第186話、将棋ラノベで、ロリときたら、次はおねショタかヤンデレだよね♡(その49)
「さて、ここで質問です! 例えば現代日本のような『完全なる現実世界』で暮らしている人々が、この『剣と魔法のファンタジーワールド』や『SF小説的な過去や未来の世界や並行世界』なんかと遭遇する手段としては、一体どういったものが考えられるでしょうか? ──はい、まさしく剣と魔法のファンタジーワールドではお馴染みの、『ステレオタイプの悪役令嬢』のオードリー=ケイスキーさん、どうぞご回答を!」
「な、何という、マイペースな王子様ですの⁉ ………まあ、あえて良識的な答えをお返しすると、小説等の創作物か、それこそ妄想や夢の世界等くらいではありませんの?」
「そう、その通り! 現在目の前にある世界以外の『別の可能性としての世界』とアクセスするための、唯一かつ論理的かつ科学的な方法なんて、『すべての世界は何者かが見ている夢に過ぎない』論に基づく以外は無いんだ。──何せ、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってくるとされる、いわゆる『集合的無意識』(とのアクセス)自体が、夢の世界(とのアクセス)そのものだと言われるくらいだしね」
「はあ? 『別の可能性としての世界』や集合的無意識が、『夢の世界』そのものですってえ⁉ しかもそのことが、唯一と言って言いくらい現実的で、論理的かつ科学的でもある理論に基づいているですと?」
「……いや、オードリー、いかにもびっくり仰天といった感じの反応だけど、これって本作においては、これまで散々語られてきたことじゃないか?」
「え、それってまさか、例の、シスターさんが以前延々と、私に聞かせてくださった──」
「あ、そうか、うちが関西弁で、散々蘊蓄解説したやつか!」
「そうそう、たとえ『完全なる現実世界』であろうとも、たった一つの『ある考え』に基づくだけで、異世界や並行世界等の、『別の可能性の世界』と陸続きになる方法があるよね? それこそが、『実はこの現実世界ですら、何者かが見ている夢に過ぎない可能性がある』という理論なのさ。何せ、現代日本のような『完全なる現実世界』であろうが、夢かも知れない可能性を否定することは絶対にできないんだからね。そうなると問題になるのは、『誰が見ている夢なのか?』ということなんだけど、誰でも『他人になった夢』を見たことがあるように、もしも現在の世界が夢だったとしても、その夢を見ているのが自分自身とは限らず、しかもその者が存在しているのが、現在と同じ世界とは決まっていないゆえに、何と、現在の世界が夢である可能性をけして否定できない限り、人は誰でも次の瞬間にでも、『夢から覚める』という極日常的な出来事を切っ掛けにして、『異世界転移』を実現し、そこでこれまでの自分とはまったく異なる『勇者や魔王』になってしまう可能性さえも、けして否定できなくなるんだよ」
「「「「──た、確かに! つまりは何と、異世界や並行世界等の『別の可能性の世界』の存在可能性はおろか、『異世界転移』や『異世界転生』の実現可能性すらも、十分にあり得るということなのか⁉」」」」
「それだけ、『実は世界は何者かが見ている夢かも』理論というものは、僕らのような、勇者とか龍王とか悪役令嬢とかいった、超常的キャラの存在可能性はもちろん、世界や神様という『概念的存在』にとっても、重要なる意味を持つわけさ。しかもこれに量子論を絡めて、『現在の世界が夢かも知れない可能性を否定できないのなら、我々人間も量子同様に、「形ある現実の存在」と「形なき夢の存在」という、二つの性質を同時に持つことになるので、量子同様に、「無限に存在し得る未来の(可能性としての)自分」と常にアクセスできる、いわゆる「重ね合わせ現象」が実現することになり、実はこれぞユング心理学で言うところの、「集合的無意識」とのアクセスの実現そのものであり、「未来予測」や「読心」や「異世界転生」や「タイムトラベル」等々の、Web小説やラノベやSF小説等に登場してくる超常現象を、(あくまでも「精神的に」という限定条件は付くものの)ほぼすべて実現できるようになる』ことになるって次第なんだよ」
「「「何と、『もしかしてこの世界は夢かも知れない』という仮説に基づくだけで、ありとあらゆる超常現象が実現できるとな⁉ すげえ、『実は世界は何者かが見ている夢かも理論』、すげえ!!!」」」
僕の懇切丁寧なる蘊蓄説明を聞いて、心から感服の声を上げる、勇者パーティの女性メンバーたち。
──ただし、一人龍王だけは、なぜかこれまで以上に、顔面蒼白となっていたが。
「……ちょっと待て、まさに現在、その『ありとあらゆる世界を夢見ながら眠り続けている』とされている、黄龍の力を宿しているという、そなたの剣は、まさか、まさか、まさか──⁉」
……ふふ、さすがはすべての魔物の総元締めにして、勇者である僕にとっての宿敵、やはり気づいたか。
そして僕は、聡明であるゆえに誰よりも先に、『絶望的な事実』に考え至ってしまった、哀れなる幼女に向かって、手の内の剣を突きつけながら、
──『最終宣告』を、ぶちかましたのであった。
「そう、この『霊弧の剣』は、この世界を今すぐにでも、『単なる夢』ということに、してしまえるんだよ」




