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第170話、将棋ラノベで、ロリときたら、次はおねショタかヤンデレだよね♡(その35)

「…………は? 某超有名『神様少女ラノベ』が、()()()()()()()()()()って、一体どういう意味なのですの?」




 現在Web小説界を席巻している、二番煎じ以降の『死に戻り』作品の根幹を為す、『セーブ』や『ループ』の実現性が、実は論理的に破綻してしまっているという証明を、同じ勇者パーティの一員である、聖レーン転生教団所属のシスターから懇切丁寧に説明していただいていた最中に飛び出した、『ループといえばこの作品!』と言っても過言ではない、ラノベ界の金字塔的作品に対する、あまりもの暴言に、完全に呆気にとられるわたくしこと、大陸最凶の『悪役令嬢』オードリー=ケイスキーであった。


 しかし、わたくしの戸惑いなど何のその、更なる爆弾発言をぶちかます、蘊蓄聖職者。




「──言うなれば、原作者の某ラノベ作家先生が考案する以前から、世界の『ループ化』や『改変』イベントで言うところの、『(正規ルートではない)その他の世界』として存在していたし、更に極論すると、この作品とその『二次創作』とは、『世界』としては、時間の前後関係にかかわらず、()()()()()()()()()()()()()の」




 ………………………………は?


「原作者が考えつく前に、作品が存在しているのはもちろん、オリジナルと二次創作が、端から同時に存在していたって、そんな馬鹿な⁉ もう、『ループ』とか『セーブ』とか『死に戻り』とか言う以前に、むちゃくちゃではありませんか! そもそもその、『(正規ルートではない)その他の世界』とか『あらゆる世界は最初からすべて存在していた』とかって、一体何のことですの⁉」


 もはや堪りかねて、怒鳴り散らす、マツモンド王国筆頭公爵家令嬢。


 それに対して、返ってきた言葉はと言うと──




「……世界というものは、本来たった一つっきりしか、存在し得ない」




 え。




「それなのに、このラノベ界を代表する作家さんを始め、あらゆる創作家が、過去や未来の世界や異世界や並行世界や何やらと、正規ルート以外の『その他の世界』を妄想してしまったが故に、『無限の可能性としての存在』でしかなかった『その他の世界』が、人々に認識されてしまったために、『存在可能性』が確定してしまった」




「ちょ、ちょっと、あなた、一体どうなさったのです?」


 いつものにやけた笑みを消し去り、完全に無表情となり、滔々と語り続ける、シスターさん。


 それは普段のおどけてばかりの彼女の姿しか知らない身としては、十分に異様な光景であった。




「そして、一度『その他の世界』を認識してしまえば、けして無かったことにはできない。それは各創作者が妄想した(作品)世界だけではなく、人類の想像を絶する未知の世界をも含む、文字通りの『ありとあらゆる世界』が存在することになるのだ。──もちろん、作者や作品の都合で、『八月やクリスマスシーズンの数日間のみの世界』などのように、『限定』することや、作品の主人公の神様的力によって、『改変』したり『繰り返』させたり、(作品的に)用が済んだので『無かったこと』にしたりなぞできず、その『用済みと思われる世界』すらも、小説家ども風情が考えつく以前から、最初からすべて揃って存在していて、未来永劫けして『上書き』されたりして消えて無くなることなぞないなのだ」




「──待って待って待って待って! 何その、業界全体をターゲットにした、無差別絨毯爆撃的な、問題発言の連続は⁉ なぜに、ただ単に小説の中に架空の世界を登場させただけで、本当にその世界が存在し得ることになるんですの? 小説でも漫画でもアニメでもゲームでも、『つくられた世界』なんてあくまでも、『偽物の世界モドキ』に過ぎないでしょうが⁉」




「小説なんかに登場する世界が、『偽物の世界モドキ』ですって? ──では伺いますけど、もし仮にこの世界が、現代日本の『小説家になろう』という創作サイト上に公開されている、『なろうの女神が支配する』というタイトルの小説だった場合、世界としては『偽物のモドキ』に過ぎないという認識でよろしいでしょうか?」




 ──っ。


「あなた、卑怯じゃありませんの⁉ そんな『メタ』そのものことを持ち出して!」


「別に卑怯ではありません、私はただ、話をわかりやすくしただけです」


「わかりやすく、って……」




「もしもこの世界がWeb小説の場合は、まさに今この時パソコン等の前に座っておられる読者様からしたら、単なる『つくられた世界』に過ぎないことになるわけですが、果たして現にこの世界にいるあなたに、その事実を受け容れることができますか?」




「──そ、そんなこと、できるわけがないでしょう⁉ この世界はれっきとした、本物の世界よ!」




「そうでしょうそうでしょう、これにて【証明終了】、まさしくあなたご自身の口から、『小説の世界も本物の世界』であることが、成立いたしました♡」




「はあ? …………いやいやいや、何をとんでもない詭弁を弄しているのです⁉ そもそもこの世界は、小説なんかではございませんわ!」


「残念ながら、この世界の内側にいる私たちには、『この世界が小説である可能性』を、完全否定することは、けしてできないのです。──ほら、もしかして今この時、パソコンの前に座っておられる読者の皆様が、私たちのことをあざ笑っているかも知れませんよ?」


「小説であるかも知れない可能性は否定できないって、そんなこと言ったら、キリがないでしょうが⁉ そのような馬鹿げた『トンデモ話』ばかりをして、あなたは一体何がおっしゃったりわけなのです⁉」




「何って、嫌だなあ、忘れないでくださいよう? もちろん、『死に戻り』についてでは、ありませんか」




 ……あ、そういえば、そうでした。




「──つまりですね、以上長々と述べてきた諸々によって、『セーブ』や『ループ』なんて、論理的にけして実現しないことが証明されたわけなのですよ。何せ、『(正規ルートではない)その他の世界』とは、最初からただ無限に揃って存在しているだけなので、個々の作者の作品の都合で、数日間だけに『限定』されたり、『消失』したり、『上書き』されたり、『ループ』したりなんか、しやしないのですからね。よってその結果として、某オリジナル作品以外の、『セーブ』や『ループ』を下敷きにしている、二番煎じ以降の『死に戻り』作品は、すべて成り立たなくなってしまうわけなのですよ」

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