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第250話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その38)

「──というわけで、無事に『サンプル』たちは試練を克服して、ついに『実験』は『最終フェーズ』へと、移行する運びとなったのでございます!」




「……………」


「……………」


「……………」


「……………」


「……………」


「……………」


「……………」


「……………」


「……………」




「──あ、あれ、枢機卿の皆様、いかがなされたのでしょうか?」




 ここは、世界宗教聖レーン転生教団、聖都ユニセクスに所在する、教皇庁の最高幹部会議室。


 今回の『実験』について全責任を任されている、私こと異端審問第二部の特務司教である、ルイス=ラトウィッジが、ついに軍艦擬人化少女であるほうの『サンプル』の、異形の化け物のごとき正体を白日の下にさらけ出すといった、まさに物語的には『クライマックス』そのもののフェーズを実行して、その結果『期待以上の成果』を達成したことについて、名実共に教団における最高首脳陣である、枢機卿のお歴々に報告申し上げたところであった。


 ……まあ、そのためのダシに使った、『さまよえるオランダ人』氏にはお気の毒でしたが、お陰で軍艦擬人化少女と、そのあるじである召喚術士兼錬金術師との絆も、十分に深まったことですし、こちらとしては上々の幕切れと申せましょう。


 このように、今回の『実験』に対する評価は、文字通りに『思惑通り』以外の何物でも無かった。


 それなのに、我が教団の枢機卿たちときたら、見るからにしかめっ面で黙り込んでいるのは、なぜなのだろうか?


 あまりにも重苦しい雰囲気に、私がそれ以上言葉を発することなく黙していると、枢機卿の一人が、『サンプル』たちの動画映像を映し出していた、ホログラムモニターの電源をリモコンで切るや、他の首脳陣たちとともにまったく同じタイミングで、すでに冷え切っている紅茶を一気にあおり、ここで初めて口を開いた。




「「「──チッ!!!」」」




 広大な会議室に響き渡る、いかにも憎々しげな舌打ちの音。


 …………………………は?


 え? え? 何今の?




「……まったく、何で我々が延々と、こんな()()()()映像を見せられなければならないんだ⁉」


「あの召喚術士兼錬金術師めが、結局今回も、ヤスい口説き文句で、まんまとたらし込みおって!」


「おまえは、ジゴロかホストかってんだ!」


「何かと言えば、しもべの軍艦擬人化美少女と、イチャイチャしおって!」」


「ショゴスの身体に旧日本軍艦の魂を転生させた、『人ならざるモノ』とはいえ、外見上はあんな幼い女の子を相手に、完全に犯罪ではないか⁉」


「何と、うらやましい!…………じゃなかった、けしからん!」


「──おまわりさん、あいつです!」


「このような慮外者を放っておいて、異端審問部は、一体何をしておるのだ⁉」




 ……いや、審問部ウチは別に、ロリコン犯罪は管轄していませんので。


 突如いい歳したおっさんたちが、初々しい若者カップルに対する嫉妬心丸出しで、アホなことを言い出したので、心底あきれ返ってしまったものの、彼らのボルテージは、ますますヒートアップするばかりであった。




「……そもそも、『サンプル』の軍艦擬人化少女のほうから、おかしいだろう?」


「あっ、それは私も、思っていた!」


「あれのどこが、『きよしも()()()だと言うのだ⁉」


「全然期待していたのとは、違うではないか!」


「清霜ちゃんはもっと明るく素直で、何よりも元気な頑張り屋のはずだぞ!」


「そもそも一人称が、『私』なのがおかしい」


「そうだよな、清霜ちゃんだったら、やっぱり『ボク』だよな!」


「「「──それだあああ!!!」」」


「なのに、何なんだ、あの『キヨ』とか言う娘は?」


「十歳くらいの年齢で、クーデレかツンデレって、そんな『艦む○』って、いたか?」


なんか、今回のフェーズになった途端、いきなり提督にデレて、どちらかと言うと、『あさしお』ちゃんみたいになっていたよな?」


「うむ、あの『忠犬』ぶりは、むしろそっち系だろう」


「そもそもが、せっかく軍艦擬人化少女をヒロインにするのというのに、『清霜』はないだろう?」


「あれだけ個性的な美少女揃いなんだから、よりどりみどりですよね?」


「御本家のアニメ版における、一期の『吹雪ふぶき』や、二期の『時雨しぐれ』なんて、誰もが納得の人選だしな」


「それ以外にも、これぞ『艦む○』って娘が、ごまんといるではないか?」


「本作の作者が別の作品でメインで登場させている、『大和やまと』とか『鹿しま』とか『あかつき四姉妹』とかな」


「その他にも、『公式がゲーム展開初期に「作品の顔」にしていたことで有名な、エセ英語がお得意の、紅茶大好きこんごうさん』とか、『なぜか二次創作においてロリコンの代名詞にされている、言われなき風評被害者の、長門ながとさん』とか、『姉共々不幸自慢の、やましろさん』とか、『戦艦』を擬人化したヒロイン勢だけでも、錚々たる顔ぶれではないか?」


「どうせ『最強の存在』を召喚するのなら、こういった人気実力共に抜群の、戦艦タイプの軍艦擬人化少女にすべきだろうが⁉」


「それをあえて、それほど人気があるわけでも無い、駆逐艦のゆうぐも型の末っ子である清霜にするとは、何を考えておるのだ⁉」


「──ルイス司教、そこのところは、一体どうなっているのかね⁉」




 ボルテージが最高潮に達するのとほぼ同時に、私のほうへ指さしながら怒鳴りつけてくる、筆頭格の枢機卿猊下。


 いや、そんなこと、私に言われても、困るんですけど?


「……皆々様方、いい加減にしてください、これはアグネス教皇聖下勅命の『実験』の、進捗状況を検討していただくための、公式の会合の場なのですよ? まさか聖下のご威光を、ないがしろにするおつもりではないでしょうね?」


「「「──うっ⁉」」」


「しかも、今し方ご覧に入れましたように、『実験』の進捗は順調そのものですし、すべては我々のシナリオ通りに推移しておるというのに、一体何がご不満なのですか?」


「ううっ⁉ ──だ、だがしかし、もう少し我々に対しても、『サービス』があってもいいではないか?」


「……へ? 何ですその、サービスって?」




「この『実験』が始まって以来、『サンプル』の二人が、どんどんと距離を縮めて親密な間柄になる様子を、細大漏らさずに見せつけられる、我々の身にもなってくれたまえ!」


「せめてもの『目の保養』として、軍艦擬人化美少女を一人に絞らず、もっと大勢登場させてもいいではないか⁉」


「何せ、『原典』からして、並み居る美少女たちを、艦隊を組織するといった名目で、『コレクション』できるところこそが、ウリなのだからな!」


「わしは、『ルー語』が可愛い、金剛ちゃんなんかが、好みじゃな♡」


「はあ⁉ 金剛姉妹なら、文字通り艦隊の頭脳である、きりしま様一択だろうが!」


「私は、何だか『ヤンデレ』ぽい、はるたんがイチオシじゃのう」


「……いっそのこと、えいカレーで、イチコロにされたい」




「──あら、おじ様方、お呼びになりました?」




 突然、馬鹿なオヤジどもの戯れ言をぶった切るように鳴り響く、涼やかな声。


 気がつけば、会議室の入り口付近には、金髪碧眼の十七、八歳くらいの娘を筆頭に、十名ほどの少女たちがたたずんでいた。


「……一体、いつの間に?」


「貴様ら、何者だ!」


「ここは我が教団の、最高幹部専用の会議室だぞ⁉」


「どこから、入ってきた!」


 さすがに先程までのふざけきった態度を拭い去り、威圧感たっぷりに怒鳴りつける、お偉方。


 しかし、ほとんどが十代半ば程度の幼い女の子たちのほうは、微塵も動ずることなく、謎めく言葉を操った。


「あら、私たちは招かれたので、参上したまでですけど?」


「……招かれた、だと?」


「一体どこのどいつが、我々に許可も取らずに、そんな勝手なことを⁉」


「もちろん、そちらの司教様ですわ」


「「「なっ⁉」」」


 一斉に枢機卿たちの視線が、こちらへと集中するものの、私のほうはあえて言葉を発すること無く、すべてを『彼女たち』に委ねた。


「……ぬう、とにかく貴様らは、一体何者なのだ⁉」




「──私たちが、何者かですって?」


「うふふ、これはまた、哲学的なご質問ですね?」


「果たして、私たちは」


「女の子なのでしょうか?」




「「「──それとも、『軍艦』なのでしょうか?」」」




「「「なっ⁉」」」




「名乗りが遅れまして、大変申し訳ございません。わたくし大日本帝国海軍高速戦艦、金剛型一番艦の、『金剛』と申します。──生憎と、『ルー語』などと呼ばれている、インチキな英語なぞはしゃべれませんが、何とぞよろしくお願いいたしますわ♡」

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