第200話、【異世界×将棋編・最終編】チートなんかじゃないからこそ、君には無限の未来があるんだよ♡(前編)
「もしも、異世界転生が、扶桑桜花に自身による、単なる妄想だった場合」
「──彼女は、自分が『狂ってしまう』ことを、心の底から望んだことになるの」
「なぜなら、JKである自分よりも、何歳も年下の、単なる奨励会三段のDSに対して、本気で一目惚れするなんて、名家の令嬢としてはもちろん、扶桑桜花のタイトルホルダーである人気女流棋士としても、けして赦されることではないのだから」
「──しかし、それ以上に赦せなかったのが、 彼女自身の『良識』や『良心』だったの」
「そりゃ、そうでしょうね。これまではとにかく、常識や礼節をきちんと守り、実家や連盟等の、周囲の人たちの期待に応えてきたというのに、たった一人の男の子とのたった一度の出会いによって、すべてがひっくり返ったのですからね」
「──そう、『恋心』というものは、女を狂わすのです」
「どんなに理性を働かせようとしても、無駄です」
「常識にすがりつこうとしても、無駄です」
「歳の差を戒めようとしても、無駄です」
「相手のことを忘れようとしても、無駄です」
「学業に逃げようとしても、無駄です」
「将棋に打ち込もうとしても、無駄です」
「他の人たちとの交友に逃げても、無駄です」
「秘密の趣味である、異世界転生系Web小説を読みふけっても、無駄です」
「──なぜなら、自分の『恋心』から、逃げることなんて、誰にもできないのだから」
「目を閉じれば、『彼』の笑顔が」
「耳を澄ませば、『彼』の吐息が」
「噂を聞けば、『彼』の活躍が」
「夢を見れば、『彼』の素顔が」
「妄想にふければ、『彼』の痴態が」
「どこまでも、どこまでも、『彼女』を追いかけてくるでしょう」
「──だから『私』は、狂ってしまうことを、願ったのです」
「前世などといった『妄想』に取り憑かれて、自分を異世界人の生まれ変わりだと、『思い込む』ことにしたのです」
「何せ前世の異世界において、『彼』と昵懇の間柄であったのならば、現世の現代日本においても、いわゆる『運命の相手』ということで、たとえ歳の差等の諸問題が横たわっていようとも、『私』が『彼』を愛することに、必然性と妥当性が生じるのだから」
「──だから『私』こと零条安久谷は、その瞬間から、『彼』こと日本将棋連盟奨励会三段の金大中小太の前世である、異世界の大国の王子様であるヒットシー=マツモンド=ヨシュモンドの婚約者であった、オードリー=ケイスキーであるのだと、思い込むようになったのです」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──すべては、『彼』を、自分のものにするために」
「──そう、何度、離れ離れになろうが、何度、この手の中で死なせようが、何度、生まれ変わろうが、次の世界でも『彼』を探し出して、必ず結ばれて、今度こそ永遠に自分だけのものにするために!」
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
ショタ王子「……何です、これって?」
ちょい悪巫女姫「何って、ご覧の通り、零条安久谷扶桑桜花の、本心の吐露──すなわち、日本将棋連盟奨励会三段である金大中小太であられる、あなたへの愛の告白ですけど?」
ショタ王子「──そんな(小っ恥ずかし過ぎる)具体的内容を聞いているのでは無くて、どうしてよりによって【連載200回達成】という、記念すべきエピソードの冒頭から、このような『アレ』な文章を羅列したりするのかって、聞いているんですよ⁉」
ちょい悪巫女姫「ていうか、むしろ【連載200回達成】記念回だからですよ?」
ショタ王子「はあ?」
ちょい悪巫女姫「……ったく、他でもない主人公のあなたが、忘れてしまってどうするのですか? この作中作シリーズはそもそも、【異世界×ヤンデレ】をメインテイストにして、『将棋ラノベ』の革新的作品を実現するというのが、何よりの主目的だったのではないですか?」
ショタ王子「あ、そ、そういえば……」
ちょい悪巫女姫「それなのに、シリーズ中何かと言えば常に、『集合的無意識』だの『量子論』だのと、蘊蓄解説コーナーばかり展開して、まさしく読者様に対して、『詐欺』を働いたようなものではないですか?」
ショタ王子「──うっ、……返す言葉もありません」
ちょい悪巫女姫「と言うことで、あえて冒頭のような、電波丸出しの『怪文書』になってしまったわけなのですよ」
ショタ王子「か、怪文書って…………あ、いや、確かに扶桑桜花は、少々電波的なところがお有りだったけど、それは僕が、彼女と集合定期無意識とのアクセスを遮断してしまったから、いったんリセットされたのではありませんでしたっけ?」
ちょい悪巫女姫「だからちゃんと、彼女のモノローグをお読みなってくださってば、いくら中二病的電波文章だからって、ひどいではありませんか?」
ショタ王子「……いや、あんたの言い草のほうが、よほどひどいと思うんだけど?」
ちょい悪巫女姫「(無視)彼女が『前世の記憶』に目覚めたのが、例えば私や『なろうの女神』のような、『黄龍』相当の力を有した者による、恣意的な行為によるものであったのなら、あなたが行ったような他者の干渉による集合的無意識との遮断によって、もう二度と『前世の記憶』を取り戻すことができなかったでしょうが、モノローグにあるように、そもそも彼女自身が『前世でのあなたとの結びつき』を得るために、独力で集合的無意識とのアクセスを果たされたのですから、あなたへの想いが尽きぬ限りは、何度でも『前世の記憶』は甦るわけなのです」
ショタ王子「──えっ、扶桑桜花が、僕なんかを好きになったのは、『前世の記憶』のせいじゃなかったのですか⁉」
ちょい悪巫女姫「……やれやれ、本作を始めとしてこの作者の緒作品の中で、何度も何度も述べてきたではありませんか? かの高名な『本好きの女の子』は、別に現代日本の司書さんの転生体なんかではなく、生粋の異世界の女の子が、ふとしたことから読書の楽しさに目覚めて、圧倒的に読書環境の低レベルな異世界において、万民に読書の習慣を普及させるために、獅子奮迅の努力をし続けた結果、あと一歩で願いが叶うというその瞬間に、『運命の女神様』が微笑んで、集合的無意識とのアクセスを奇跡的に果たして、現代日本(レベル)の活版印刷技術や書籍流通経路の開拓等の、様々な斬新な知識を得ることによって、結局最初から最後まで(転生とかチートとか関係なしに)自分の力だけで夢を成し遂げたのではありませんか? ──扶桑桜花さんだって、同じことですよ」
……何……だっ……てえ……。
※この【異世界転生×将棋編】は、後二、三回で終了いたします。
引き続いて、旧大日本帝国海軍駆逐艦の『清霜』が、幼い女の子に転生して、異世界で大活躍する新シリーズが始まるので、どうぞよろしくお願いいたします。




