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第256話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その44)

「……人魚が不老不死で、しかも変身能力なんてものを持っているのは、すべての生物の祖である『ショゴス』そのものであるからで、ある意味『別の進化を果たした人類』のようなものだって?」




 おいおいおい、このポッと出の新人キャラってば、本気でこの作品を、『エヴ○』にするつもりじゃないだろうな⁉


 どうやら最終作のほうは正式に公開延期になったようだから、今更推しても無駄だぞ?


 そのように、内心にてツッコミまくっている僕こと、大陸きっての召喚術士兼錬金術師のお尋ね者である、アミール=アルハルに対して、当の発言者である『アグネス』と名乗った、全身真っ白の謎めく十歳ほどの幼女は、落ち着き払った表情のままで、話を続けていく。




「そもそも『人魚の肉』が、『不老不死』の効能を有しているのは、なぜだと思われますか?」




「へ?」


 無邪気極まる笑顔で、なんかすげえこと聞いてきたぞ、この子?


 何で、よりによって、()()()()()聞いてくるわけ?


 ……できるなら、答えたくないんだけどなあ。


 いや、普通だったら、人魚のことなんか聞かれても、「そんなこと知るか!」とか、「それが人魚特有の習性じゃないの?」とかって、答えておけばいいんだけど、自他共に認める凄腕召喚術士兼錬金術師としては、何よりも『論理』に基づいた意見を求められたものと解釈すべきであろう。


 本当は、この文字通りに『敵の本拠地』である、聖レーン転生教団の聖都ユニセクスにおいて、お尋ね者である僕が自分の素性を明かすような真似をするのは、厳に慎むべきなのだが、どうやらこの子ってなぜだか知らないけど、僕やキヨの正体に、何となく気づいているようだしな。


「ショゴスとほぼ同じ生命体と言うことは、あれだろ? 無自覚に集合的意識とアクセスできて、自分の肉体の形態情報を、いかようにも書き換えることができるようになっているから、まさしく無自覚に自分の肉体を構成する全細胞を、常に若返らせている──ってところじゃないのか?」


「ほう、常にすべての体細胞の情報を書き換えているわけですか? だったらいっそのこと、すべての細胞の情報を『固定』して、経年劣化を起こさないようにしたらいかがですの?」




「……ああ、『あちらの世界』の三流SF小説とかで、よくあるそうだな? 『不老不死なのは、自分の肉体の時間を止めているから』とか、『だからこそ、どんな攻撃を受けても、傷つくことは無い』とかってやつ。ほんと、アホくさw。生物というのは、細胞が成長や劣化をすることにより、変化していけるのであり、そして何よりも、日常的な行動ができるのであって、そもそも脳細胞が『固定』化されてしまったら、思考することだってできないじゃん? おっと、『脳みそだけ別扱い』は無しにしようぜ? 何せ全身を駆け巡る血液が無いと、脳は正常に働かないんだからな。──つまり、人間でも人魚でも生物である限り、全身の体細胞が『固定』化されたりしたら、それはもう『生物』では無く、石ころとかの鉱物等の『無機物』でしかあり得ないってことなんだよ」




「──おお、さすがですねえ、おっしゃる通りでございます!」


 満面の笑みをたたえながら、手放しの賞賛を送ってくる、目の前の幼女。


 ……何が、『さすが』なのやら。


 こいつって、どこまで、こっちの素性を、把握しているんだ?




「実は変身能力のほうも、これと同じ理屈でして、集合的無意識とアクセスすることで、人間の脚の形態情報をダウンロードして、己の下半身の形態情報を書き換えることによって行われております。かの有名な『人魚姫』のおとぎ話においては、『海底の魔女』による魔術や薬効のお陰だということになっておりますが、元々己の肉体に関する範囲においては、集合的無意識とのアクセスが許されていながらも、そのことに無自覚な人魚に代わって、より上位のアクセス権を有する魔女が、代行して差し上げたといったところでしょう」




 ……ああ、あの有名な『人魚姫』の話って、そういった理論背景があったわけか。


 つまり、海底の魔女のほうは、自分自身だけでは無く、他人の肉体に関する情報についても、集合的無意識とのアクセス権が認められているんだ。


 それだと確かに、人魚姫の声帯情報を操作して、彼女の『声』を奪うことも、朝飯前だよな。


「うん、確かに、集合的無意識とのアクセスが、己の肉体に関することに限定されていて、しかもそんな超チート能力に無自覚なところなんて、まさしくショゴスそのものだな」


「そうでしょう? なので『人魚姫』の寓話の顛末のように、せっかくのチートスキルを活かせずに、不幸になったり、『』の伝承のように、あっさりと自分より下等な人間に狩られて、肉を食べられたりしたわけなんですよ」


 ほう、そりゃあ、災難だな。


 その伝承が事実だとすると、人魚の肉を食べると、『自分の肉体に関してのみ、自動的に集合的無意識とアクセスできて、不老不死になれる』チートスキルが、ただの人間にも適用されて、800年も年老いること無く生き続けることになるから、殊更欲深いやつらからは、乱獲されることになるだろうて。


 ……まあ、逆に言えば、もしも自覚的にチートスキルを使える人魚なんかが存在していたら、むしろ人間のほうがあっさりと滅ぼされてしまったりしてな。


 ──うん? ()()()()()()()()()()()使()()()()()、だって?


 おいおいおい、ちょっと待てよ⁉




「まさか、この剣と魔法のファンタジー世界か、それとも、どこか別の世界に、『不老不死であることに自覚的で、チート変身能力を使いこなせる人魚』なんてのが、存在しているんじゃないだろうな⁉」




 ──ていうか、現代日本にいるという、『潜水艦型』軍艦擬人化少女が、まさにそれじゃないか⁉


「そりゃあ、世界と言うものは、無限に存在している可能性がありますので、どこかの世界には、そういった人魚もおられるかも知れませんねえ」


「……だったら、その世界は、人魚たちに支配されてしまうわけか?」


「うふふふふ、さあて、どうでしょう? ──そちらのお連れさんは、どう思われますか?」


 ここに来て、いかにもごく自然な風を装って、『あちらの世界』において、『自覚的に集合的無意識とアクセスできる人魚』の仲間がいたキヨへと話題を振る、純白の美幼女。


 ……ほんとこの子って、見かけは清純そのものなのに、とんでもない『曲者』だよな。


 ──しかし、『曲者』と言うなら、うちのしもべも負けてはいなかった。


「……それは絶対に、不可能でしょうね」


「ほう、なぜそのように、断言なされるのです?」




「──では、こちらから伺いますが、あなたは現在無意識に活動している、体内の内蔵の操作を、自覚的にできるようになったとしたら、ちゃんとこれまで通り、呼吸をしたり、血液を循環させたり、食物を消化させたり、できるとおっしゃるのですか?」




 ……ああ、そういうことか、なるほどなあ。


「まさかそんな、神や人魚や魔女ならぬ私ごときでは、自分の体内の臓器を意識的に司ることなぞ、とても不可能でございます。──ふふっ、本当にそのお歳で、大したものですね。そうなのです、人魚はショゴス同様に、『無自覚』だからこそ、真に不老不死でいられるのです。全身の細胞の一つ一つを常に把握していて、老化したり損傷すると同時に、いちいち個々に修復することなんて、自覚的にできるわけは無いですからね。たとえショゴスそのもののチート能力を有する人魚であろうとも、自覚的に実行可能なのはせいぜい、自己変身能力と、簡単な自己修復能力くらいなものでしょう」


 そりゃ、そうだよな。


 呼吸や血液の循環や消化活動なんて、不随意に行われているから成り立っているのであって、人が自覚的に操作しようとしたところで、脳みそがいくつあっても足りないし、その他の日常的活動がまったく行えなくなるだろうよ。


 ……考えてみれば、『不老不死』なんていう、究極の体内操作を、意識的にできっこないのは、至極当然の話だよな。


 全身に無数に存在している体細胞が、どこかで老化したり損傷したりするたびに、もれなく対処することなんて、どんなに超人的な即応性と反射神経を備えていようとも、絶対に不可能だろうね。




 ──いや、ちょっと待てよ。




 さっき、この子って、何て言ったっけ?




「神や人魚や()()ならぬ私ごとき」、だと?




 神と人魚はわかるけど、『魔女』って、何だ?




 ひょっとして、『人魚姫』のおとぎ話の中に出てくる、『海底の魔女』のことか?




 ……そういえば、この地を治める──否、この世界の人々の信仰を一手に引き受けている、聖レーン転生教団の『御本尊』って、一体何だったっけ?








 まさか、この子って、もしかして……。

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