表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
243/352

第243話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その31)

「……僕が、今は亡き、神聖帝国『旭光ヒノモト』の、第二(おう)だっただと?」




 突然、自分のしもべである軍艦擬人化少女のキヨの故郷でもある、『あちらの世界』からやって来た、『さまよえるオランダ人』を名乗る何とも胡散臭い人物が明かした、己自身の過去の驚くべき事実に、当然のことながら疑問を呈さずにはおれなかった。




 いや、疑問も何も、当の本人である僕自身、そのような『突然連載の途中に回想パートを挟み込む必要が生じかねない超重要案件』の記憶なんて、まったく無いんですけど?


 そもそもあれって【エイプリールフール企画】だったんだし、別に明確な根拠があるエピソードでも無かったのでは?


 ──そのように首を傾げるばかりの他称『皇子様』に対して、苦笑まじりに説明を始める、自称『別の世界からやって来たオランダ人』。


「……まあ確かに、貴殿自身に記憶が無いのは不可解だが、何分幼い時分での衝撃的な出来事なので、記憶に混乱が生じたとか、あるいは、超常の力を持つ術者によって、故意に記憶を奪われたなどが、考えられるんじゃないのか?」


「超常の力を持った、術者だと?」




「貴殿を引き取った、第二皇妃の師匠筋に当たる召喚術士か、──はたまた、第二皇子のお世話係だったという、『フジ』と名乗っていた少女あたりが、有力候補だろうな」




 ──‼


「第二皇子──つまりは、僕の側付きだった侍女が、己のあるじから、記憶を奪ったって? そんな馬鹿な⁉」


「そうは言うが、実際に貴殿は、自分の侍女が『軍艦擬人化少女』であることを、すっかり忘れていたではないか?」


「──うっ」


「と言うか、今まで自分が旭光ヒノモトの皇子であることすら忘れていたのだから、その侍女である彼女の存在自体を、覚えていなかったんだろうが?」


 そ、そういえば、まったく、その通りじゃん⁉


 もしキヨを召喚する前に、軍艦擬人化少女の存在を知っていたとしたら、彼女の常識外れのチート能力にも、それほど驚いたりはしないよな。


 それに、自分自身や他人の『集合的無意識とのアクセス権』を左右する力を有する、召喚術士や軍艦擬人化少女であれば、『別の可能性の世界の、「旭光ヒノモトの皇子では無い僕」の記憶』を、僕の脳みそに『上書きする』ことによって、僕から一定の記憶を奪い取ることも十分可能だしね。


「……しかし、なぜそのフジという娘は、主人である皇子の記憶を消したりしたんだろう?」




「そりゃあもちろん、最愛の御主人様──すなわち、己の『提督アドミラル』を守るためだよ」




 は?


「な、何だよ? 何で記憶を奪うことが、僕を守ることになるんだよ?」


 ──いや、ちょっと待てよ。


「守ると言えば、その当のフジとか言う侍女はどうしたんだ? この剣と魔法のファンタジーワールドにおいても、最強クラスのチートスキルを誇る、軍艦擬人化少女である彼女なら、自分自身の力のみで、僕を守ることができたはずだろうが?」




「通常ならね。──しかし、貴殿もご存じのようにアメリゴ合衆国は、召喚術を『あちらの世界のアメリカ合衆国』の、最新の兵器等を始めとする工業製品の情報収集に特化することによって、このファンタジー異世界にアメリカ軍相当の最先端の軍事力を実現することを成し遂げているのだ。さすがの軍人擬人化少女とは言え、()()()()()()()()()()()()()、貴殿を逃すのが精一杯だったのだよ」




 ──なっ⁉


「軍艦擬人化少女が自分の命と引き換えに、僕を助けたっだと? なぜだ、なぜ軍艦擬人化少女は、それほどまでに僕に尽くしてくれるんだ⁉」




「それは、貴殿のような旭光ヒノモトの帝族の血を引く者は、彼女たちの真のあるじである、『あちらの世界の日本人』同様に、その身の内に『神の眷属』の証しである、『日本株のBCG抗体』を有しているからだよ」




 ──っ。


「……さっきの昔話の中でも出て来たけど、何だよ一体、『BCG』とか『日本株』とかって言うのは?」


「結核菌に対する抗体ワクチン…………と言えば、おわかりかな?」


「ええと、さっきの話の中では、『大陸風タイリク・フーウィルス』とやらに対して、免疫があるとか無いとか言うやつだっけ?」




「左様、実は『あちらの世界』においても、大陸風タイリク・フーウィルスが猛威をふるった時期があって、あわや人類滅亡かと思われた時、ある一部の国や地域のみにおいては、ほとんど被害が及ばなかったことが判明して、実はそれらに共通していたのが、すべての人民に対して強制的に、結核菌に対するBCGワクチンのうち、特に効果が強烈な『日本株』タイプを施していたことが判明したのだ」




「え? 何で結核『菌』に対するワクチンが、大陸風タイリク・フー『ウィルス』に、効果があるんだよ?」


 これって、医学や科学が随分と進歩している『あちらの世界』でも、混同している人が多いそうだけど、『細菌』と『ウィルス』とは、まったく別物だからな。




「結核とは主に()()()()()()()重篤な感染症である故に、それに対するワクチンを幼少の頃から施されている日本人は、肺炎を始めとする肺の疾患にかなりの耐性を得ることになったのだ。主目的の結核に対しては20年ほどで効果が薄れるのに対して、肺炎への耐性のほうは50年前後も持続していて、場合によって一生効果があり続けることも珍しくは無いそうだ。──というのも、結核菌自体に対する効果を失った後も、肺自体が丈夫であれば、結核菌やその他の肺炎を起こすウィルス等に感染しても、一応肺炎にはなるものの、軽症で済み、事無きを得ることができるわけで、ぶっちゃけて言えば、ワクチンを打ったその瞬間に、結核菌に対する抗体だけでは無く、肺そのものを強化してしまったようなもので、抗体としての効果が尽きた後でも、病気が重篤化することが無くなるといった次第なのだよ」




 ──あ、そうか。


 なんかワクチンとか言うと、病原菌やウィルス自体を完全にブロックするみたいに思われがちだけど、要は、たとえ感染しても、病状を重くせずに抑えることができれば、それで十分なんだ。


「それもこれも、そもそも日本人は結核にかかりやすかったから、他のどの国よりも、効き目の強いタイプのBCGワクチンを、原則的に強制的に全国民に施していたお陰で、結果的に肺炎予防に絶大なる効果が生じて、世界中を阿鼻叫喚の地獄絵図にたたき落とした、『死に至る肺炎をもたらす大陸風タイリク・フーウィルス』の脅威を、国内においてかなりの程度軽減化することに成功したわけなのさ」


「と言うことは、当然その『BCGワクチン』とやらは、人の手によって創り出されたものなんだろ? それが何で僕に──あんたの話では、今は亡き神聖帝国旭光(ヒノモト)の帝族に限って、生まれつき身の内に保有しているわけなんだ?」


「それについては、あくまでも私の想像でしかないけれど、嘘か本当かは知らないが、旭光ヒノモトの帝族が『神の子孫』だからという説や、元々帝族は極東屈指の強大なる術者だったので、己の体内に魔術的にワクチンを生成したという説等が、考えられるのだが、私としては、『旭光ヒノモトの帝族は、日本人の多世界同位体』説こそが、最も有力と思っているのだ」


「多世界、同位体、って……」




「『あちらの世界』における量子論に則れば、あくまでも()()()()()では、世界と言うものは無限に存在し得て、それを『多世界』と呼称しているのだが、Web小説やSF小説的にわかりやすく言えば、現実の世界に対する(無数の)パラレルワールドみたいなもので、当然それぞれの世界には『別の可能性の自分』が存在することになり、それを本人にとっての『多世界同位体』と言う──などと、本作の作者が勝手に設定したのだよ。まあ、『あちらの世界』のラノベにおいて、『長○』とか言う、『おまえ「なが」(戦艦ゴリラ)と言うよりも、「あやなみ」(駆逐艦ロリ)だろうが?』とでも言いたくなるようなキャラが、盛んに言っていた『別の時空体の私』を、親切おおきなおせわにも量子論に則って理論付けてやったようなものなのさ」




「ええっ、つまり僕って、日本人の生まれ変わり──言うなれば、『異世界転生者』ってわけなの⁉」


 と言うことは、もしかして僕にも、キヨのような強大なる『チートスキル』が、隠されているんじゃないのか?




「あはは、多世界解釈に則れば、世界と世界との間には、時間的前後関係なぞ存在していないから、厳密には違うが、大体そのようなものと思ってくれて構わないよ。──なぜなら、この世界において同じく『現代日本からの転生者』である軍艦擬人化少女が、旭光ヒノモトの帝族にのみ忠誠を誓うのは、君たちが現代日本人の転生体のようなものであるからなんだしね」




 ……何……だっ……てえ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ