エミちゃんを驚かせ隊
「現在午前7時15分53秒、異常なし、どうぞ」
「了解。引き続き警戒にあたれ、どうぞ」
「お腹減った~、どうぞ」
「我慢しろ、どうぞ」
「我慢出来ない~、どうぞ」
「あたしも我慢してるんだから我慢して、どうぞ」
「んぬぅ~、どうぞ」
「友実、そろそろ目覚ましが鳴るよ、準備して!マルタイが起きる」
「ブラ・・・いや、パンティ!」
「ん・・・ん~・・・ハァ」
「流石、エミちゃん。目覚ましが鳴る前に起きるのは変わってない」
「ハァ・・・」
「エミちゃんおはよう!今日はエミちゃんを守りに来たよ」
「・・・」
「あっ!待って!部屋から勝手に出ないで」
「・・・」
「だから出ないでってば~」
「・・・」
「こちら友実。マルタイは現在リビングへ進行中。引き続き警護を続ける」
「了解。家の外の警護はこちらに任せて、そちらは引き続きマルタイを警護せよ」
「パンティ」
「・・・」
「ハッ!マズイ、エミちゃんトイレに入るなら私も!」
「・・・」
「フゥ・・・エミちゃん、トイレ入るなら入るって言ってよ~。トイレにも何を仕掛けてあるか分からないんだから~。エミちゃん?ちょちょエミちゃん!」
「・・・」
「エミちゃん、ちょっと脱がないで!まさか私の前で用を足すつもり!?そんなのダメだよぉ」
「・・・」
「きゃあああああ!もうダメ、失礼します!」
「・・・」
「こちら友実。マルタイは現在トイレで待機中。用を足してます」
「了解。ですが、その情報はいりません。こちら食事中なので」
「えっ!森羅何か食べてんの!?ズルい~」
「・・・ハァ」
「あっ、出て来た!」
「・・・」
「こちら友実。マルタイは今度こそリビングへ向った模様。どうやら朝ご飯を食べる様です」
「了解。引き続き警戒にあたれ、モグモグ」
「エミ、おはよう」
「ママおはよう。パパは?」
「もう仕事に行った」
「ふ~ん」
「こちら友実。マルタイが朝ご飯を食べ様としている。毒味が必要だと思うので、私も食べようかと思う」
「了解。よく味わえ」
「・・・」
「ムシャムシャ。こちら友実、相変わらずおばちゃんの朝ご飯は美味しい、どうぞ」
「羨ましい、どうぞ」
「モグモグ」
「ムシャムシャ」
「モグモグ」
「ムシャムシャ」
「モグモグ」
「ムシャムシャ」
「モグモグ」
「ムシャムシャ」
「ご馳走様でした」
「あっ、私もご馳走様でした」
「・・・」
「こちら友実。マルタイは朝ご飯を食べ終えて一旦部屋に戻る模様。制服に着替えると思われる」
「了解。引き続き警戒にあたれ。ふわぁ~あ~」
「・・・」
「マルタイ部屋に侵入。今から多分脱ぎます」
「・・・了解」
「エミちゃんやはりナイスバディしてるのぉ、グヘヘ」
「・・・」
「こちら友実。マルタイは学校へ向う準備が整った。今から外へ向う」
「・・・zzz」
「森羅!?クッ!やられたか。エミちゃん警戒が必要だよ!」
「・・・」
「だから勝手に出ていかないでって~!」
「ママ、行って来ま~す」
「は~い、気をつけて行ってらっしゃーい」
「エミちゃん・・・・・・・・・・ちゃんとツッコんでよ!!!!!」
「zzz」
「エミちゃんが余りにもスルーするから、私もう死んじゃってるのかとちょっと思ったじゃ~ん」
「アンタが朝から馬鹿な事やってるからでしょ」
そろそろ我が家は友実を出入り禁止にしようかしら。
「だって~、エミちゃんがこの前誰かに見られてる気がするって言ったから~」
「あぁ、そう言えば・・・」
最近やたらと視線感じるのだ。また霊が来たのかなと思ってるが、真相は不明だ。
「だから私達が守りに行ってあげたと言うのにエミちゃんときたら・・・」
「いや、あんな横ちょこまかされても邪魔なだけなんだけど。それに友実と森羅では私を守るのは無理だよ」
「何で?」
「私を見ているのはね、多分幽霊だから!」
「ふ~ん」
「えっ?驚かないの?」
「うん、だって幽霊なんて見た事ないっスもん」
「そうなんだ。見た事ないならそりゃ信じませんわな」
きっと私だって見た事がなければ、霊をなんとも思ってないだろう。羨ましい限りだ。
「ん~でも幽霊かぁそっかそっかぁ~ウフフ」
あっヤバイこれは何か企んでる顔だ。今日は夜も警戒しなければいけないな。
「で、さぁ話変わるけど今日森羅は?」
「あ!!!!」
「zzz」
「ぷ~~」
「いやいや~森羅ゴメンね~。すっかり森羅の事忘れて登校しちゃったよ、もう私のうっかりさん☆」
「ぷ~~」
「そんな膨らんでないで、ご機嫌を取り戻しておくれよハニー」
「ぷ~~」
「えいっ!」
「ブフゥ~~。まさか置いてきぼりにされるとは思わなかったゼ、ハニー。こんな屈辱産まれて72回目だ」
「だからゴメンって~。どうしたら許してくれる?」
「マシュマロ奢ってくれたら良いよ」
「でさぁ、森羅そんな事よりもちょっとお願いしたい事があるんだわさ」
「ここでまさかのスルー!?こやつやりおる・・・」
「今度はエミちゃんをビックリさせようと思うんだ」
「ほぅ」
「食いついたか。森羅隊員、あっしの作戦はこうだ。夜にエミちゃんの家へ行く、そして私がエミちゃんを外に呼び出す、エミちゃんと私が話してる時にお化けに扮装した森羅登場!エミちゃん驚く、実は森羅でした~で、エミちゃん安心。ホッとしてつい笑顔を見せちゃう、はい、これ完璧」
「そんな上手くいくのかね。相手はあのエミだよ。お化けにビックリしない可能性もあるし、あたしが登場した時点でビンタでもされそうな気もするけど」
「確かにそれは否めないね。完全にスルー、もしくは回し蹴りとかもありえる。でも私は可能性がある限り挑戦したいんだ。チミだってそうだろ?森羅くん」
「よし、お化け役は友実に変更だ」
「え~、私だってやだよ~。森羅やって~」
「私がお化け役ならこの作戦はなしだ。皆でマシュマロパーティでもしよう」
「んぬ~、分かったよ。私がお化けになろう。ヤバイ、私の良い子っぷりに泣けてきた」
「作戦は今夜決行で良いの?」
「うん。思い立ったら即実行!それが前田さんのモットーだからね」
「前田って誰?」
「小学生の時の友達」
「前田さん前向きだね」
「カッケーすよ、前田さんは」
「そう」
「うん」
「自分のモットー思いつかなかった?」
「うん」
「夜分遅くに申し訳ありません。あたくしエミさんの友達の友沢森羅と申します。今、エミさんはご在宅でしょうか?」
「あ、ハイハイ。ちょっと待ってね、エミ~!お友達の友沢さんが来てくれてるわよ~」
「森羅?」
森羅が一人で家に来るなんて珍しい。いつも友実と一緒に来るのにな。こりゃ予想通り何かやって来るぞ。
「何よ、森羅こんな時間に」
「いや、急にエミに会いたくなって。ダメ?」
「ダメじゃないけど、迷惑かな。来るなら連絡ぐらいして欲しかった」
どうせ良からぬ事を考えてるだろうし、ここは追い返しといた方が良いだろう。
「そう・・・エミはわざわざはるばるやってきた親友を追い返すんだ・・・そっか・・・もしかしてエミはあたしの事嫌い?グスン」
「森羅、家にケモーン」
「エミありがとう。でも今は家の外に来て欲しいんだ」
「外に?分かった。ちょっと待ってね」
「うん。待つ」
外にか・・・。こりゃ間違いなく友実が待ち伏せしてるなぁ、用心しなくちゃ。後アレ頼んどくか。
「お待たせ」
「こっち」
「こっちって、私ん家の庭じゃない。ここで何すんのよ」
「今から友実がエミを驚かせるから、驚いて」
えぇ・・・この子ネタバレしちゃったよ。この後どうすんの?グダグダになる未来しか見えないんだけど。
「森羅そういう事は先に言っちゃ」
「ワァ!お化けだぞ~!出ちゃったぞ~!」
「森羅出て来るのが分かってたら驚かないでしょ!」
「あっ、そうだった」
「分かれば良いのよ」
「ちょっとエミちゃん!スルーしないで!」
「友実もう良いよ、ネタバレしちゃってるし。作戦は失敗」
「うぬ~良い作戦だと思ったんだけどなぁダメだったか」
「無念」
あれが良い作戦だったのか。森羅のネタバレがなくても、完全にスルー出来る程のレベルだったんだけどな。
「そもそも今時そんな布被ったみたいな霊では驚かないって。やるならそうね、あそこにいる貞子みたいな・・・」
「えっ・・・何あれ?」
「ブクブク」
「わぁ森羅が失神してる!どうしようどうしようどうしよう!貞子こっち来たああああああ!ぎゃあああああああああ!」
「ふぅ、行ったか。ママ協力ありがとう」
「良いわよ。ちょっと楽しかったし」
そういうとママは微笑んだ。思ったよりノリノリで良い貞子だったと思う。仕込だと知らなければ私も逃げてたかも知れない。
「で、エミさっきなんだけどさ。ママと似たような格好した人が隅で見てたけど、あの人もエミの知り合い?」
「まさか」
「じゃあ、幽霊かしらね。塩でもまいとこうか」
「別に良いわよ。よくある事だし」
「それもそうね」
それにあいつらを追い払う時に使えるかも知れないし。
「宜しくね、幽霊さん」