第141話、【夏のホラー2019終了記念】本当は怖い将棋ラノベ⁉(後編)
「──ゆ、勇者様、どうなされたのですか⁉」
「小太、さっきからうるさいぞ? いくら対局が終わったからといって、場をわきまえたまえ!」
「おーよしよし、王子、怖くはありませんからねえ〜。さあ、私の胸に飛び込んでおいでなさい♡」
「……さすがは悪役令嬢、こんな些細なチャンスでも、ちゃっかりとご自分に有利な方向に持っていこうとは。同じヒロインとして、勉強になりますわ♫」
「──いや、何であなたたち全員、そんなに落ち着いていられるんですか⁉ 将棋の対局中に、幼女の首がポロリと取れてしまうのみならず、まさにその本人の生首が、平気で微笑みながらしゃべっているのですよ⁉」
「……あ、あの、当の本人である私に面と向かって、『何でおまえはそんなに平気で笑っていられるんだよw』とか、『女の子に対して絶対言ってはならぬ台詞』そのままなことを言われましても」
「そもそも別に、騒ぐ必要も無いというか」
「なぜに王子は、そんなに焦りまくっておられるのか」
「こちらのほうが、伺いたいくらいですわよねえ?」
「「「「──だって、アンドロイドの首が突然取れるのは、むしろ『お約束』のようなものだし」」」」
………………あ。
「そ、そうか、アユミちゃん──いわゆる『JSA歩ノ001号』って、日本将棋連盟と将棋ソフトメーカーが、総力を尽くして開発に成功した、史上初の自律思考型将棋専用アンドロイドだったっけ⁉」
「……いや、むしろどうして、そんな基本的なキャラ設定を、忘れてしまえるのですか?」
「それでなくても、あの『昭和嗜好』な作者のことだ、『ア○レちゃん』や『R・田中 ○郎』ネタをやろうとするのは、当然予測範囲内だろうが?」
「というか、あの『艦○れ』にわかエアプのこと、『首ちょんぱ○娘』こと『初○』さんの影響かも知れませんわよ?」
「──いえいえそれよりも、作者が【夏のホラー2019終了記念】特別編として、強引にホラーテイストに持っていきたかったから、あえて主人公さんの記憶を曖昧にしたとも、考えられますけどね♫」
「「「「それだ!」」」」
本来別の作品のヒロインさんによる、(少々メタ気味だが)適切なるご意見によって、途端に意見の一致を見る、混乱の坩堝と化していた、即席対局場。
「……くそう、あのアホ作者があ、少しはストーリーの前後関係というものを、考えろよ! 主人公である僕がいきなり、主要キャラの重要なる属性を忘れてしまうなんて、普通はあり得ないだろうが⁉」
「おそらく、タイトルにもあるし、さっき巫女殿も言われていたように、今回は【夏のホラー2019終了記念】の特別回として、前後のエピソードとは無関係の、『独立エピソード』扱いなのではないのですか?」
「うわあ、それでいて、いかにも【前編】の冒頭部を前々回からの続きのように装っていたとしたら、本編の続編を楽しみにされていた読者様に対して、配慮が足りないんじゃないのか?」
「まあ、昨日は一日中かかり切りで、正式な【夏のホラー2019】エントリー作品のほうの、最終シリーズ全六話の作成に忙殺されていたので、本作のほうは本腰を入れて本編を進める余裕が無かったので、こういういった番外編でお茶を濁すしか無かったのは、わかる気もしますけどねえ…………でもそれにしても、そもそもこれって、ホラー小説だとしても、あまりにもお粗末じゃないんですかねえ?」
……いや、そこまで言ってしまったら、いくら何でも、作者が可哀想だろうが?
そのように、(すでに首を胴体へと合体完了したアユミちゃんをも含む)『本編』組が、何とも言えない雰囲気に包まれて、言葉を失いうつむいていると、『別の作品のヒロイン』ならではの気安さからか、いかにも空気を読めないノリで、
──とどめの一言を言い放つ、巫女姫さんであった☆
「いやいや、皆さん、元々ここに集いし一同は、予知能力の巫女姫という別作品のキャラである私を別にしても、基本的に全員異世界転生者で、しかも前世はファンタジーワールドにおける、『王子』様に、『悪役令嬢兼魔王兼ケルベロス』に、『ホムンクルス』に、『龍王』様という、あまりにも非現実的なメンバー揃いなんだから、この世界の科学技術からしたら、そう遠くない未来に実現できそうな、自律指向型将棋専用アンドロイドの首が取れるくらい、別に大したことじゃないのではありませんの?」
「「「「あ」」」」
……そういえば、そうでした。
「……つまり、このメンバーでホラー小説をやろうなんて、どだい無理な話だったわけですのね?」
「ということは、やはり今回は独立エピソードで、前後のエピソードとは無関係ってことになるのか……」




