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You Really Got Me  作者: のすけ
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磁力 2

 ここは、さっきまでとはガラリと違う静かな空間だ。


 展示の当番をしてる三年生の女子の先輩が黙礼し笑顔を向けてくれた。

「カレシ?」と、私に口の動きだけで聞いてくる。

 私がうなづいて黙礼し、コウを案内すると先輩はまた口の形だけで「おー」と言って目を見張った。

 風景画、静物画、人物画、彫刻、グラフィックのポスターと色々ある中で、私の絵は友達をモデルにした油彩の人物画。

 この絵は来月学生の展覧会に出品することになっている。

 他に美術の授業での学年ごとの作品も展示していて、そちらにも私の絵がある。

 好きな人物をカラーとモノクロでそれぞれ描いたもので、どちらも好きなミュージシャンを描いた。

 人を描くのが好きでモノクロの方は今年の学祭のポスターとパンフレットにも使われている。

 コウは絵を見比べて感心していた。

 展示を見た後は喫茶スペースで二人でコーラを飲んだ。

「ミキは絵が好きなんだね、どれも上手だったな」

「好き、ライブのポスターも描いてると時間忘れて夜中になったりしちゃう」

「そうか、このパンフも取っておくよ。記念になるね」

「私もこれは記念にする。コウ、うちの学祭面白い」

「うん面白い。うちは軽音部ないしね、男声合唱部あるけど。あと剣道とかディベート部の模擬戦とかある。新ちゃんが入ってる科学部は公開実験とか面白い」

「清隆がコウの学祭に行ってみたいって言ってたな」

「そうか、7月に終わっちゃったけど来年来たらいいよ。俺案内するから一人で来いって言って」

「なんで一人なの、私は」

「男子校なんてただの魔境、神隠しに遭うからミキは立ち入り禁止だよ」

 コウは今日の学祭に快く招待した私に向かってそう言った。

 そう言うけど、ここだってコウがいたら魔境に変わるかもだけど。

 恨みがましい目で見つめた私にコウは「あー俺ミキと同じ学校だったら良かったなあ」と言った。

 確かに同じ学校だったら、二週間も会えないなんてことはなくて、毎日一緒に帰ったり寄り道したりしてるんだろうな。

 コウのもっとそばにいて、いつも顔を見て声を聴いていられるんだろうな。

 モンちゃんのように軽音部なら、今日はコウが出演するライブをドキドキしながら観てたんだろうなあ。

 素直にそんなことを言う、一つ下のコウがなんか可愛いと思えてちょっと切ない、でも。

「そうかな、同じ学校だったら逆に出会ってなかったかも」

 私も前は友達とバンドやっていたけど、別々の高校に進学して今は辞めてしまった。

 今の高校では美術部だしコウとは接点がなかったかも知れない。

 それにコウは一学年下だし端正な顔立ち。

 今日も明らかに目立ってるし、何度となくチラチラ見られてる。

 本人は気にしてないようだけど。

 同じ学校だったら、私とじゃなく違う子と付き合っていたかもなあ。

 今こうして二人でいるのってすごく特別なことに思える。

 今度二人の時コウに伝えたいな。


 一緒の時間は飛び去って、一般の公開時間がもう終わる。

 コウを送って玄関に向かった。

「コウ、来てくれて良かった。今度またライブで会えるの楽しみにしてるよ」

「楽しかったしミキに逢えてよかった、電話する」

 寂しいけど楽しく別れてまた会いたい。

 コウも別れ際に少し寂しそうに眉を寄せて言葉少なだったけど、笑顔で言ってくれた。

 覚悟はしてたけど、その日から私に他校生の年下の彼がいるという事実が一気に広まった。

 しばらくの間みんなにコウとの出会いとかを聞かれ、質問責めだった。

「コウ君さあ学校違うしミキの事かなり心配してるんじゃない」と友達が言った。

 そうかな。

 だとしたら今のこの状況はコウの思うツボかな。

 そう思ったらちょっとおかしくなった。

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