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You Really Got Me  作者: のすけ
7/27

磁力 3

 翌月のDarwinが出演したライブに私はお客として行った。

 今回は先輩格の四バンドとの対バン。

 トリはコウ達が憧れてる19Degreesというオリジナル曲の先輩バンド。

 Darwinもオリジナル曲で演りたいと頑張ったけど、間に合わなくてメンバーは悔しがっていた。

 出番の後の幕間に、コウが私のいる席に向かってきた。

 その時、金髪をポニーテールにした女の子が彼に話しかけるのが見えた。

 アヤカさんだ。

 二人は何か話していたけど、コウは私の隣に来て座った。

 その横にアヤカさんが座る。

 コウの向こう側からぴょこんと顔をのぞかせたアヤカさんは私に、

「急に邪魔してごめんね、二人仲いいんだねー」と細い声で言った。

 今日もロックっぽいリカちゃん人形みたいに可愛い。

「うん、仲いいよ」

 少しも悪びれずコウが答えたので私も笑った。

「私、ちょうどコウに相談したいことあったんだよね」とアヤカさん。

「19Degrees観たいから後で」

「えー、ちょっとだけ。合間でいいから」とアヤカさんは両手を合わせて、コウの耳元に顔を寄せて何か言った。

 その大きな瞳が真剣にコウを見据えている。

「あー、知ってる」とコウ。

 またアヤカさんが何か言うと「マジで。うーん、でもあの人…」と向こうを向いて低く何か言った。

「そうなんだー」とアヤカさん。

「熱くなんないで。注意したほうがいいかもな」

「そう、ありがとうコウ」

 そこで会話は終わり、19Degreesが登場すると会場は一気に盛り上がる。

 日本語でパワフルに唄われるロックに私たちはすごく感動した。

 演奏後に、コウとアヤカさんと一緒に楽屋の19Degreesのメンバーに挨拶に行った。

「ようコウ、噂の彼女とラブラブだな」

 ボーカルのサトルさんがコウに言う。

「ミキです」とコウが紹介してくれた。

「知ってるよ、彼女。対バンのモギリとか、よく手伝いに来てるよね」

「はい」

 私もサトルさんを観客としてもよく見かけている。

「そっちの彼女は」

「私、アヤカっていいます」

「Shuffle Rosesのミッちゃんの彼女」とコウが紹介した。

 Shuffle Rosesはハードロックのコピーバンドだ。

 アヤカさんはShuffle Rosesのボーカルのミッちゃんと付き合ってるんだ。

 ミッちゃんは確か二十歳の大学生。

 気さくな感じで伸ばした髪にメッシュ入れててカッコいい。

 声は甘めで女子のファンがすごく多くて、本人もモテる自覚ある感じ。

「ミッちゃんか、あいつエロいからなー。彼女気をつけて」

 サトルさんはアヤカさんに言った。

 アヤカさんは「はい」と笑顔で返していた。

 サトルさんとコウはひとしきり演奏や曲の話をしていた。

「アヤカさんの彼、ミッちゃんなんだ」と言ったら

「ライブ聴いてカッコ良かったから、こっちからナンパしちゃった」

 アヤカさんは言って綺麗に笑った。

「そっか、ミッちゃんてほんとにモテるよ」

「わかる。先月も親衛隊みたいな人たちに軽く囲まれたもん」

「えー、そんなことするんだ。大丈夫だった。ちょっと怖くない」

「ま、ババア多かったし。私、結構強いから負けてないけど」

 ババアって言うけど多分女子大生とかのファンだと思う。

「アヤカさんは負けないかもだけど、熱くなる人もいるから」

 彼女は本当に綺麗な顔立ちだし、ちょっと怖い顔でもしたら迫力で相手は引き下がるかも。

 でも、派手で目立つ男の子のファンの人って、気が強い人も多い。

「ミキちゃん、アヤカでいいよ。私一個下だし」と言うと彼女は小声で、

「この前コウの元カノとか言っちゃったけど、ごめんね。あれ嘘でした」と言った。

「うん、後でコウから聞いた」

「私、実は昔コウの事好きだった時あったんだ。でも私って多分コウのタイプじゃないんだよね。友達以上に扱われたことないの。だから意地悪言っちゃった」

「コウ、すっごく真面目に説明してくれたよ」

「あーわかる。私、昔コウん家の近所に住んでて幼稚園から一緒だったの。中学ん時に私、病んでてコウの手にシャーペン刺したことあるんだ」

「ちょっと聞いた。でも傷も治ってるし大丈夫だよ」

「聞いたんだね。コウ、ギターも弾くのに手にあんなことして後悔してる。でもコウはほんと優しいから怒ったり全然しなかったんだよ」

「あまり気にしない方がきっといいよ」

「ミキちゃんっていいね、なんかホッとする感じ。でもコウは女受けする自覚全くないから気をつけてね」とアヤカさんが言った時、

「俺がなんだって、もう帰るよアヤカも」

 後ろからコウが言った。

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