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第105話、女教師、異世界に立つ!(パイロット版)後編

 ……そんな馬鹿な。


 今まさに私たちは、『命のやりとり』の、まっただ中だったのだぞ。


 特に野盗どもが、たかが『女の制止の声』ごときに、耳を貸すなんてことが、あるわけがないじゃないか。




 ──しかし実際、すべての荒くれ者が、まるで何かに怯えるようにして、身動き一つできなくなってしまっていたのだ。




 けして、威圧的どころか、感情的ですら、無かった。


 それでもその『声』には、抗いがたき『何か』が、秘められていたのだ。


 ──そのように、この場の全員が固唾を呑んで見守っている中で現れたのは、意外なこともにも、小柄なごく普通の女性であった。




「……は、『女教師』?」




 思わず、私の唇から漏れいずる、驚嘆のつぶやき声。


 年の頃は二十歳はたちがらみか、ショートボブの黒髪に縁取られた端整な小顔は、キリリと精悍に引き締まりながらも、眼光のみがこちらを射るように鋭く煌めいており、華奢なれど均整のとれた肢体を包み込む萌黄色のタイトミニのスーツは、帝城の大図書館の旧世紀のライブラリィ映像で垣間見た、『女教師』と呼ばれていた、一般庶民を対象とした教育者を彷彿とさせた。


「……な、何だ、この女?」


「突然現れて、邪魔しやがって!」


「何なら、おまえから、可愛がってやろうかあ?」


 ようやく我に返った野盗たちが、いまだ腰が引けつつも、「これ以上女なんぞに舐められて堪るか!」とでも言わんばかりに、安っぽい『男のプライド』を振りかざして、謎の女性を取り囲もうとしたところ、




「──スキル、『愛の鞭』」




「うわっ⁉」


「あべしっ!」


「だらあっ!」


 いきなり女性の右手に黒皮の鞭が出現するや、それをあたかも手足のごとく操り、野盗たちを一人残らず、瞬く間にたたき伏せたのであった。


 ──って、何それ、たった数行で、その神業は⁉




 この人まさか、『世紀末救世主』か何かなの⁉




「……何という素晴らしい、鞭さばきなのでしょう。まさしく『Sの女王様』、弟子入りしたいくらいですわあ♡」


 そんな鬼神そのままな有り様を、うっとりとした目で見つめているのは、言わずと知れた、ド変態クレイジーサイコレズの近衛騎士団長。


 ……おいっ、何で今度は舌なめずりしながら、私のほうに血走った瞳を向けてくるのだ⁉


 そのように、私こと亡国の姫騎士とその護衛騎士との主従が、相変わらず馬鹿なやりとりをしていると、


「いてててて…………ひいっ⁉」


 依然地面に尻餅をついたまま、うめき声を漏らしていた男のもとへと、ゆっくりと歩み寄る『女教師』。


「よ、寄るな! い、命だけは、助けてくれえええええ────え?」


 ──なっ⁉




 何とその時彼女は、男のほうへとかがみ込むや、そのむくつけき巨体を、優しくそっと抱きしめたのである。




「……大丈夫、安心しなさい。あなたは何も、悪くは無いの。悪いのはすべて、この乱れきった世界であり、間違った時代であり、腐りきった大人たちなの。あなたのことは、私がちゃんと『再教育』して、真人間にしてあげるわ。だからすべてを、この私に委ねなさい」


「……え、俺が、悪くは、無いだと?」


「ええ、誰だって本当は、正しいの。誰だって、正しいことだけを、行いたいと思っているの。だけど、世界や時代や為政者たちが間違っているから、あなたたち無辜な者たちまでも、間違ったことをやらざるを得なくなっているだけなのよ」


「悪いのは、世界や時代や大人たち、だって?」


「そうよ、その結果、こんな世紀末な世界になってしまい、『教育プログラム』が機能しなくなって、あなたたちを間違った道に追いやってしまったの。──だけど、安心して、私が──『先生』が、あなたたちを、『真に正しき者』として、再教育してあげるから!」


 まるで女神のごとき慈愛溢れる笑顔で、力強く宣言する、自称『先生』。


 その途端、ついに男どもの涙腺が、決壊してしまった。




「──うおおおおおおおおおっ!」


「そうなんだよ、誰かに言って欲しかったんだよ!」


「おまえは、悪くないって!」


「おまえは、間違っていないって!」


「悪いのは、時代だって!」


「世界であり、それを創った、大人たちだって!」


「「「俺たちも、『被害者』だって!!!」」」


「先生!」


「先生!」


「先生!」


「先生!」


「先生!」


「「「どうか俺たちを、導いてください!」」」




「ええ、もちろん、あなたたちを必ず、真に理想的な()()『大日本第三帝国民』へと、洗脳し鍛え抜いてあげますから、(昔の能なし海軍上層部が考え出した、ぼくの)最強戦艦大和級の大船に乗ったつもりでいなさい」




「「「──万歳! 先生、万歳! 大日本第三帝国、バンザーイ!!!」」」




 荒野に鳴り響く、野盗たちによる熱烈なる、「万歳」の連呼。


 呆気にとられる、キャラバン隊の商人たち。




 そんな中で、一人私だけが、『先生』を自称する女性から、強力な魔導力が放たれているのを、感知していた。




 ……何だ、これは? 『魅了』スキル?


 ──いや、そんなレベルでは無いぞ⁉


 何人なんぴとでも自ら従わざるを得ないほどの、魅惑に満ちた言葉と、カリスマ性溢れるたたずまい。




 まさしく、チート級スキル! まさかこいつ、『転生者』か⁉




 一人戦慄し続ける私を尻目に、今や野盗だけで無く、キャラバン隊をも含めて、次々と信奉者を生み出していく、『女教師』。




 ──そう。まさしくこれは、この乱れに乱れきった『世紀末異世界』を、鉄壁の規律と軍事力によって、瞬く間に統一を果たすことになる、かつての『魔王』の再来とも畏怖された、伝説の英雄『女教師』の、顕現の瞬間であったのだ。

※これはあくまでも実験的パイロット版ですので、続きは気が向いた時に投稿する予定です。


 ……などと言いながら、すでにアイディアを2、3本ほど、思いついていたりして。

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