第173話、将棋ラノベで、ロリときたら、次はおねショタかヤンデレだよね♡(その38)
……あ、言っとくけど、これは別にこの作品の作者が、当てずっぽうでいい加減なことを言っているわけでは無いで? ちゃんとこれまでの科学技術史に則って述べとるんや。
現在最先端のWeb小説の中においては、相変わらず『一発必殺の最終兵器』とか『絶対に的中する未来予測』とかいった、ちょっと現代物理学をかじっとったら、絶対に不可能だとわかることを、臆面も無く登場させとるが、そんな『子供部屋おじさん』そのもののWeb作家たちとは違って、ちゃんと現実世界に生きている普通の大人たちは、昔から賢かったんやで?
80年も前にドイツにおいて、史上初の大陸間弾道ミサイル『V2』が開発された際の話やけど、けしてWeb小説に登場するな異世界の魔術師やマッドサイエンティストみたいに、「わしの正確無比な弾道計算によって、百発百中じゃああああ!!!」とかいった、子供じみたたわ言をほざいたりせず、飛翔中のミサイルがあらかじめ設定していた予測弾道から、気象状況等の様々な外的要因によって外れていくことを念頭に置いて、常に『軌道修正』を施すように(原初の)内蔵コンピュータによって処理させ続けて、当時においては驚異的な正確さでロンドンに到達させていたんや。
──そりゃあ、すでに半分以上戦勝気分やった、連合軍は大騒ぎや。
当時としては、ただ軍用機をまっすぐ飛ばすだけでも、大変やったんやで?
あんなドーバー海峡なんていう、狭い水たまりを越えて敵地を空襲するだけでも、飛行機と地上基地とで、お互いに電波を出し合って、常時位置情報を確認しながら飛んでいたくらいや。
それなのに、無人の大型飛翔体であるミサイルを、ほぼ正確にロンドンに到達させたんや、このままドイツに新兵器を開発させていたら、どんな超兵器が出てくるかわかったもんじゃないってことで、米英連合軍の地上部隊の侵攻を予定より早めようとしたほどや。
……そのせいで補給線が延びすぎて、皆さんようご存じの『マーケットガーデン作戦』や『バジル大作戦』において、手痛いドイツ軍の反撃を喰らうことになるんやけどな♫
とまあ、少々話が反れてしまったけど、とにかくこのように軍事や商業の現場という、『不確定な未来をいかに先読みするか?』で勝負が決まる分野においては、『成功を収める』ためには、できるだけ事前に『失敗するデータ』を集めておくのが肝要だということで、それができるのは、元からファジーな人間様の脳みそ以外では、『たった一つの正解』などでは無く、『正解のみならず不正解をも含めて』ありとあらゆる無限の未来の可能性をすべて予測計算できる、量子コンピュータだけっちゅうことや。
ここで、どうして量子コンピュータであれば、(これまでのいわゆる『ノイマン型コンピュータ』とは違って)『たった一つの正解』ではなく『不正解』すらも含めた、『あらゆる無限の未来の可能性』を算出できるのか、論理的かつ科学的かつ技術的に述べておこうか。
実は量子コンピュータの計算素子であり、我々人類を始めとする世界を構成する森羅万象を構成する物理量の最小単位である、『量子』というものが、形ある『粒子』と形なき『波』との二つの性格を同時に有していて、形なき波の状態時においては、次の瞬間形ある粒子となった時の『形態』や『位置』は、けしてたった一つとは決まっておらず、無限の可能性が存在するために、「量子のほんの一瞬後の形態や位置であろうとも、けして予測できない」ということこそが、現代物理学の根幹をなす『量子論』の基本的理論となっておるんや。
これって、難しい語句を使って殊更わかりにくくしてしまったけど、極簡単に言い直すと、世界や人間を構成する最小単位の『量子』の一瞬後の形態や位置が予測不能やからこそ、「実はこの世界の未来には、無限の可能性があって、たとえ神様だって、予想不可能なんやでえ? 時代錯誤の古典物理学者様、アインシュタイン大博士w、それにロートルのプロのSF小説家の皆さん、ご愁傷様〜♡」と言うことなんや。
これは、量子には無限に存在し得る『未来の量子自身』と常にアクセスできる、『重ね合わせ現象』という性質があるからで、これを活用しているのがまさしく、量子コンピュータにおける『量子ビット演算処理能力』なのであり、しかも『量子の未来=世界やそこに含まれる森羅万象の未来』やから、当然ありとあらゆる無限の未来の可能性をすべて予測計算できることになるんや。
──それで、この『あらゆる無限の未来の可能性をすべて予測計算できる』っちゅうところが、何よりも肝要になるんやけど、
何せ『未来』って、いまだ訪れていない世界のことやろ?
つうことは、いまだ誰に知られず、誰にも想像だにできなかった、『まったく埒外の世界』も含まれているわけや。
──そう、つまりは以上の理論に則れば、量子コンピュータ(や、それと同等以上の能力を誇る人間の脳みそ)ならば、本来ならこの現実世界とはけして交わること無く、その実在を認識することが絶対に不可能なはずの、Web小説でお馴染みの『異世界』を始めとする、『現実世界以外のその他の世界』の存在を、生み出すことができるちゅうことになるんや。




