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第162話、将棋ラノベで、ロリときたら、次はおねショタかヤンデレだよね♡(その27)

「──何が、ショタ主人公と年上の美少女たちによる、入浴イベントですか⁉ 私を抜きにして、勝手にそんな『ラッキースケベシーン』を進行しようとしないでください! 皆さんときたら、ちょっと見くびり過ぎておられるようですけど、実は私ってすごいんですよ? だって、誰もが『とても不可能だ』とか『やっても何の意味もない』とか言っていた、ありとあらゆるWeb小説初の、大快挙を成し遂げたのですからね!」




 ………………………………は?




 将棋専用アプリの擬人化アンドロイド美少女でありながら、人間のJK(女子高生)との将棋の勝負に完敗してしまい、しかもその後にある致命的な欠陥が露呈して意識を失っていた、日本将棋連盟謹製JSA()ノ001号──通称『アユミちゃん』だが、突然(お風呂の中で)再起動するや否や、完璧な負け犬のくせになぜかドヤ顔で、いきなり意味不明なことを言い出したのであった。


「……どうしたの、アユミちゃん? 湯あたりでもしたの? それともとうとう、頭脳に搭載している量子コンピュータが、オーバーヒートでも起こしてしまったの?」


 そんな僕こと、奨励会三段のDS(男子小学生)棋士(きん)だいちゅうショウの、いかにも心配げな言葉に対して、きょとんとした表情となって、自分の身体を見下ろすアユミちゃん。




「なっ⁉ どうして私まで、知らない間に、湯船なんかに浸かっているのです? ──これでも最先端の科学技術の粋を尽くした精密機械なので、水に浸けるのは厳禁なのですよ⁉」




 愕然とした表情となりながらも、機械人形ロボットキャラとしての『お約束のツッコミ』を律儀に入れてくれる彼女に対して、懇切丁寧に状況説明を始める僕。




「……ちょっと話が前後してしまうけど、君って対戦相手のよみ嬢が、『自らの不幸な未来のみを予測できる』という、予知能力者にとって──そして、何よりも『受け将棋指し』にとって、最も理想的かつ効率的な力を有していることを知っても、けして負けを認めず、『そもそも量子コンピュータを搭載している私は、ありとあらゆる未来の可能性を予測計算シミュレーションできるのであり、「ありとあらゆる未来」ということは、「幸福な未来」はもちろん「不幸な未来」も含まれているのであって、不幸な未来しか予知できないあなたなんかに、負けるわけが無い!』などと、妥当なのかそうで無いのかわからないことをわめき立てて、勝負を続行したんだけど、案の定対局の途中でハングアップしてしまって、君に添付されていた取説のマニュアル通りに、一度完全に熱暴走してしまった頭脳部分を急速冷却した後で、再起動させるために全身に適度な熱量を行き渡らせようと、温水に浸からせたというわけなんだよ。そしたらマニュアル通りに、三分後に君が目覚めたって次第なのさ」




「何その、いったんフリーズドライしてから、お湯を注いで三分ほど待って元に戻すという、文字通り『インスタント』な取説は⁉ 実はアンドロイドって、インスタントラーメンレベルの存在でしかないのかよ⁉ ──いや、まあ、それならそれで、別に構いはしないけど、そんなことよりも大問題のは、現在のこの状況だと思うんだけどねえ⁉」


「へ? 問題って、何が?」




「見かけ上小学校高学年の私とあなたが、一緒に湯船に浸かっている時点で問題だというのに、何で当たり前のようにして、名実共に現役JKの明石あかしつき詠嬢やれいじょう扶桑アンラッキー桜花・ロケットはもちろん、極めつけには三十がらみのご年齢という、立派な成年男子であられる、こくじょうりゅうおうまでもが、平然と全裸で入浴しているのですか⁉ 風紀上は当然として、業界的にも大スキャンダルでしょうが!」




 顔を真っ赤に紅潮させ、口角泡を飛ばすがごとくわめき立てる、アンドロイド少女。


 ……うん、非常に常識的ご意見、どうもありがとう。


 ──しかし残念ながら、今ここにおられる方々は、自他共に認める『非常識の塊』そのままな、御仁ばかりであったのだ。




「「「──いやいやいや、別に、何の問題も無いけど?」」」




 僕の予想通りに、あっさりとアユミちゃんの指摘を完全に否定する、くだんの男女三人衆。


 そこには、年頃の乙女の恥じらいも、三十男のエロい下心も、微塵も存在せず、お互いに生まれたままの姿を隠そうともしないで、平然と湯船に身を委ねていた。


「『いやいやいやいや』は、むしろこっちの台詞です! 私と王子はともかく、どうして皆さん、お年頃の男女が一緒に入浴しているというのに、まったく平気でいられるんですか⁉」


 それに対して、異口同音に、いろいろな意味で『ヤベえ台詞』を返してくる、三人衆。




「「「だって我らは、王子の裸しか、興味は無いし」」」




 ──ちょおおおおおおおおとおおおおおおおお⁉


 な、何だよ、それって?


 てっきりこれから、『アユミちゃんいじり』が始まるとばかり思っていて、あくまでもナレーターとして一歩退いて傍観していたら、むしろ僕のほうこそに、身の危険が迫っていたなんて⁉


 言わば現在の状況って、僕のことを今にも喰らわんとしている(意味深)、獰猛な肉食獣に取り囲まれているに等しい、絶体絶命の大ピンチじゃないですかあ?


「……ふむ、そういえば、そうでしたな。私としても、こうして王子と裸のお付き合いを行うのは、やぶさかではありませんよ?」


 しかも、当のアユミちゃんまでもが、こんな異常な状況を、あっさりと納得して受け容れているしい!


 ──いかん、このままでは僕一人を獲物イケニエにした、『酒池肉林』が始まりかねないぞ!


 みんなの気をそらすためにも、早く話題を変えなくては!




「そ、そういえば、アユミちゃんて、さっき『ありとあらゆるWeb小説初の大快挙を成し遂げた』とか何とか言っていたけど、それってどういう意味なんだい?」




 苦し紛れに切り出した、僕のわざとらしい質問の言葉に、思いの外ノリノリで答えを返してくる、アンドロイド美少女殿。


「おや、聞きたいですかあ? う〜ん、どうしようかなあ♫(あからさまなドヤ顔で)」


「(──ウザッ!)もちろん、聞きたいです! 是非お話しください!」


「いやあ、そこまで言われれば、断るわけにも行かないなあ。──もう、王子ったら、しょうがないんだからあ」


「へ、へい、おっしゃる通りでして、げへへへへ(()()時代の三下チンピラのようにへりくだりながら)」


 ……ケッ、しょせんは機械か、単純なやつめ。


 そのような、こちらの思惑に少しも気づくこと無く、いかにも満を持したかのようにして、




 とんでもない、爆弾発言を炸裂させる、マッパの機械少女。




「──他でもありません、実は私はWeb小説界初の、『ロボットからロボットへの異世界転生』を、成し遂げたのです!」




 ………………………………へ?

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