかをな」
そんな僕の至極もっともな問いかけに対して、そのキヨ同様に日本の軍艦の化身でありながら、金髪碧眼のいかにも西洋人形を彷彿とさせる美少女は、むしろ心底あきれ果てた顔をしながら言い放った。
「それを私にお聞きになるのですの? あなたご自身こそが、誰よりもようくご存じのはずなのに」
──ッ、まさか、それって⁉
「そうです、私こと金剛を始めとして、ここにおります『戦艦娘』たちは、そちらの清霜さん同様に、正式に『召喚術』を使って、この世界に招かれたのです」




