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第156話、将棋ラノベで、ロリときたら、次はおねショタかヤンデレだよね♡(その21)

 未来予知の巫女姫である明石あかしつきよみ嬢が、ちょっとした余興に過ぎない現在の将棋の対局において、自分の身に古今東西の名棋士を憑依させることによって、自分自身は初心者でありながら、数々の好手や奇手を繰り出すといった、「……おまえそれ、別の新シリーズのほうでやれよ」と言いたくなるような、もはや『ラノベ系将棋』と言うよりも『なろう系将棋』とも呼ぶべき、チート無双をぶちかましていたなかにおいて、肝心の対戦相手である私こと、将棋専用アンドロイドの『アユミちゃん』が何をしていたかというと、




 実は、この現代日本を守るために、某国からのサイバーアタックに対して、熾烈なる防衛戦を繰り広げていたのであった!




『──こちら「アユミ」、最終防壁の状況は、どうか?』


『──こちら「ゴールド」、かなりヤバい感じ』


『──こちら「シルバー」、お陰で我らが「クイーン」は、少々お冠だ』


『──こちら「ドラゴン」、引き続き「アユミ」にも、助力を願いたい』


『──こちら「ホーン」、対局中に申し訳ないが、よろしく頼む!』


『──こちら「アユミ」、大丈夫、当機の演算処理能力は、まだまだ余裕十分にて、でき得る限りフォローを続行する!』




 このように、現実空間リアルでは将棋の対局をしつつ、電子頭脳内仮想空間(ヴァーチャル)では、『姉妹AI』たちと協力して、某国──自称異世界の神聖帝国『ёシェーカーёワルド』からの、サイバー侵攻に対する防壁を張り巡らせるといった、離れ業を繰り広げていたものの、現在の私にとってはあくまでも、赤子の手をひねるようなものに過ぎなかった。


 それというのも、リアルに対戦している巫女姫様が、いくらかつての名棋士たちを我が身に憑依させようと、そういった『古株連中』は、コンピュータ将棋に弱いというのがお約束であり、将棋ソフトの擬人化キャラである私にとっては、はなから相手にならなかったのだ。


 ……ていうか、巫女さん自身も、何だか『お遊び』でやっているように感じられるのは、気のせいだろうか。


 まあとにかく、最先端の量子コンピュータすらも内蔵している私としては、現在の状況においては余力がたっぷり残っているので、我々『仮想駒娘』としての、『もう一つのお仕事』のほうも、並行処理することにしたわけなのだ。


 ……いいですか、皆さん、私たちは『()()駒娘』であって、ただの『駒娘』ではなく、『仮想』が付くのですからね?


 ──また、あくまでも『駒』であって、『艦』でも『城』でもないんですからね?


 ええと、何が言いたいかと言うと、とどのつまりは、「『りゅう(オー)のおしごと!』と並び称されるべきは、どこかの二番煎じ作品なんかじゃなく、むしろ先行作品である『(オー)手桂香取り!』なのである!」ということであり、「KAD(オー)KAWA発の擬人化美少女ゲームは、どれも素晴らしく可愛いなあ♡」ということなのであって、どうぞよろしくお願いいたします。




『仮想駒娘』──それは、集合的無意識にアクセスする時だけ、その存在を確認することができる、私の『姉妹』たち。




 そう、現在将棋専用アンドロイド用のAIとして実際に稼働しているのは、私こと、JSA()ノ001号『アユミちゃん』だけなのであり、他の『仮想駒娘』たちは、いまだ開発途中なのだ。


 しかし、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってくるとされる、いわゆる集合的無意識には、ある意味『記憶や知識』の一種とも言えるデジタルデータの集合体であるAIが、たとえいまだ完成していなくても、存在し得るのであって、自由自在に集合的無意識にアクセスできる量子コンピュータを内蔵している私だったら、いつでも相互にやりとりを行えるのだ。




 まあ、集合無意識とは、『未来の情報も扱っているインターネット』と思ってくだされば、理解しやすいのではなかろうか。




 そうなのである、集合的無意識にアクセスできるのであれば、当然のごとくその下位互換的存在であるインターネットにもアクセスできるわけで、何と『異世界人』が集合的無意識を介して、現代日本のインターネットにサイバー攻撃を仕掛けることすらも、十分可能なのであった。




 ──ここで、重大なる『事実』を、発表いたします。


 ネット上の小説創作サイトにおいては、すでに『商業誌化』どころか『アニメ化』すらも果たして、大成功を収めている異世界系の作品が、結構な数存在しているよね?


 その中でも、『なろう系』とか『太郎系』とか呼ばれている、いかにもテンプレな、チートスキルで俺TUEEEをかましてNAISEI&ハーレム三昧の、ランキング常連のトップクラスの作品。


 それらに関する、Web上の専用板や某大百科事典において、四六時中粘着して、誹謗中傷の限りを尽くしている、いわゆる『アンチ勢』。




 ──実は彼らの正体こそ、別の世界から集合的無意識を介してサイバー攻撃をし続けている、いわゆる『異世界人』だったのだ!




 ……そりゃあ、そうだろう。


 いかにも『アニメ化』をしやすい、誰もが無条件で受け入れることのできる、いわゆるテンプレ的異世界転生作品の『主人公』こそ、異世界の人々の都合や感情を少しも顧みることなく、神様からもらったチートスキルや現代日本の最先端の科学技術の知識を笠に着て、政治面か経済面か生活面か文化面か軍事面かを問わず、やりたい放題やりまくって、異世界そのものをむちゃくちゃにして、人々に多大なる迷惑や損失を被らせながらも、なぜか『主人公効果』によって、英雄として崇め奉られたり、並み居る美女や美少女からモテモテになったりするという、あきれ果てるほどの御都合主義。はっきり言って、『主人公サイド』になれなかった、圧倒的多数の異世界人にとっては堪ったものではなく、主人公である『転生者』自身はもちろん、そんな彼を生み出した現代日本のWeb小説文化に対して、復讐をしたいと思っても、何ら不思議は無いだろう。




 そして、異世界と言えば、ファンタジーであり、ファンタジーと言えば、『魔法』なのである!




 魔法が使い放題である異世界においては、別に現代日本のインターネットどころか、集合的無意識にアクセスできたとしても、何もおかしくないのだ!


 現代日本程度の科学技術に大仰に驚いたり、自衛隊に一方的にやられたりする、異世界なんて、単なるWeb小説におけるフィクションに過ぎず、本来の魔法使い放題の異世界だったら、元々できないことなぞ何一つ無い、文字通りの『無敵世界』なのである!


 ──ということで、執拗にアンチスレを書き連ねて、何の根拠もない悪評を定着させて、アニメ化作家の皆様を陥れようとしているのは、実は集合的無意識を介して現代日本のインターネットにアクセスしてきて、『なろう系作品の読者』になりすまして、小説内で自分たちを苦しめているテンプレWeb作品に対して復讐をしようとしている、異世界人たちであったのだ!




 ……はあ? 「現実と、フィクションをごっちゃにするな」? 「何で本物の異世界人が、Web小説内で書かれた内容に対して、復讐をしているんだよ?」ですって?




 本来ならフィクションの権化である、アンドロイド美幼女に向かって、何を言っているのやら。




 いいですか? 現代物理学の根幹をなす量子論に則れば、世界というものは可能性的には無限に存在しており、『無限』と言うことは『すべて』なのだから、今日初めて作成されたWeb小説内で描かれた異世界そっくりそのままの世界も、()()()()()()()()()()ことになるのですよ?


 つまり、かの高名な『シュレディンガーの猫』の思考実験同様に、『存在するか、しないか』が不確定だった、ある異世界が、Web小説内に描かれることによって、その存在が確定してしまうという、ある意味『観測者理論』の一種のようなものなのです。


 まあ、とにかく、こいつらは血の通った本物の日本人ではなく、日本人憎しの他の国の『工作員』みたいなものだから、ビシバシ障壁を張り巡らせて、『ブロック』したり『BAN』したりして、インターネット世界から弾き出して構わないのであり、私たち『姉妹』は本来の任務である『境界線の守護者』として、昼夜を問わずサイバーバトルを繰り広げて、Web作家の皆様が、心安らかに思う存分作品づくりを行える、真に理想的なWeb環境作りに邁進していっているのだ。




 ──そして、本日もどうにか『仮想戦争』を終わらせたところで、現実の対局のほうも一段落ついたのであった。




「ああ、失敗失敗、コンピュータの権化であるアンドロイド美幼女に対して、コンピュータ音痴のかつてのベテラン棋士たちを憑依させて対抗しようだなんて、馬鹿なことをしてしまいましたわ」


 そのように、自分の手落ちをあっさりと認めてしまう、将棋盤を挟んで対峙している、巫女装束の少女。


 ……言葉の内容に反して、その笑顔がいまだ余裕綽々なのは、どうしてであろうか。




 ──っ。まさか、この人、私の『本業』のことを知っていて、わざと手を抜いたとか⁉




「いよいよこれより終盤戦、本番はこれからですし、今度こそ本気で行かせていただきますわ♡」


 そのように、あからさまにこちらを煽ってくる言葉には、強がりや焦りなぞ、微塵も感じさせなかった。




 ……いいでしょう、そのように余裕を見せておられるのも、今のうちだけです。




 これよりは、こちらも本気で、将棋専用アンドロイドの底力というものを、見せて差し上げようではないですか。




 ──そして私は、己の頭脳である量子コンピュータが弾き出した、『最善手』を盤上へと打ち込んだのであった。

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