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You Really Got Me  作者: のすけ
19/27

春の色彩 1

 三月、卒業式が終わった。

 高校生活って本当にすごく短かったように思う。

 三年間とは思えないくらいいろんなことがあって自分も変わって。

 今まで生きて来た中で一番変化が多い毎日だったと思う。

 絵があって、友達がいていろんな人がいて。

 音楽があってコウと出会って。

 二人して怖さを飛び超えて初めての深い想いを知った。

 いつでも好きなものを目一杯追いかけて最高に自由だったな。

 もう高校生じゃないって思うととても寂しくなる。

 もちろん、これからの日々も待ち遠しいんだけど、それくらい大切な日々だった。

 卒業式の日はみんなポケットカメラやインスタントカメラを持ち込んで、友達と一緒に先生や後輩と学校のいたるところで写真を撮った。

「ねえねえ、コウくんの前で写真撮ろうよ」

「本物のコウくんに見せなよ」

 コウくんの前っていうのは、学校の玄関を入った一階のフロアに飾られている私の描いた油彩画の前のこと。

 コウをモデルに描いて、再び秋の展覧会で入賞した油彩画。

 その絵は、学校に戻って来てからずっとそこに飾られている。

 卒業したら手元に戻ってくるのかと思ったけれど、まだ今度の秋頃までは飾らせてほしいと言われた。

 コウにそれを話したら、

「俺だけミキの学校に残るの。一緒に卒業したいよ」と言っていた。

 コウの絵の前で友達と写真を撮り「二人だけのも撮ってあげるよ」と友達が絵と私の写真を撮ってくれた。

「今度のライブ行くとき写真持ってくね」と言って。

 春休み中にまた、対バンライブがある。

 Darwinは、コウとユッケとセイの三人があと一年間高校生だ。

 三人が羨ましいような、何だか愛しいような気持ちになった。

 対バンには久々に、新ちゃんが来た。

 新ちゃんは東京の大学に進学するってコウに聞いていた。

「ミキ久しぶりー。美術科合格おめでとう」

「新ちゃんもおめでとう。東京行くんだってね」

「そう。海渡る前にDarwin聴きに来た。進化したよな、前より随分お姉さんのファンが多くないか」

「さすがチェックしてるね」

 新ちゃんのいう通り、女子のファンが最近増えている。

「新ちゃん、ガンダム作りに行くんだろ」とユッケが言った。

 新ちゃんは本当にロボットを作る勉強がしたくて、理工系大学への進学を決めたそうだ。

 去年二月の模試帰りに出会った新ちゃんを思い出す。

「おー、俺はガンダム作るしお菓子のおまけにも進出する。そしてお前の行動は監視して失脚を狙うからな」

 新ちゃんがコウに言った。

「失脚って何よ。絶対ねえから」とコウ。

 先輩後輩とも思えない二人のやりとりも久しぶり。

「東京でライブやるときは必ず俺をゲストで呼べよ。東京のお姉さんにアピールしたいからな」

 そう言って新ちゃんは永井君に会いに行った。

 この春は、Darwinと兄弟みたいに過ごして来た人達との別れも多くて辛い。

 今日のPAは永井君だけど、彼も今日を最後に東京の音響の専門学校に進学するから札幌を離れる。

 去年の冬には数回のライブの録音をしてくれて、そこからDarwinのライブ盤テープを作るのにすごく力を貸してもらった。

 ロックコンテスト優勝を受けて、ショップでもロック雑誌の推薦が付いたそのライブ盤テープはすごく人気が出ている。

 メンバーのうち三人が高校生ということもあって、注目されているみたいだ。

 最近はこれまでとは逆に、Darwinと対バンをさせて欲しいという申し入れが来るようになった。

 しかもメインでの演奏が増えていて、今回の対バンもトリの演奏だった。

 ファンも増えてライブの生写真もすごく出ているし、ライブ後にメンバーが出て来るのを会場の出口で待っている子達もいる。

 ライブの常連で顔馴染の子もすごく増えてきた。

 活動はまだ対バンがメインだから、一緒に演るバンドに迷惑をかけないことも考えて常連のファンの子と色々と話をするようになった。

 そうするうち何とDarwinのファンクラブができた。

 いろんなことが動き出している気がする。

 Darwin応援のルール作りと、ライブ情報を流したり交流のためのフライヤーをファンの子達がファンクラブの会報として、新しく作ってくれることが決まった。

 Darwinのロゴは私が考えたものを使ってもらうけど、会報の内容やデザインとか構成はファンクラブを立ち上げてくれた子達にやってもらうことにした。

「ミキが作ったこれまでのフライヤー、俺全部取ってあるよ。なんか寂しいな」

 とコウは言ってくれたのだけれど。

 でも、これまで通り対バンのポスターは私が作っていた。

 新しいDarwinの活動や人気が広がるにつれて考えた。

 コウと付き合っている自分がずっと中心にいたら、以前から知ってる人達との身内感が強くて、応援の輪が拡がりづらいかなって。

 バンドの情報発信の窓口はリーダーのユッケだ。

「俺ん家はバンドやってくことには異存ないし、状況が一番安定してるから引き受ける」

 とユッケも言ってくれた。

「うちも、高校ちゃんと出るなら後はやってみろ、みたい感じだね」とセイ。

 大学生のケンはバンド活動が活発になっているのを家族に話したら、

「教師になるんじゃなかったのか、大学はちゃんと出ておけって親父に釘刺された」と言った。

 ケンも四月から三年生なのであと二年間は学生だ。

 コウはユッケと一緒で、今はもう大学に進学はせずにDarwinでデビューしたい、上京してチャンスを掴みたいと思って気持ちを固めている。

 去年の冬の時点では、これまでの家での約束を考えて一応進学予定にしていた。

 けどもう一度ちゃんと両親と話して「いよいよ決着つけないと」と言った。

「コウは母ちゃんストップか。俺は父ちゃんストップ突破しないとだなあ」とケン。

「そん時は俺もおばさん達の説得に行く」とユッケが言って、

 セイも「俺も。ケンのとこも行く」と言った。

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