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第102話、おまえが(私の)パパになるんだよ⁉(その28)

「ふふ、『なろう系小説の権化』とは、よく言ったものだね、あらゆる世界において異世界転生を司る、女神という概念の集合体──人呼んで、『なろうの女神』というのは、どうだい?」


「──つうかそもそも、異世界転生を司る女神が、精神体のみとはいえ、未来からのタイムトラベルを実行したりできるのですか?」




「……君は私の話を、ちゃんと聞いていたのかね? タイムトラベルにしろ異世界転生にしろ、タイムトラベラーでも転生者でもなく、むしろ『現地人』のほうを集合的無意識にアクセスさせて、『未来人や転生者の記憶と知識』をインストールすることで実現させているのであり、あくまでも生粋の異世界生まれである、本好きの女の子や地方貴族の八男坊やスライムや蜘蛛やドラゴンの卵に、『現代日本人の記憶や知識』をインストールすることによって、中二病妄想的に自分のことを『現代日本からの転生者』と思い込ませているように、今回の騒動においても私はただ、生粋の現代日本人に過ぎない山王会長たちの脳みそに、『十数年後の未来に存在し得る可能性がある、君との娘さんの記憶と知識』をインストールすることによって、ヤンデレ&メンヘラ的に自分のことを『未来の君の娘さん』と思い込ませて、『君との未来の自分づくり』や『娘同士のガチのバトルロイヤル』等の、まさしく文字通りのヤンデレ&メンヘラそのままの行動に及ばせたってわけなのさ」




 ……た、確かに。


 そういえば部長は最初から、タイムトラベルと異世界転生とは、とどのつまりは同じようなものに過ぎないって、言っていたし、そもそも時代や世界を転移するなんていう、本来非現実的な超常現象を現実に実行するには、集合的無意識を介しての、『自分とは別の人物の記憶や知識のインストール』以外にはあり得ないだろう。


 ──しかし本当の問題は、そんなことでは無かった。


「……どうして」


「うん、何だい?」




「『なろうの女神』か何かは知りませんが、そもそもどうして部長は、そんな人ならざる超常の力を有していて、しかもそれを使って、このような狂気極まる騒動を起こしたのですか⁉」




 もはや堪らず、本来敬愛しているはずの部長に対して、食ってかかるかのように問いただしてみたものの、更に煙に巻くことを言い出す、目の前の柘榴のごとき唇。


「さて、まさにそれこそが本題なのだが、ここで再び君に問いたい、異世界転生系のWeb小説における女神たちは、何ゆえ主人公を、毎回必ずと言っていいほどに、『手違いによって殺して』おいて、自分の司っている異世界の中へ転生させているのだと思うかい?」


 ……おいおい、またメタ的な話かよ?


「知りませんよ、そんなこと。よっぽど最近のWeb小説家が能なしばかりで、テンプレ通りの作品しか創れないからではないですか?」


「くくっ、相変わらず、手厳しいことで。まあ、それもあるとは思うけど、私はなりよりも、『愛』のためではないかと、思っているのだよ」


「愛、ですか?」




「そうだ、よその世界の女神様が、ふとしたことから偶然垣間見た、現代日本のとある少年に一目惚れして、どうしても自分のものにしたくなったのだが、いくら女神とはいえよその世界の存在には手を出すことは、おのおのの世界の女神同士の協定によって絶対に不可能なので、悶々としていたところ、『そうだわ! それこそ現代日本においては、もはや日常茶飯事とも言える、「異世界転生システム」を利用すればいいのよ!』と思い立って、いかにも自分のうっかりミスによって、管轄外の世界の人間をトラック事故で殺してしまったことにして、肉体を失い魂状態となった少年に対して、すべては自分の失策のせいだから、何でも好きなチート能力を与えて自分の司っている異世界に転生させてやると、持ちかけるんだ。その少年がまんまと三流Web小説の主人公そのままに快く承諾したら、こっちのものさ、後は自分の司っている世界の中に閉じ込めて、永遠に自分のものにできるって寸法だよ」




「……異世界の中に、永遠に閉じ込めるって」


「異世界系Web小説の代表的ジャンルである『死に戻り』は、ある意味『無限ループ』のようなものだけど、そもそも異世界()()そのものが、世界の垣根を越えた『死に戻り』のようなものであるからして、その性質上無限ループでもあり得るんだ。例えば、いかにチートスキルを有している『主人公』であろうとも、御都合主義のWeb小説でもあるまいし、本物の異世界転生においては、何らかのアクシデントによって、志半ばで死んでしまうことだって十分あり得るはずだけど、まさか彼を愛する女神様が、そのまま放っておくと思うかい? きっと彼女は別に死に戻りのスキルを与えていなくても、世界の支配者として独断専横的に、『主人公』を甦らせるであろうよ。──もちろん、彼の()()()()()()()()()()ことを忘れずにね」


「記憶をリセットさせるって、なぜですか?」


「何かやけに『死に戻り』作品が流行っているので、大方の読者の皆さんは麻痺しているようだけど、普通だったら、何度死んでも強制的に甦らせられるなんて、『地獄』以外の何物でもないと思うよ?」


 ──っ。




「加えて、主人公が寿命等で大往生した場合においても、超常的存在として自分自身は不老不死である女神としては、愛する『主人公』をそのまま成仏させるのを良しとはせず、もう一度赤ちゃんから記憶どころか人生そのものをリセットさせて、『再誕』させるだろうし、つまり『主人公』は、異世界において、何らかの目的達成の途中で失敗して、志半ばで死亡しようが、成功続きで無事に人生を全うしようが、何度も何度も生き返らせられて、前世の記憶を抜き取られながら、何度も何度も女神が支配する世界の中で、人生を繰り返させられるってわけなのさ」




 ……愛する男を、本人の意思を無視して、自分の支配している世界の中に永遠に閉じ込めて、無限に生と死を繰り返させるだと⁉




 何その、ヤンデレ&メンヘラの極致を体現したかのような、とち狂った女神様は⁉

※次回「おまえが(私の)パパになるんだよ⁉」編、堂々の最終回は、明日の朝7~8時頃に公開いたしますので、最後までどうぞよろしくお願いいたします!

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