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第113話、本当は怖い、異世界転生⁉(その2)

「……は? 僕にスマホを介して電話をかけてきたのが、本物のあけでは無く、全然関係ない異世界人で、ただ単にすでに死んだはずの明美の、『記憶と知識』を持っているだけだって?」




「うん、そうだよ?」




 あまりにもトンデモ話をぶちかましながら、むしろ自慢げに、夏制服のブラウスがはち切れそうになるまで豊かな胸元を反らす、『異世界転生SF的考証クラブ』の超美人部長、たつエリカ先輩。


 それに対して、うっかり見とれそうになった僕ことがわあきひこであったが、すぐさま気を取り直して、猛烈に抗議していく。


「──いやいやいや、何ですか、生粋の異世界人が現代日本にスマホで音声通信をかけてくるとかって? それにあれは間違いなく、明美の声でしたよ? 僕が生まれながらに昵懇な幼なじみの声を、聞き間違えたりするものですか⁉」




「何で異世界人だったら、声が違っていると決めつけるのだ?」




 へ?


「あ、あの、それって、どういう……」


「異世界と言っても、いろいろあるんだから、この世界とはいわゆる『パラレルワールド』的な関係にあって、そこに存在している人物における家族関係とか交友関係等の基本的関係はほぼ同じでありながら、世界観自体が極端にファンタジー系に偏っているという、一種独特な世界であろうとも、ちゃんと異世界の範疇に含まれるのだからな。容姿や声質が君の幼なじみ殿そっくりそのままな異世界人に、当の幼なじみ殿の『記憶と知識』が()()インストールされることだって、可能性的には絶対あり得ないと言えないのだよ?」


「偶然て、いくら可能性の上での話とはいえ、そんなことが実際にあり得るなんて、とても思えないんですけど⁉」


「そうかい? 本物の異世界から、すでにお亡くなりになっている幼なじみ殿によって、本当に電話がかかってくるほうが、よほどあり得ないと思うんだけどねえ?」


「ぐっ…………あ、そうだ、そんなことよりも、そもそも異世界にスマホが存在していて、それと現代日本との間で、通信回線が繋がっていること自体が、あり得ないんじゃないですかねえ⁉」


「……やれやれ、()()何を言っているのかね?」


「え、今更、って……」




「これだけWeb小説において、異世界にスマホが持ち込まれているのだよ? 今時異世界にスマホが無いほうが、おかしいくらいだよ」




 ──いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。


「何その『超メタ理論』? 何でフィクションのWeb小説の中でスマホが登場したら、本物の異世界にもスマホが存在するようになるんですか⁉」


「君今、矛盾したことを言ったの、わかっている?」


「はい?」


「『()()()異世界』ということは、君はまさしく、無自覚とはいえ、異世界の実在を信じているということなのだよ?」


 ……あ。


「そこで聞きたいのだが、君にとっての『異世界』って、一体どういったイメージなのかい?」


「そ、そりゃあ、異世界と言えば、基本的に中世ヨーロッパ風の世界観で、魔法とかモンスターが実在していて、間違ってもスマホなんか存在していなくて──」




「うん、いかにもな『模範解答』だね? むしろそれこそが、『()()()()Web小説』に刷り込まれた、ステレオタイプな考え方とは思わないかい?」




 ──っ。


「いや、むしろそれでいいんだよ。Web小説を始めとする創作物フィクションから、異世界のイメージを学ばなくて、一体どこから学ぶって言うんだい? ひょっとして君、本物の異世界を見たことがあるとか、言い出すつもりじゃないだろうね?」


「ま、まさか、そんな!」


「そうだ、まさしく『まさか』だよな? ──つまりだね、我々現代日本人にとっての『異世界』とは、Web小説等の創作物フィクションに描かれている『異世界』以外、原則的にあり得ないのであり、その他に平行世界的なものが存在していたとしたら、当然、()()()()()()()()()ことになるだけだよ」


「べ、別の名前って?」


「現時点でも、いろいろあるぞ? 戦国転生とか乙女ゲーム転生とかVRMMOへのダイブとかな。──まあ、結局これらも、大きな枠組みとしては、異世界転生や異世界転移の範疇に組み込まれることになったんだがな」


 ……た、確かに。




「──それで、まさに最近においては、『スマホが普通に登場する異世界系Web小説』が流行っているので、すでに『スマホが存在する異世界』も、広い意味での『本物の異世界』の範疇に入っているというわけなのさ。実はこれは理論的にもちゃんと裏付けがあってね、現代物理学で言うところの多世界解釈量子論においては、()()()()()()()()()()()()とはいえ、世界というものは無限に存在し得るのだから、何とスマホが普通に存在している本物の異世界が存在していても、可能性の上では、けしてあり得ない話じゃなくなるんだよ」




 いや、多世界解釈量子論て、あれだろ? 我が国の三流SF小説家どもが、『パラレルワールドが実在すること』の根拠にしているという、トンデモ理論のことだよな。(偏見です)


「……う〜ん、そう言われても、異世界にスマホが存在して、しかも日本に電話をかけてくることができるなんて、どうしても信じられないんですよねえ」


 しかもその理由が、「すでに多数のWeb小説で描かれているから」とか言った、いい加減な理由じゃなあ。


「ああ、もちろん、たとえ素人のWeb作家とはいえ、『他の作品で登場したから』とか言った、人のふんどしで相撲をとるようなやり方は、けして許されないんだ。──そこにはちゃんと、『自分独自の理論』が必要になってくるんだよ」


「自分独自の理論、ですか?」




「さっき、異世界転生というものは、生粋の異世界人の脳みそに現代日本人の『記憶と知識』がインストールされることによって、実現されると言ったけど、これが一体どういった仕組みになっているかと言うと、実はかの高名な『ユング心理学』において、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まってくるとされている、いわゆる『集合的無意識』と呼ばれる超自我的精神領域が存在しているとされているのだが、これに何らかの形でアクセスすることによって、異世界人が現代日本人の『記憶と知識』を得ることだって十分あり得て、そしてそれには『スマートフォンに関する知識』が含まれていたって、別に不思議でも何でも無いわけじゃないか?」




 ──そ、それって⁉

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