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第122話、あたし、メリーさん、今……。【夏のホラー・NOT病院編】(その5)

「……人の脳みそにどんな『記憶や知識』だろうが、意のままに刷り込むことができる超常的存在、『なろうの女神』ですって?」




 幼なじみのDK(男子高校生)からもたらされた、あまりの『パワーワード』のてんこ盛りに、完全に度肝を抜かれてしまう、いじめの首謀者なJC(女子中学生)の私。




「──いやいや、確かにパワーワードてんこ盛りだけど、私の質問に対する回答になってないから! ようやくここに来て『なろうの女神』と呼ばれるキャラが登場して、『タイトル回収』は済んだけど、そもそもどうしてそのJK(女子高生)の先輩に、『人の脳みそにどんな「記憶や知識」だろうが意のままに刷り込める』などといった、確かに女神だか魔女(クラス)とも言える、超常的な力があるわけなのよ⁉」




「むっ?」


 私の渾身の反駁に、ここに来て初めて眉をしかめ、余裕の笑みを消し去るキリヤ君。


「……それ、やはり、説明しないと、駄目かい?」


「えっ、そりゃあ当然、駄目だから言っているんだけど、何でそんなこと、わざわざ聞き返すのよ?」


「いや、これって、これまで『なろうの女神』関連の騒動(イベント)で、散々語り尽くしてきたことだから、二度手間になっちゃうんだよねえ……」


「──何その、何となくほんのりと、『メタ』的な理由は⁉」


「……う〜ん、メタ的と言えば、ちょうど公式の『夏のホラー2019』エントリー作品のほうでも、同じ説明をやっているんじゃないかなあ?」


「だから、そっちを読めと? いくら同じホラー系作品とはいえ、それはないだろう⁉」


「でもさあ、別にこっちは『夏のホラー』正式参加作品ではなく、作者独自の作品なんだから、少々のメタや説明の省略は、許されるんじゃないかなあ?」


「──いいからさっさと、説明を開始しろ! それから、これ以上メタ語りは禁止です! ただでさえ某映画のせいで、メタに対して、批判が集中しているというのに!」


「……はいはい、わかりましたよ。ただし今回は、読者様にもわかりやすくするように、箇条書きで説明するね」




・人の脳みそに、外部から別の人間の『記憶や知識』をインストールして、脳に錯覚させることによって、幽霊や都市伝説を見たり触れたりできるようにするには、『集合的無意識とのアクセス』方式が、最も現実的かつ効果的である。


・集合的無意識とは、スイスが生んだ超天才心理学者である、カール=グスタフ=ユングが提唱した、過去の人間を含むすべての人間の深層心理は、すべて繋がり合っている『超自我領域』であり、よってここには過去か現在かを問わず、すべての人間の記憶や知識──すなわち『叡知』が集まっているという、言い換えればご存じ『集合知』とも呼べ得る、まさしく現代における『インターネット』を先取りしたような概念であった。


・実はこれは、量子論で言うところの、すべての物質の最小構成要素であり、存在自体が『確率的存在』であるという量子が有している、現在にいながらにして、一瞬後の無限の未来の可能性とアクセスすることのできる特殊な性質──いわゆる『重ね合わせ現象』を、心理学に則して言い直したようなものであり、つまり現代物理学に則れば、集合的無意識には、過去や未来どころか、未来をも含む、あらゆる人類の『記憶と知識(=叡知)』が集まっていることになる。


・更には、量子論の中でも多世界解釈則れば、量子のアクセスできる未来の可能性の中には、『()()()()無限に存在し得ることになる、すべての平行世界における未来の可能性』も含まれることになるので、集合的無意識の中には、すべての世界のすべての時代の人類の『記憶と知識(=叡知)』が含まれていることになるのだ。


・よって集合的無意識とアクセスさえできれば、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』とアクセスできることになる。


・そこには当然、『過去の記憶や知識』の一種である、『すでに亡くなった者に関する記憶や知識』も含まれていることになるから、故人の在りし日の姿を収めた『記憶や知識』を直接脳みそに刷り込めば、その者は何と、『幽霊』を見たり触れたりできるようになるのだ。


・また、この『記憶や知識』=『概念』については、本来実体が存在しないはずの、創作物のキャラクターや神様等の信仰の対象なんかも含まれるので、『都市伝説』的存在を幽霊同様に、見たり触れたりさせるようにすることも可能である。




「──とまあ、こういうわけで、集合的無意識にさえアクセスできれば、どのような『記憶や知識』でも──つまりは、どのような『概念』でも、脳みそに直接刷り込むことができるから、先ほどの『脳みそこそ最終的な感覚器官』論とも併せれば、幽霊だろうが都市伝説だろうが、見たり触れたりできるようになるわけなんだ。……ええと、ここまでで、何か質問があるかい?」


「──あるわよ! 当然じゃない!」


「ほう、何かな?」


「何その、集合的無意識とかいうのは? まず大前提として、そんなわけのわからないものが、本当に存在するはずが無いじゃない! 何が、全人類の間で繋がり合っている、超自我的領域よ、『人類補○計画』かよ⁉ 完全にオカルトじゃないの? 確かにインターネットなんて、ほぼ同様な存在かと思うけど、コレモンのネットジャンキーでもあるまいし、普通の人に幽霊なんかが見えてしまうまでの、『洗脳効果』があるわけ無いでしょう⁉」


「う〜ん、最近巷を騒がせているいろいろな事件の、直接的間接的原因を鑑みるに、インターネットの洗脳効果も、相当なものだと思うけどねえ…………まあ、それはともかくとして、さっきのはあくまでも『言葉の綾』であって、ネットと集合的無意識とが完全に一致するなんてことは、もちろん無いよ。過去や現在のデータはともかくとして、特に未来に関する情報は、かなり貧弱と言わざるを得ないからね」


「インターネットだってまだまだ及びもつかないのなら、現在において、集合的無意識に相当するものなんて、皆無じゃ無いの⁉」


「いやいや、それがあるんですよ。しかもおそらくは、人類の発祥とほぼ同時に存在していたと思われる、まさしく人類の叡知の結晶と呼び得るものが──しかも、インターネットなんかよりもよほど、簡単にアクセスできたりもしてね」


「へ? な、何よ、人類の発祥と同時期という、遙か太古の昔から存在している、ネットよりもお手軽にアクセスできるものって⁉」




 思わぬ言葉に面食らう私に向かって、むしろなぜだかさもうんざりした表情で、衝撃的な台詞を言い放つ、幼なじみの少年。




「……これまた、今まで何度も述べてきたことなんだけど、我々にとって最も身近な集合的無意識──すなわち、過去現在未来どころか、世界の別すら問わない、すべての人類の英知の結集──それこそは、まさしく世に言う『閃き』、そのものなのさ」

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