第185話、将棋ラノベで、ロリときたら、次はおねショタかヤンデレだよね♡(その48)
「「「──黄龍の存在可能性を保障する『大原則』によってこそ、間違いなく今ここにこうして存在している私たちが、存在できているですって⁉」」」
僕のあまりにも唐突かつ驚愕の、文字通りの『世界の真理』を開陳した言葉に、異口同音に問い返す、勇者パーティのお姉様方。
──見るからに戸惑いの表情を浮かべている、それぞれの可憐なるご尊顔。
何とそれは、外見上は愛らしい幼女に過ぎないとはいえ、れっきとしたすべての魔物の総元締めであり、勇者である僕のラストバトルの決戦相手でもある、龍王様も御同様であったのだ。
「な、何じゃその、黄龍はおろか、我らの存在を保障する、『大原則』とは?」
ここに至るまで散々翻弄され続けて、もはや『龍の王』としての威厳すらもかなぐり捨てて、必死の形相で問い詰めてくる、幼きラスボス。
だから僕は、少しももったいぶることなく、言い放ったのである。
──まさしく、決定的な、とどめの台詞を。
「それは当然、神様や悪魔の類いはもちろん、僕やあなた方のような、本来なら存在し得ないはずの、『異世界の勇者様』とか、『すべての魔物の総元締めの龍王』とか、『ステレオタイプの悪役令嬢』とか、『美少女人造人間』とか、『聖職者のくせに妙に人懐っこく情報通で何かと解説役を担ってくれる、いかにも御都合主義な美人シスター』等ですらも、誰か一人でもその存在を妄想とか創作とか夢見とかの形で『認識』した途端、その存在可能性が生じることになるという、量子論や観測者理論に則った、れっきとした学説的『大原則』ですよ」
「「「「──っ」」」」
一斉に息を呑み絶句する、一同。
ほぼ予想通りの反応とはいえ、この作品の作者の持論としては、むしろ『毎度お馴染み』とも言い得て、別に珍しいものでも無かった。
すなわち、ある意味馬鹿の一つ覚えのようにして、「なぜ一部のWeb小説にあるように、現代日本の都市伝説であるはずの『メリーさん』が、異世界に存在することができるのか?」についての解答として、「都市伝説のような『概念的存在』は、誰か一人でもその概念を認識すると同時に、その世界において本当に存在し得る可能性が生じるので、異世界人がほんの一人でも、『メリーさん』という概念を認識するだけで、具体的に異世界転移や異世界転生等のプロセスを経ることなく、異世界に存在することになる」という(屁理屈的)理論を提唱しているのは、作者の他の著作をお読みになっておられる方であれば、すでにご存じのことであろう。
つまり、都市伝説同様の『概念的存在』──あるいは、『シュレディンガーの猫』や『ラプラスの悪魔』同様の『思考実験的存在』である、『ありとあらゆる世界を夢見ながら眠り続けている』とも言われている、いわゆる『すべての夢の主観者』たる黄龍もまた、その概念を認識された途端、本当に存在し得る可能性が生じるわけなのだ。
「「「「──いやいやいや、ちょっと待って、黄龍なんて、もはやどうでもいいから! それよりももっと、重要な問題があるから!」」」」
なぜか、僕の心を読んだようにして、一斉に突っ込んでくる、龍王を含めた女性陣。……はて、一体どうしたのであろう?
「『一体どうした』じゃ、ありませんわよ!」
「王子の言い方じゃまるで、私たちも黄龍同様に、本来なら存在するはずのない、『概念的存在』みたいじゃないの⁉」
「ここはあくまでも、剣と魔法のファンタジーワールドなのだから、私たちのような勇者や龍王や悪役令嬢や人造人間が存在していても、何ら不思議は無いでしょうが⁉」
「そうじゃそうじゃ、こやつらのいう通りじゃ! 確かに神様や都市伝説や黄龍なんかについては、そなたが申す通りに、本来実体なき存在──すなわち、まさしく『概念的存在』に過ぎず、何者かにその存在を認識されぬ限りは、存在することができないであろうが、同じ超常的存在とはいえ、別に他者による認識を必要とはしない、れっきとした『絶対的存在』である、我らを一緒にするでない!」
さすがに自分たちの存在そのものに関わる話ゆえに、陣営を越えて龍王までもが一緒になって、一見至極妥当に思われる反駁を突きつけてくる、自他共に認める『非実在的』少女たち。
──しかしそれに対して、情け容赦なく一刀両断に斬り捨てる、少年勇者サマであった。
「……だからさあ、大前提として、そもそもその、『剣と魔法のファンタジーワールド』自体が、非現実的だと言っているんだよ?」
「「「「──ちょっ、おまっ、それを言っては、おしまいだろうが⁉」」」」
「しかも実は何と、そんな『剣と魔法のファンタジーワールド』や、そこに含まれている僕らのような『非実在的存在』に、『存在可能性』を与えてくれているのが、当の黄龍だったりするわけなのさ」
「「「「──話を、聞けええええええ!!!」」」」
もはや、必死にわめき立てるばかりの、お姉様たち。
……やれやれ、ここは勇者で王子様である僕が、理路整然と説明してやるしかないか。
──そして僕は満を持して、更なる『驚愕の事実』を、つまびらかにするのであった。




