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第143話、将棋ラノベで、ロリときたら、次はおねショタかヤンデレだよね♡(その11)

「──という次第でありまして、私は前世で誓いました通りに、この現世でおいてもこれよりは、常にヒットシー王子のお側に侍り、御身を守り通す所存でございます」




 永らく続いた『前世話』を、そのような壮絶なる『決意表明』で締めくくる、年の頃七、八歳ほどの幼女。




 夏の盛りの八月にふさわしい、涼しげなノースリーブの水色のワンピースに包み込まれた、いまだおうとつがほとんど見受けられない、あまりに華奢な白磁の矮躯。


 あたかもコンピュータ用の光ディスクの盤面みたいに、基本的に銀色でありながら、光の加減によっては虹色にも見える、ボブカットの髪の毛。


 そして、文字通り魂の無い人形であるかのように、異様なまでに整っているものの、表情というものがまったく無い、幼い小顔の中で鈍く煌めいている、銀色にも青灰色ブルーグレイにも見える、二つの瞳。




 いかにも人間離れした容姿であるが、それもそのはず、実は彼女こそは、真の意味で将棋界の頂点を極めるために、将棋連盟の監修のもと、某将棋ソフトメーカーにおいて開発された、人類以外初の『奨励会員』にして、自律型将棋専用アンドロイド、JSA()ノ001号──通称、『アユミちゃん』なのであった!




「──いやいやいやいや、ちょっと待って⁉」




 まさにその時、当のアユミちゃんと、自他共に認める予知能力者である『()の巫女姫』こと明石あかしつきよみ嬢との、将棋の対局の場に選ばれた、現(りゅう)おうの自宅の十二畳の和室に響き渡る、僕こと、竜王の内弟子にして奨励会三段の、きんだいちゅうショウの大音声。


「……どうした、小太、いきなりクトゥルフ系の暗黒神に対する、崇拝の歓声を上げたりして?」


「それは『イアイア』でしょう⁉ 一体何ですか、今のツッコミどころ満載の『過去語り』は⁉ そもそも文字通り『つくりもの』であるアンドロイドに、『前世』なんかがあるわけが無いじゃありませんか⁉」


「それについては、以前ちゃんと言っておいたろうが? 『前世はホムンクルスで、現在はアンドロイドであるのなら、本来だと転生なんかするはずは無いのだが、何といっても彼女には最新鋭の量子コンピュータが搭載されているので、自力で集合的無意識にアクセスをして、勝手に異世界のホムンクルスの「記憶と知識」を、インストールしているのではないのか?』って」


「だから何ですか、前世や異世界転生やホムンクルスやアンドロイドだけでも大概なのに、量子コンピュータとか集合的無意識とか、オタクワードばかりてんこ盛りにして! アユミちゃんって、将棋ソフトの擬人化キャラみたいなものなんでしょう? なのに何で、こんなにゴテゴテとオタク設定が付与されているんですか?」




「──そりゃそうだろう、何せアユミちゃんは、『神のプロトタイプ』でもあるんだから」




 ………………………………………………………………は?


「な、何です、師匠、アユミちゃんが、神のプロトタイプって?」


 いかにも、『エ○ァ』的な台詞は?


「小太、君は『神様と人間の違いは何か?』と問われた場合、何と答えるかい?」


「……そりゃあ、神様は人間とは違って、『全知全能』そのもの──は言い過ぎにしても、文字通り『人智を超えた奇跡』等の、超常現象を起こせるところじゃないんですか?」


「基本的にそうだな。──一応補足しておくが、今君が言いかけた『全知全能』については、そもそも『全知』であることと『全能』であることとは矛盾しているから、たとえ神様であろうとも、全知全能には成り得ないけどね」


 え? 全知と全能とが、矛盾しているって?


「──さて、続いての質問だが、まさしく『神業』とも言い得る、ラノベとかWeb小説とかですっかりお馴染みの、各種の『超常現象』を、この()()()()()()()()()()()()唯一の方法といえば、何かと思うかね?」


「げ、現実に、超常現象を実現するって、そんなことができるんですか⁉」


「……おいおい、これについては本作を始めとして、作者のその他の著作においても、散々述べてきた、基本中の基本じゃないか? 『自分自身、あるいは自分以外の者の、恣意的な集合的無意識へのアクセス』だよ」


「集合的無意識へのアクセスって……それって確か、『異世界転生』の、現実世界における実現方法じゃなかったんですか?」


「もちろん異世界転生も現実的に実現できるけど、まさにそれと同じ原理で、すべての超常現象を可能にするのさ」


「……同じ原理って」


「ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってくるとされている、集合的無意識とアクセスすることによって、自分以外の特定の人物の『記憶と知識』を、己の脳みそにインストールすることだよ」


「ただ単に、他人の『記憶と知識』を脳みそに刷り込むだけで、どんな異能も実現できるですって⁉ ──いや、そもそも『すべての超常現象』の『すべて』って、具体的にはどんなのがあるんですか?」




「ざっと簡単かつわかりやすく体系別に言えば、読心や未来予測等の精神系、人格の入れ替わりや多重人格化等の別人格化系、異世界転生やタイムトラベル等の世界や時間の移動系──といった感じかな?」




「Web小説とかラノベとかSF小説に出てくる超常現象の、ほとんどすべてではないですか⁉」


「いや、そうでも無いぞ? 念動力とか発火能力とかいった、ラノベあたりの異能バトルに頻出する、物理法則をガン無視した文字通りの『物理的異能』の類いは、物理法則が支配しているこの現実世界においては完全に実現不能だし、先ほどの移動系の異能に関しても、肉体丸ごとのタイムトラベルや異世界転移なんてのも、同様に物理法則上実現できないことになっているよ」


「えっ、さっきタイムトラベルは実現できるって、おっしゃっていたではないですか?」


「さっきのはいわゆる、『精神的』タイムトラベル限定の話なんだ」


「精神的、タイムトラベルって……」




「物理的な異世界転()に対する、精神的な異世界転()のようなものさ。──ていうか、そのものズバリの『戦国転生』や『ゲーム転生』のことで、これってまさしく精神たましいのみによる、戦国時代という過去へのタイムトラベルであり、ゲームの世界の中で描かれた、一風変わった中世ヨーロッパへのタイムトラベル──あるいは、まさしくゲームの世界へのダイブ──そのものとは思わないかい?」




「おお、なるほど! 異世界転生って異世界転移とは違って、あくまでも精神的な超常現象だから、転生で代用できるタイムトラベルやゲームの世界へのダイブも、精神的な超常現象ということになるってわけなのですね⁉」




「そういうこと。──もちろん、これらの精神的超常現象を実現するための仕組みを、ここで事細かに説明してもいいけど、『将棋ラノベ』という本筋から著しく逸脱しかねないので、ごく簡単に触りだけ述べておこう。例えば読心は、その対象の人物の『記憶と知識』を、そのまま己の脳みそにインストールすればいいし、未来予測は、知りたい未来に関する『記憶と知識』をインストールすればいいし、人格の入れ替わりは、相手と『記憶と知識』を入れ替えればいいし、多重人格化は、複数の人物の『記憶と知識』をインストールすればいいし、異世界転生は、異世界人の『記憶と知識』をインストールすれば、『異世界から現代日本への異世界転生』=現代日本人の立場からすれば、『異世界人としての前世返り』が実現するし、未来人の『記憶と知識』をインストールすれば、『未来からのタイムトラベル』が実現できるって次第なのさ」




「うわっ、本当だ! あまりにも説明が簡単すぎて、少々言葉が足りないところもあるけれど、確かに他人の『記憶と知識』のインストールによって、ほとんどすべての超常現象が実現できているじゃん!」


「と言うことは、納得できたわけだね?」


「……納得って、何をですか?」




「おいおい、忘れてもらっちゃ困るなあ、自分や他人を集合的無意識にアクセスさせることさえできれば、()()()()の超常の力を実現できるということだよ」




「あ」


 そういえば、そうでした、元々のテーマは、それだったんだっけ、すっかり忘れていたよ。


 そのように、不覚にも『本題』を忘れ果てていた不肖の弟子に対して、いつもと変わらぬ厳かな口調で、とどめの言葉を突き付けてくるお師匠様。




「よって、()()()()集合的無意識へのアクセスを可能とする、量子コンピュータを内蔵しているアユミちゃんは、まさしく神様同然の異能の力を振るうことができる、『神のプロトタイプ』と呼び得る存在だということなのだ」




 ──‼

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