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第146話、将棋ラノベで、ロリときたら、次はおねショタかヤンデレだよね♡(その14)

「……つまり師匠は、たとえ『ありとあらゆる世界を夢見ながら眠り続けている』という、本来なら神様同然の超常なる存在であろうとも、僕たちのような普通の人間だってなり得るのだと、おっしゃりたいわけですか?」




 ──現在この時点に至るまでに、棋界の顔とも言える現役(りゅう)おうにして僕のお師匠様から聞かされた、数々のトンデモ理論について、僕こと奨励会三段のDS(男子小学生)きんだいちゅうショウは、以下のように箇条書き的にまとめてみた。




・自分たちの世界を夢として見ているなんて言うと、一般的な感覚においては、まさしく『神』にも等しき超越的存在と見なしがちである。


・しかしその『神様』は、実のところはただ単に夢を見ているだけに過ぎないのだから、僕たち同様に、ごく普通の人間であっても構わないのだ。


・むしろ僕たちのほうが、そんなの普通の人たちにとっては、自分が見ている夢の中の架空の人物たち──わかりやすく例え直せば、『ゲームの中のNPC』みたいな、()()()()()()()()存在でしかないわけなのである。


・また、こういった『夢の主体』的存在に対しては、僕たち『夢の中の存在』側としては、『女神様』や『龍神』あたりをイメージしがちだが、彼らがそれぞれ自分自身の世界で目覚めた場合、そこは当然女神や龍神が当たり前に存在している世界であるはずだから、僕たちの世界を夢見ていた女神や龍神も別に特別な存在などではなく、()()()()()女神や竜神のうちの一柱ひとりでしか無いだろう。


・実際最近のWeb小説の類いにおいては、現代日本人を異世界に転生させるといった、まさしく『超越者』そのものの女神様が、いわゆる『天界』等の彼女自身の所属世界においては、『新人OL』的な扱いを受けていて、他の先輩女神にヘコヘコへりくだってばかりいるといったパターンのやつも、少なからず見受けられるところであった。




 つまり、結論としては、もし僕たちの現実世界を夢として見ながら眠り続けている者がいたとして、たとえそれが人間であろうが女神であろうが竜神であろうが、彼ら自身が所属する世界においては、文字通りに神様的な超越者なぞではなく、ごく普通の存在に過ぎない──と言うことになろう。


 ……そのような考えに基づいての冒頭の台詞だったのが、当のお師匠様の口から返ってきたのは、あまりにも予想外のものであったのだ。




「──いや、確かに(多世界解釈量子論に則れば)無限に存在し得る『世界の夢』を見ているのは、それぞれ普通の人間に過ぎないが、なにがしかの特定の一個人などでは無く、ありとあらゆる世界にとってのいわゆる『夢の主体』とも呼び得る存在とは、むしろ『集合的存在』なんだよ」




 ………………………は?


「な、何ですか、集合的存在って? 夢というものは、個々人が見るものでしょうが⁉」


 せっかく僕なりにわかりかけてきたつもりだったのに、再び混沌の深淵へとたたき落とすかのようなお師匠様の謎ワードに、堪りかねて食ってかかれば、


 とどめとばかりに、究極の爆弾発言をぶちかます、龍王ナーガラージャ様。





「というか、この我々の現実世界を始めとして、『ありとあらゆる世界を夢として見ながら眠り続けている者』──いわゆる『夢の主体』なんて、けして確固として()()()()()()()()んだ」




 ──はああああああああああああああああああああ⁉


「これまで散々、『夢の主体』こそ最も神様らしい存在だとか、その正体はごく普通の人間に過ぎないのだとか、わけのわからないことを言ってきた癖に、ここに至ってその存在そのものを全否定するなんて、一体どういう了見なんですか⁉」


 ──僕は、抗議した。


 ──声高に、抗議した。


 ──それは必死に、抗議した。




 だってこんな『ちゃぶ台返し』、読者様には、絶対に受け容れてもらえないもの!




「……ああ、悪い悪い、ちょっと説明が、足りなかったかな?」


 ちょっとじゃ無いよ! これまでの方向性とは、完全に真逆になっているじゃん⁉


「君が戸惑うのも無理は無いよ、何せ『夢の主体』がただの人間に過ぎないというのは、あくまでも当の『夢の主体』側を視点とした場合の話なのであって、『夢の主体』などといった個人なぞ存在せず、集合体的存在でしかないというのは、現在『夢の主体』が見ている夢の世界の中にいる者を視点とした場合の話なのだからな。事によっては180度ほど、見方が変わってもおかしくはないんだ」


「なっ、現在夢の中にいる者の視点ですって?」




「現在夢の中にいる者にとっては、『夢の主体』に該当するのが何者であるかなんて、けして確定しておらず、ある意味無数の人物の集合体のようなものであるのも、当然のことに過ぎないのだ。何せこれまで何度も述べたように、夢から覚めた時、その時の『自分』が何者かになるかは定まっておらず、まさに無限の可能性があるのだからな。現在地球上に存在している人類やその他の生物はもちろん、戦国武将等の過去の人物でもまったく未知なる未来の人物でもいいし、場合によっては並行世界や異世界の人物でも構わないし──となると更には、『並行世界=SF小説』や『異世界=Web小説』といった、『お約束的構図』から、創作物中の存在であろうとも、別におかしくは無くなるのだよ」




「ちょっ、全地球規模で誰でもいいとか過去や未来の人物でもいいとかでも大概なのに、並行世界や異世界はおろか、創作物の登場人物でもいいなんて、そんな馬鹿な⁉」




「だがしかし、現代物理学の中核をなす量子論が、『世界というものには無限の可能性があり得る』ことを保証している限り、この現実世界が、我々が創作物の登場人物だと見なしている者が見ている夢であるかも知れない可能性は、けして否定できなじゃないか?」




 ──っ。


 そ、そりゃあ、『可能性の話』と言われれば、どんな『トンデモ話』であろうとも、頭ごなしに否定することはできなくなるじゃないか?


「──ということで、我々のような現在夢の世界の中にいるかも知れない者たちの視点からすれば、『夢の主体』なるものは、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在が、すべて該当する可能性があり得ることになるのだよ」


 え。


「ちょ、ちょっと、待ってください、それって⁉」




「その通り、まさしくSF小説やラノベやWeb小説等に登場してくる、ほぼすべての超常現象を実現可能とするためのかなめである、『集合的無意識』そのものなのさ」




 ──‼




「つまり、『ありとあらゆる世界を夢として見ながら眠り続けている』と言われる『夢の主体』──すなわち、最も理想的かつ現実的な『神様』とは、我々ただの人間の『記憶や知識』の集合体である集合的無意識を、具象化したようなものなのだよ」

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