表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/352

第203話、【異世界×将棋編・最終編】チートなんかじゃないからこそ、君には無限の未来があるんだよ♡(捕捉説明)

※今回は、一応前回において簡単にご説明をいたしました、『()の巫女姫』の明石月詠嬢が、量子コンピュータ搭載のアンドロイドであるアユミちゃんに対して、どうして将棋の勝負において勝つことができたのかについて、更に詳細なる解説を記載しておきますので、ご興味がお有りの方だけご覧になってください。

「よく『コンピュータがチェスの世界チャンピオンに勝った』なんてニュースが、忘れた頃に世間を騒がせたりもしますが、別にチャンピオンに勝てたところでそのコンピュータが、チェスの勝負において最強の存在となったことが実証されたわけではなく、そもそもその人間のチャンピオン自身がほんの数日後にでも、他の誰かに王座を奪われる可能性もあって、けして『絶対的な王者』なんかではないし、コンピュータ自体もチャンピオンどころかただの素人と勝負してあっさりと負けてしまう可能性だってあるのです。つまり、たとえコンピュータだろうが神様だろうが、それこそ創作物フィクションの中の話でもない限り、けして『すべての勝負に勝つことなぞできない』のですよ。よってたとえあらゆる情報が存在している集合的無意識へのアクセスを為し得て、まさしく未来の無限の可能性をすべて予測計算シミュレートできる、量子コンピュータを搭載した将棋アプリ擬人化アンドロイドが、将棋の対局に当たって編み出した必勝の策であろうとも、どこかに齟齬が存在している可能性があって、けして『必勝』なんかではなく、負けてしまう可能性があることも否定できないのです。そもそも集合的無意識には()()()情報が集まっているのであり、たとえアンドロイドがそのすべてにアクセスできようとも、そこに存在している情報のるつぼを完全に把握して、真に理想的な必勝の策を見極めて取捨選択することなぞ、どだい無理な話なのですよ。言わばアンドロイドは全知であるからこそ、むしろ真に必要な情報を選り出すことができないでいるのです。それに対して不幸な未来限定の予知能力者である『()の巫女姫』の私が、『受け将棋』に徹すれば、本来なら不可能なはずの『すべての勝負に勝ち続ける』ことを為し得ているのは、なぜだと思います? 実はそれは私が、『自分が()()()未来』しか予知できないからなのですよ。これまた何度も何度も申してきましたが、この現実世界には無限の可能性がございますので、アンドロイドだろうが未来予知の巫女姫だろうが、『絶対に勝つ』未来や『絶対に負ける』未来を予知することなぞ不可能なのです。厳密に言えば、量子コンピュータ搭載のアンドロイドにおいては、『勝てる()()()』を予知し、不幸な未来限定の予知能力者である『()の巫女姫』においては、『負ける()()()』を予知しているだけなのであって、実は『勝てる可能性』の予知を行ってみたところで、何とそこには『負ける可能性』も潜んでいるのであり、いくら全知そのままの予言ができたところで、絶対に勝負に勝つことなぞできないのです。それに対して『負ける可能性の予知』においては、工夫次第で『絶対の勝利』を獲得することが可能となるのです。例えばポーカーの勝負において、不幸な未来の予知能力によって、現在の持ち札に関して負ける()()()を予知したなら、必ず勝負を降りればいいのです。もちろん可能性はあくまでも可能性に過ぎないのだから、そのまま勝負を続けていても勝った可能性もあったでしょう。しかしたとえそうであろうとも、事前に『負ける可能性』をすべて潰しておけば、少なくとも負けることは絶対に無くなり、逆説的かつ必然的に、すべての勝負に勝つか最悪でも引き分けるかといった、()()()結果をもたらせることになるのであり、特にそれこそ将棋等の原則的に引き分けの無い勝負においては、けして負けないということは絶対に勝てることになるのです。実際将棋の勝負の場においては、私が次の手を頭の中で選んだ瞬間に、王手をかけられたり自滅したりといった敗北の未来ビジョンが脳裏に浮かんでくるそうなのですが、それは具体的には超トッププロ級の将棋の達人の方々と同じように脳内将棋盤の形をとってはいるものの、ただし私の場合はあたかも自分(サイド)の王将のほうこそを攻略対象とした詰将棋であるかのように、次に指す手を頭の中で選択するごとに()()()()()()()()有り様が脳内将棋盤において展開していき、そのような選択を極短時間の間で繰り返しているうちに、脳内将棋盤がまったく自玉の詰みへと動こうとはしない一手が──つまりは、まったく敗北の未来ビジョンを脳内で描写することのない手が見つかるのですが、まさしくその手こそがけして負けに繋がらない一手として、安心して打つことができるといった次第なのですよ。とはいえ将棋の対局においては重要な局面ごとに、それこそ無数の分岐が存在し得るので、自ら勝ちを狙って盤面を主導する『攻め将棋』に徹していては、まったく敗北の危険性の無い手なぞあり得ず、不幸な未来の予知能力の使い途はありません。それに対してあくまでも相手の出方に合わせた専守防衛を旨とする文字通り()()タイプであるゆえに、選択すべき分岐が限定されている『受け将棋』に徹するのであれば、むしろ不幸な未来の予知能力の独壇場ともなり得るのです。それと言うのも、相手が主導的に繰り出してくる『攻め』をもれなく『受け』凌いでいくということは、常に『ノーミス』を維持できなければ、たちまち相手の思惑に嵌まってしまいそのまま押し切られてしまいかねないわけなのですが、そもそも将棋の対局という長丁場においてたった一度の失策も犯さないでいられることなぞ、まずもって不可能と言えるでしょう。だって人間だもの。『失敗をしない人間』なんていやしないもの。──そう。そのような不可能を可能に変えて、徹頭徹尾ノーミスを貫き相手の『攻め』を切らせて、むしろ失策ミスすらも引き出し勝負を制してこそ、真の『受け将棋』なのであって、それを実現するには攻め手よりも更に完璧なる『大局観』や『勝負勘』が必要となるのです。まさにこれぞ『受け将棋こそ、すべての棋士にとっての究極の理想的戦法』とも言われるゆえんなのですが、実は『自分の()()()可能性』を予知できる不幸な未来の予知能力こそ、受け将棋において最もうってつけな異能なのでございます。確かに将棋の対局全般においてノーミスを貫くのは非常に困難ですが、将棋というものは『最後にミスをした者が敗者となる』と言われるくらいに、ノーミス状態を堅持していれば最終的に勝者となり得るのです。それは言わば、どんな『攻め』の手に対してもけして失策を犯さず落ち着いて対処すれば、むしろ自らのほうが有利になれる、適切なる『受け』の手が必ず存在しているということであって、『受け』の達人たちは現下の盤面じょうきょうとこれまで培ってきた膨大な知識と勝負勘とに基づき、これから先の勝負の行方を予測計算シミュレーションすることで、まさしくその『適切なる受けの一手』を見いだし、相手の怒濤の『攻め』を凌いでいるのですよ。つまり『受け将棋』という戦法に徹している限りは、必ず『自分の負ける可能性』の()()手が存在していることになり、だからこそ『自分の負ける可能性』をすべて予知できる不幸な未来の予知能力を使うことで、逆説的にまさにその『自分の負ける可能性の無い手』を特定することによって、けしてミスを犯すことなく相手の攻めを切らせて最終的に勝利を手にすることができるといった次第なのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ