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第149話、将棋ラノベで、ロリときたら、次はおねショタかヤンデレだよね♡(その17)

「……正確無比な完全なる『未来予測』を、実現できるですって?」




 毎度お馴染み、前回のラストでもたらされた、現役(りゅう)おうであられるお師匠様のパワーワードに、これまた毎度のことながら極愕然となる、僕こと奨励会三段のDS(男子小学生)きんだいちゅうショウであったが、今回に限っては物申さずにはおられなかった。




「──いやいや、師匠、『正確無比な完全なる未来予測』なんて、『ラプラスのあく』などという、三流SFミステリィあたりで大人気な時代錯誤キャラがもてはやされていた、古典物理学の時代ならともかく、『この現実世界の未来には無限の可能性がある』ことを根本原理としている、量子論に代表される現代物理学においては、完全に否定されているんじゃなかったのですか⁉」




 すると、弟子のガチの糾弾の言葉に気を損ねるどころか、むしろ自らあっけなく訂正の言葉を付け加える、すぐ目と鼻の先の青年棋士。


「ああ、これは少々、言葉が足りなかったようだな。『完全なる未来予測』と言っても、古典物理学で言うところの、『的中率100%の()()()()()未来の予測』なんかでは無く、現代物理学に基づく量子コンピュータならではの、『()()()()未来の可能性の予測計算シミュレーション』なのだよ」


「へ? たった一つの絶対解ではなくて、すべての可能性の予測計算シミュレーションですって?」




「言ったろう? 『形ある粒子』と『形なき波』との二つの性質を常に同時に有する量子は、常に一瞬後の未来の無限の形態と位置とが重なり合っている状態にあると。しかも量子とはこの世界そのもの──すなわち、森羅万象を構成する物理量の最小単位であるからして、量子の無限の未来の可能性とはすなわち、世界の無限の未来の可能性そのものなのであり、その世界も単なるこの目の前の現在の世界のみならず、過去や未来や異世界等を問わない、文字通りの『すべての世界』なのであって、まさしく『ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の記憶と知識』が集まってくるとされる、集合的無意識そのものとも言えて、つまり量子は、常に集合的無意識にアクセスをしているようなものゆえに、その量子の性質を有する量子コンピュータが、未来の無限の可能性をすべて予測計算シミュレーションできることは、当然の仕儀に他ならないのだよ」




 ……うん、長々と語っていただいておいて何だが、つまりは三流SF小説とかでよくある、「量子コンピュータさえ登場させておけば、何でもアリ☆」を、論理的に理由付けしただけの話か。


「ええと、理屈については一応のところ納得(したことに)いたしましたが、『すべての未来を予測』するって、結局どういったメリットやアドバンテージがあるのですか? やはり未来予測ってのは、もはや時代錯誤の『おとぎ話キャラ』レベルとはいえ、『ラプラスの悪魔』なんかが得意とした『唯一絶対の未来予測』のほうが、好ましいと思うのですけど?」


「ほう、そうかね? だったらこっちから聞きたいんだけど、もしも君が、小さいとはいえ一つの村を管轄している、『神様』であるとして、農作物を作っている村人から、明日の天候いかんによっては作物の成長が大きく左右されるから、是非とも明日の天気を教えてくれと言われた時、ちゃんと答えてあげるかい?」


「は? 僕が神様であったとしての話ですか? いや、僕なんかが、そんな大それた立場になるなんて、とても畏れ多いことなんですけど、せっかく村人が自分のことを慕って尋ねてきているんだったら、真摯に解答すると思いますけどねえ。──特に明日の『天気予報』なんて、神様にとっては造作も無いことでしょうから」


「ほう、そうかね? 私だったら、絶対にごめんだがね」


「えっ、何でです?」




「だって、もしもその、『明日の天気()()』が、()()()()()()()()困るだろう? 仮にそんなことになったら、神様としての面目丸つぶれであり、その時点ですべての村人の信頼を失い、もはや神様失格となって、下手すると『名も無き化物』に引きずり下ろされかねないだろうよ」




 ──っ。


「……か、神様が、明日の天気予報を、外してしまうですって⁉」




「これまで何度も何度も言ってきたように、何よりも『未来には無限の可能性がある』とする現代物理学においては、『唯一絶対の未来予測』なぞ、完全に否定されており、たとえ神様であろうと、明日の天気を100%的中させることなんて、絶対に不可能なのだよ。いまだアインシュタインを崇拝している時代錯誤の(虎の威を借りた)権威主義者たちには悪いが、『たとえ神様でもサイコロを振らないと、ほんの子供向けのゲームすらもできやしない』のだよw 何せ神様とはまさしく量子コンピュータ的な存在なのであって、『全知ではあるが全能では無い』のだからな。──しかしこれは逆に言えば、神様同然の全知を実現できる量子コンピュータであれば、未来の無限の可能性をすべて予測計算シミュレーションできるわけであって、むしろ『唯一絶対の解答』なんか初めから求めようとはせず、とにかく『すべての解答』を弾き出しておけばいいんだよ。なぜなら『すべて』と言うことは、その中には必ず、求めるべき『正解』も含まれているのだからね」




 あ。


 そ、そうか、『すべて』の中には当然、『当たりくじ』も入っているってことか!


 ……いや、待てよ?


「師匠、その理論だったら、『正解』だけでは無く『不正解』も──天気予報で言えば、『晴れる』可能性だけでは無く、『雨が降る』可能性も入っていることになって、未来予測的には意味が無いのでは?」


「そんなことは無いぞ? すべての可能性を算出できるとしたら、その算出したデータを集計加工することによって、明日晴れる確率と雨が降る確率とを比較して、例えば降水確率が30%以上あること等を、正確に予言することだってできるじゃないか?」


「降水確率30%って、天気予報かよ⁉」




「そうだよ、天気予報だよ? なぜなら天気予報こそが、現時点において最も理想的な、『未来予測システム』とも呼び得るのだからね」




 は?


「て、天気予報が、最も理想的な未来予測ですってえ⁉」




「何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も言うようだが、『唯一絶対の未来予測』なんか絶対に不可能なんだから、明日の天気の()()()()において、『晴天の場合は33%で、雨天の場合は33%で、曇天の場合は33%で、その他(季節外れの降雹等の)天変地異の場合は1%』といったふうに、すべてのパターンにおいて実現する場合の確率を算出するのは、真に理想的な在り方なんだ。しかもこの計算処理に量子コンピュータを用いれば、各パラメータごとに更に精緻な確率を算出できるわけで、万が一にも外れてしまっては元も子もなくなる、『たった一つだけの未来予測』なんかよりも、この上なく現実的かつ論理的な、未来予測の究極的な姿とも言い得るのさ」




 うおっ、言われてみれば、確かにそうじゃん。


 特に、()()()()未来予測と言われれば、これ以外無いじゃん。


 すげえ、天気予報、すげえ!


 そうかあ、天気予報こそ、真に理想的な未来予測だったんだ!




「──しかも、忘れてもらっちゃ困るが、アユミちゃんは将棋専用の自律思考型アンドロイドであるわけだけど、将棋の対局において、その時点から以降の盤面の行方について、すべての可能性パターン予測計算シミュレーションできる量子コンピュータを、いつでも利用できるということが、どれ程のアドバンテージであるのか、奨励会三段である君には言うまでも無いだろう?」




 ──‼


「それってもしかしなくても、ここ一番の勝負所において、これからの展開を、全パターン漏れなく予測計算シミュレーションできると言うことですか⁉ もはや無敵じゃん!」


 そうなのである、最近流行りの将棋ラノベや将棋漫画をご覧になればおわかりかと思うが、それぞれの作品の主人公やその好敵手等の、自他共に認める『天才棋士』ともなれば、ここ一番の勝負所から以降の展開を、まるで超高性能のコンピュータであるかのごとく、ほぼすべて正確に読み取ることができることになっているが、もちろん現実にはそんな(文字通りに)漫画的なことができるわけがなく、天才であるほど、自分の『読み』が完璧であるか、何か見落としていることが無いか、常に苦悩し続けるといったパターンの繰り返しなのであり、それなのに本当に『すべてのパターンを予測計算シミュレーションできる』となれば、誇張でも何でもなくまさしくこれぞ、すべてのプロ棋士の夢を叶えてしまったと言っても過言では無いのだ!




「……ちょっと待ってください、師匠、だったらこれから行おうとしている、アユミちゃんと、特別ゲストの本来別の作品のヒロインである『()の巫女姫』さんとの勝負は、もはやこの時点において、まさしく『勝負にならない』ということではありませんか⁉」




 いやいや、そんなこと、わざわざお越しいただいた、他の作品のヒロイン様に対して、あまりにも失礼ではありませんか⁉


 そんなあまりにも至極当然な弟子の危惧に対して、まったく動じること無く、あっさりと言ってのける師匠様。




「うふふふふ、そうは問屋が卸すかな? 実はそこのところを是非とも君自身の目で確かめてもらうためにこそ、この対局をセッティングしたわけなのだよ。──まあせいぜい、『()の巫女姫』殿の真の力というものを、思い知るがいい」

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