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第226話、デストロイヤー転生、これぞ駆逐艦『娘』、最強伝説だ⁉(その19)

「……何だよその、たとえ『おまえを全次元において消し去ってやる!』攻撃が、論理的に矛盾せずに有効であったとしても、その対象がおまえのような『軍艦擬人化少女』だったら、まったく効果を及ぼすことができないってのは?」




 そのように、


 僕はあくまでも、至極当然の質問をしたつもりであった。




 ──しかしそれは、絶対口にしてはならない、『禁忌の言葉』であったのだ。




「だって、まさに現在この時、この作品をご覧になられている、『現代日本の読者の皆様』におかれましては、このような単なる創作物フィクションに過ぎない世界の中で、凡百の異能バトル系Web小説にありがちな、『おまえを全次元において消し去ってやる!』スキルwなんぞを使ったところで、その御記憶から()()()()()()()()()()()()()()()()、私こと『大日本帝国海軍一等駆逐艦、ゆうぐも型19番艦(きよ)しも』の存在が消え去ることなんて、絶対にあり得ないではありませんか?」




 ──いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!


 それ絶対、言っては駄目なやつ!


「おいっ、おまえ何をいきなり、完全にメタそのものなことを言い出しているんだよ⁉ 『現在この世界を作品として読んでいる読者の皆様』なんて言い始めたら、すべてはその瞬間でおしまいだろうが?」


「は? これは別に、メタなんかではでありませんよ?」


「これがメタでは無かったら、もうこの世界にメタなんか、何一つ無くなるよ⁉」


「私はただ単に、そちらの魔王様のご主張に、合わせただけですが?」


「……魔王の、主張だと?」




「『全次元』とは、ありとあらゆる世界が含まれるわけですから、『この世界を小説として読んでいる世界』だって、存在していても構わないではありませんか?」




 ──‼


「……そ、それって、まさか」


「ええ、もはやお馴染みの、量子論における多世界解釈ですよ。──すなわち、私の主張は、物理学の中核をなす量子論に裏付けされた、至極真っ当な理論であるわけなのです」


「こ、こんなあからさまなメタっぽいことが、物理的理論に則っているだと?」




「だから、メタではありませんてば。別にこれは『現代日本』に特定した話では無くて、『全次元=あらゆる世界』ということは、この世界を小説として読んでいる世界が存在する()()()()()()し、しかもその世界の歴史上において、『清霜』という名の軍艦が存在していた()()()()()()し、更にはその世界には『軍艦を少女として擬人化する』という、何らかの『概念コンテンツ』が存在していて、実は提督アドミラルがこの世界に転生させたのは、その『概念』そのものであったという、()()()()()()わけなのですよ。つまりあくまでもすべては『可能性の話』であり、本当に『現代日本』なる世界が存在していて、そこで『第二次世界大戦』が行われて、『清霜』という駆逐艦が確かに存在したなどと、断定しているわけではなく、あくまでもそのような『可能性』があるだけで良く、その『可能性』を否定できない限りは、『現代日本』の視点からすればあくまでも単なるWeb小説でしかないこの世界の中で、『貴様を全次元において消し去ってやる!』などと、中二病そのままなことをわめき続けたところで、『現実世界』はびくともせず、何の効果も及ぼすことはできないという次第なのですよ」




 ──っ。


 つまりすべては、量子論お得意の、『可能性としてはけして否定できない』路線か!


 ……ぐっ、確かに、どのような世界であろうと、あくまでも『可能性』の上の話と言われたら、その存在()()()を受け容れざるを得ないけど、それって少々ずるいんじゃないのか?


「おや、提督アドミラルったら、いまいち納得がいかれていないご様子ですが、勘違いなさらないでくださいね? 先ほども申しましたが、これって別に、『現代日本』に限った話では無いのですよ?」


「へ?」




「要はですね、この世界を小説として読んでいる世界に、歴史上『駆逐艦の清霜』が存在していればよく、それは別に『現代日本』で無くてもいいのです。何せそのような『設定』のもとでは、『清霜』なる軍艦は当然のごとく、『この世界をWeb小説として生み出した現実世界』における、れっきとした『現実の存在』ということになりますので、私同様に単なる創作物に過ぎない魔王さんが、いくら『全次元消去オールキャンセル』などというチートスキルを持っていようと、現実世界の実在の駆逐艦『清霜』に影響を及ぼしたりできるはずがなく、その結果駆逐艦『清霜』の概念によって生み出された私自身も、その存在を抹消されることなんて、絶対にあり得ないというわけなのですよ」




「……まあ、そりゃそうだろうな。この世界を小説として生み出した世界から転生してきた軍艦擬人化少女なんて、当然元の世界においては実際に存在していた軍艦をモチーフに作成されたに決まっているし、そこに存在している『読者』からしてみたら、あくまでも創作物に過ぎないこの世界の中で、いくら『全次元において消し去ってやる!』とイキったところで、『……おいおい、何言っているの、この魔王キャラさん? おまえが何をほざこうが、俺たち現実の人間の脳みそから、「清霜」の記憶が消えてしまうわけがないだろうが? ギャハハハハwww』って、あざ笑われるだけだろうよ




「とはいえ、別の世界の史実上の存在が転生してくることなんて、基本的に『何でもアリ』の創作物であるWeb小説でさえも、例外中の例外に過ぎないんですけどね。ほとんどの場合においては、あくまでも同じ世界の歴史上における、『古代の魔王が現代の平凡な少年に生まれ変わって、子孫たちの通う魔王学園に入学して無双する』といったパターンばかりで、別の世界の歴史上の存在の転生なんて、それこそなぜか『現代日本』の歴史上の人物や兵器等の人工物の擬人化ばかりであり、そういう意味からもありとあらゆる異世界にとって、その世界を小説として読んでいる世界が存在しているとしたら、ほぼ間違いなく『現代日本』ということになるので、私が冒頭に申した台詞は、別に『メタ』というわけでは無かったのです」




 ……う~ん、確かに理論上は納得できたけど、メタはメタじゃないかなあ。


「だったらさあ、魔王様の『全次元消去オールキャンセル』のスキルって、一体何の? すっげえ中二的な名前をつけているけど、実はチートどころか、カススキルとか?」


「……うわあ、カススキルって。私が言うのもなんですが、提督アドミラルも結構言動がナチュラルにゲスいですよね。──ほら、魔王様が、完全にいじけてしまっているではないですか?」


 あ、ほんとだ。


 さっきから台詞が一切無いと思っていたら、魔王様ってば、玉座の上に体躯座りして、うつむきながら何やらブツブツつぶやき続けているぞ?


「まあ、それはそれとして、結局のところ、どうなんだい?」


「あの姿を見て『それはそれとして』って、さすがにヒキますねえ。言っておきますけど、『カススキル』なんてレベルでは無く、とんでもない『神スキル』なのですよ?」


「え、そうなの?」




「──ええ、彼の『全次元消去オールキャンセル』は、()()()()()()()()()()()、真の神様である『夢の主体』の代行者エージェントレベルの、超ハイクラスのチートスキルと言っても、過言ではありませんので」

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