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You Really Got Me  作者: のすけ
23/27

そのままで 2

 十月に組まれたDarwin初の札幌単独ライブは、ラジオで一度予定を放送できただけだった。

 けど、あちこちに置いたフライヤーがどんどんなくなって、準備した前売り券も完売した。

 立って見るスタイルだけど、このぶんだと当日券が出れば超満員になる。


 当日は開場待ちをする子達がいてさらに驚いた。

 ファンクラブの子達も「この日を待ち望んでました」と言って、始まる前から半泣きする子もいた。

 私もチエちゃんもカズネ先輩も、やってくるお客さん達の期待感と盛り上がりに圧倒された。

「初の単独とは思えないよねー」

 チエちゃんと言いあった。

「置いてた新譜のデモテープがもうなくなっちゃった」

 カズネ先輩も嬉しそうに言った。

 ライブはいつも通り元気な曲数曲から始まって、途中でメンバー紹介と近況をコウがMCで話した。

 メンバーそれぞれへのコールもすごいし、カメラのタッキーは例によってあちこち動いて、

 たくさん写真を撮ってくれていた。

 コウの新曲「そのままで」はやっぱり女の子の歓声がすごかった。

 最初からずっとドキドキしてたけど、アンコールの拍手が来て最後に「進化論」を演った。

 ステージ下にみんな詰めかけて、ヘッドバンギングがすごかった。

 聴いてくれた地域FMの若手DJの人が楽屋に来た。

「いいライブだったよー。ケン君もセイ君のギターもえらく暴れたねー。ライブでのアレンジも練り直したんでしょう」

 伝わったね、と私はチエちゃんと顔を見合わせた。

 デモテープを持ち込んだレコード会社RedWingの人も、東京から聴きに来てくれていた。

「伊東君のアンセムナンバーと秋本君のバラード系がしっかり二本立てで聴かせるね。すごくいいよ、面白い」

 そう言ってくれて、メンバーは神妙に聞いていた。

 こちらにもDarwinの良さが伝わったんだと思うと、もう飛び上がりそうだった。

 後から正式に来春デビューに向けての話があった。

 それは予想通り、来春から東京での活動が可能なことが前提だった。

 Darwinは、十一月にコウが誕生日を迎えると全員18歳以上になるので、そこで改めてプロの契約をする。

 今日、Darwinはついに夢の戸口に立った。

 そしてDarwinのボーカルとして、コウは仲間と一緒に喜びを噛み締めている。

 でも私の彼、高3の秋本洸は違っていた。



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