第191話、将棋ラノベで、ロリときたら、次はおねショタかヤンデレだよね♡(その52)
「……『過去詠みの巫女姫』であるあなたこそは、黄龍の巫女なのであり、第一使徒である僕同様に──いえ、それ以上に、ありとあらゆる世界の『記憶と知識』が集まってくるとされている集合的無意識と、制限無しでアクセスできるですって?」
前世である異世界において、ありとあらゆる世界を夢見ながら眠り続けているという、まさしくすべての世界とそこに含まれる森羅万象の創造主とも言える、少女の姿をした『黄龍』と偶然縁を結んだ僕こと、日本将棋連盟奨励会三段の金大中小太は、前世において勇者にして一国の王子であった時分に、異世界最強の破壊神『龍王』との最終対決の真っ最中にて、大ピンチに陥った折に、黄龍から借り受けた力を解放して、異世界そのものを『夢』と言うことにして、こうして現実世界へと『目覚める』ことにより、難を逃れたのであるが、偶然その場に居合わせた、同じ前世の記憶を共有しているわけでも無い、本日初対面の良家のお嬢様明石月詠嬢が、いきなり僕が前世である異世界で行った『反則技』的行為について、糾弾してきたのであった。
「あら、何ですの、そのいかにも半信半疑の、訝しげなご表情は。もしかして、『私のプロフィール』を、お忘れなのかしら?」
「……あなたのプロフィールって、そりゃあ我が国で一二を争う名家の御本家の跡取り娘であり、当代の『過去詠みの巫女姫』であられるわけでしょう?」
「そちらでは無く、『前世の私』のほう、ですよ?」
「ぜ、前世、だって⁉」
………………………………あ、そうか、そうだった。
確かに彼女は、僕を始めとして、現在僕らがいるセレブ向け高層マンションの家主にして、我が国の将棋界の最高実力者の『竜王』であられる僕のお師匠様や、なぜだか本日付けで彼の内弟子となり自動的に僕の『妹弟子』となってしまった、DSである僕よりも年上の現役のJKにして、これまた女流棋士の頂点とも言える『扶桑桜花』である零条安久谷嬢──といった面々とは違って、ヨシュモンド王国では無いけれど、やはり剣と魔法のファンタジーワールドで暮らしていた、『前世』を有していたのだ。
しかも、彼女が属している、王国はとは言うと──
「うふふ、どうやら、思い出されたようですね?」
「……そうか、大陸きっての『量子魔導』先進国、ホワンロン王国の『過去詠みの巫女姫』、アルテミス=ツクヨミ=セレルーナこそが、あなたの『前世』でしたっけ」
「そうなのです、前世──と言うか、ぶっちゃけ作者の別作品『わたくし、悪役令嬢ですの!』においては、ホワンロン王国自体が文字通りに黄龍の御加護に与っていたのであり、そして唯一の王国公認の『巫女姫』である私こそが、地上における黄龍の代理人と言っても過言では無く、限定的とはいえ、黄龍の超常なる力を行使することが許されているのです」
──だから、『別の作品』とかメタいことを、ぶっちゃけるなっつうの⁉
……いや、突っ込むところは、そこじゃ無い。
「黄龍の超常なる力を、行使できるって? 一体、どんな⁉」
「さっきあなたの目の前で、ちゃんとご披露してあげたじゃないの?」
「はあ?」
「……やれやれ、アユミちゃんとの対局の時ですよ。最先端の量子コンピュータを搭載していて、全知そのままの予測計算能力で、常に対局の行方の全パターンをすべて瞬時に計算できる、将棋アプリの擬人化アンドロイド美少女に、ただの人間に過ぎない私が、どうして勝てたと思われてましたの?」
──‼
そ、そういえば、そうだよな⁉
「じゃあ、それこそが、黄龍のご加護の、お陰だと?」
「それだけじゃ、無いですわよ?」
「えっ?」
「本来私が知るはずの無い、あなたたちの『前世』の状況を知っていたのも、黄龍の超常なる力の賜物なの」
なっ⁉
黄龍の力によって、他人の『前世』までわかるだと?
「──い、いや、ちょっと待って! 確かに今この時においても、ありとあらゆる世界を夢見ながら眠り続けているという黄龍の力を借り受けているのなら、たとえそこが剣と魔法のファンタジー異世界であろうと、観測することは十分可能だとは思うけど、そもそも僕らが以前いた世界は、まさにその黄龍の力を使うことによって、夢だということにしてしまって、今や消滅しているからして、観測しようが無いはずじゃないか⁉」
同じく黄龍の使徒として、とても聞き捨てなら無い言葉に、思わず食ってかかってみたものの、文字通り一笑に付す、自称黄龍の巫女姫。
「あはは、何をおっしゃっているの? 世界が消えて無くなるはずが無いじゃない?」
………………………………はあ?
あまりにも予想外の言葉に、こちらが面食らって言葉を失っていると、
──更なるとどめの言葉を突き付けてくる、目の前の名家のお嬢様JK。
「それにもしもその世界がすでに滅びていたとしても、過去に遡って観測することすら可能とするのが、『集合的無意識の具現』的存在である、黄龍の真の力ではございませんか?」
※作者病み上がりに付き、今回短めですが、すぐに続きを上げますので、どうぞご容赦のほどを。




